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「つらいけど楽しい」を仕事にして
理学部物質生物科学科卒業大石美香子さん
VOL.255

今回は物質生物科学科卒業生 大石美香子さんにお話しを伺いました。お勤め先の中外製薬グループ株式会社中外医科学研究所 鎌倉ブランチは、広々とした敷地に緑が多くある自然豊かな環境です。天気が良い日は富士山がとても綺麗に見え、澄んだ空気が素敵な場所でした。今回のインタビューでは大石さんの「今」と現在に至るまでについて、さまざまなお話を聞くことができました。
学生の実験、社会人としての実験
現在の仕事は、臨床薬理。新薬の臨床開発をする過程で使われる測定方法が正しいものか、ガイドラインに従って実験を行い、チェックを行います。
わたしは大学・大学院、そして現在まで、「実験に」携わっているわけですが、それぞれ実験に求める意味合いに違いがあります。
学生時代はがんの研究をしていました。大学での実験は、アカデミアのスタンス。主に「理を解明すること」、つまり真理の追究をメインとしており、結果が治療などに利用できることも大事ですがそれが第一の目的ではありません。
仕事としての実験は必ず、最終的に薬をつくるのに必要なものです。その結果は人の命に関わることですので、実験ノートもデータの取り方もミスが許されません。常に厳密に、ダブルチェックを行います。
現在は、人の役に立つ薬を作りたいという気持ちに動かされ実験を行っています。自分が関わった新薬が世の中に出ると思うと、充実感を味わいます。

女子大学で学ぶということ
本学の理学部は私立の女子大学では唯一の存在です。わたしはここで、実験を行うために必要な技術及び考え方の基本を習得することができました。女性だから、という制限のない環境で専門的な技術を身に付け、学べたことは自分にとって大変重要なことでした。大学院での研究においても、現在の仕事においてもその時の経験はベースとなっています。
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これは遺伝子を1分子で測定する機械。実験室に入るには厳しい服装の規定がある。 -
「すべては精密なデータを得るために必要なこと」と大石さん
仕事として実験にかかわる
わたしにとって実験は楽しいことでした。しかし、仕事として行う実験は楽しいことばかりではなく、むしろ大変厳しいことです。その中で、仕事とは「つらいけど楽しいこと」という考えを持つようになりました。好きなことでも、仕事にするとつらいことはあります。しかし、責任を伴う「仕事」ではそれは当たり前であり、逆に好きだからこそそれを乗り越えることができると思っています。
プロフィール
大石 美香子(おおいし みかこ)さん
附属高等学校から本学に学び、2008(平成20)年3月理学部物質生物科学科卒業。2010(平成22)年3月東京大学大学院新領域創成科学研究科メディカルゲノム専攻博士課程前期修了。同年4月株式会社中外医科学研究所鎌倉ブランチに入所、2012(平成24)年から現職。
HP https://cms.chugai-pharm.co.jp/index.html
インタビューを終えて

●取材・文・学生記者
人間社会学部現代社会学科2年 福士遥