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卒業生

「人を治したい」だから頑張れる

富士フイルム株式会社再生医療研究所
理学部物質生物科学科卒業
中原泉さん

学園ニュース VOL.244

季節が冬へと少しずつ進み始めた11月上旬の少し暖かな日、富士フイルム株式会社再生医療研究所に卒業生の中原泉さんを訪ねました。
近年注目を集め、多くの期待がかけられている再生医療の研究に携わっている中原さん。「人を治したい」という確固たる信念を秘めて、地道な実験の連続である研究所の仕事に取り組む姿勢に、思わず「カッコいい」と声がでました。

自分の道を明確にした大学時代

理学部を選択したのは、高校時代に生物学の面白さに目覚めたからです。在学中、さまざまな専門の先生がいる中で、ガンを専門とする先生との出会いがありました。その先生の講義を通してガンのメカニズムに興味がわいたことと、祖母をこの病気で亡くした記憶が相まって、ガンに関する研究の道が形づくられました。ガンへの探究心は尽きず、大学卒業後は東京医科歯科大学大学院に移り、さらに研究を続けました。

自ら作製したRCPの顆粒を手にして

「多くの人を治したい」

現在は「多くの人を苦痛から解放したい」という思いを抱き、再生医療に関わっています。人間の細胞や潜在的な力を生かすこの分野に面白みを感じながら仕事をしています。
富士フイルム株式会社がフィルム事業で培ってきた技術を生かして作り上げた「リコンビナントペプチド(RCP)」をご存知でしょうか?ヒト型コラーゲンを加工したもので、ヒトが持っている治癒機能を活性化させて治すことを促す、細胞の足場材料です。私は、顆粒状にしたRCPがどのような特性を持つのか、その特性は生体への適合性と関係しているのか、などの評価を行っています。研究所からの「治す」行為は間接的ではありますが、医療現場を通して多くの人々を治していきたいです。

ぜひ、一生懸命に取り組む経験を

大学には長期休暇もあるので、自分の好きなことに一生懸命取り組める時間が多くあります。その対象が勉強であればおのずと専門性が高まると思います。もしかしたら、自分の興味を見つけることは難しいかもしれません。それでも、とにかく「これ!」と決めて一生懸命にやる経験は大事だと思います。

プロフィール

中原 泉(なかはら いずみ)さん
2005(平成17)年3月、理学部物質生物科学科卒業。2007(平成19)年3月、理学研究科物質・生物機能科学専攻博士課程前期修了。同年4月より東京医科歯科大学大学院に研究の場を移し、2010(平成22)年3月、東京医科歯科大学大学院生命情報科学教育部バイオ情報学専攻博士課程後期修了。博士(理学)の学位を取得。
同年10月、富士フイルム株式会社R&D統括本部医薬品研究所に配属。2012(平成24)年6月、医薬品ヘルスケア研究所に異動。2013(平成25)年9月、再生医療研究所新設に伴い異動。

インタビューを終えて

大学入学から現在までのお話を伺い、明確な意志で自分の歩む道を切り開いている姿がとても印象に残っています。中原さんの言葉の端々から、自分の軸を持ち真摯に努力し続けることの大切さを感じました。今回学んだことを胸に、有限かつ恵まれた学生時代を精いっぱい味わい、そこから人生のキーワードをつかんで実りある道を作っていくつもりです。

●取材・文・学生記者
人間社会学部文化学科3年 根上歩