トピックス

卒業生

興味の裾野を広く持つことが出会いの始まりに

自然科学研究機構生理学研究所
人間社会学部心理学科卒業
小林恵さん

学園ニュース VOL.243

MRIが使えない赤ちゃんの脳活動を調べる機器を手にして

未だ残暑厳しい9月初め、中央大学多摩キャンパスに卒業生の小林恵さんを訪ねました。現在、自然科学研究機構生理学研究所日本学術振興会特別研究員として活躍されている小林さん。この研究との出会いは学部時代で培われたものから生まれたと言います。ご自身の研究について笑顔で生き生きとお話しされる小林さんから、さまざまな出会いが真の興味を引き出すということを学びました。

自らの興味が心理学研究の対象に

心のケアをするための「心理学」が一般的なイメージだと思いますが、実際「心理学」は私たちがこの世でしていることすべてが「心理学」の研究対象になります。私は特に「赤ちゃんの見る力」に興味があり、研究しています。赤ちゃんが見ている世界は大人と同じなのか、違うのであればいつどのように大人と同じように見えるのかということを、赤ちゃんが人の顔を認識している際の脳の活動を見て調べます。

  • 研究発表のポスターを前に
    研究発表のポスターを前に
  • 発表した論文の数々
    発表した論文の数々

興味の裾野を広げて

中学高校の6年間、器械体操をやっていたため、高校生のときは「スポーツ心理学」に興味がありました。しかし、日本女子大学の心理学科で幅広く学ぶことで、心理学の面白さを感じて興味が広がり、「スポーツ心理学」を研究対象とすることにこだわらなくなりました。その後、もともと大好きな赤ちゃんを対象とする研究と出会いました。一つのことに囚われずに、心理学ではこれほど多くのことを調べられると大学時代を通して学び、それがやがて赤ちゃんの脳の研究へとつながりました。興味が変わることを良いととらえない場合もありますが、それは実際に大事なことです。もちろん初めから一つのことを追い続けることも大事ですが、それに固執する必要はないと思います。興味の裾野が広い方がもっと面白いことを考えられますし、興味の裾野を広く持つことでさまざまな人や物に出会い、その出会いがその先何につながるか分かりません。そういう意味で、日本女子大学で多くのことを勉強できたことは良かったと思います。

多くの経験が自己理解につながる

学生時代はいろいろな経験をした方が良いと思います。何かやりたいと思えば、すぐできるところが学生時代の良いところです。だから閉じこもらないでいろいろな経験をしてほしいと思います。追いかけるものがないと思って後ろ向きになる必要はないのです。反対に追いかけることがないのなら、さまざまなことに手を出していけば良いのです。

プロフィール

小林 恵(こばやし めぐみ)さん
2008(平成20)年3月、人間社会学部心理学科卒業。在学中に赤ちゃんがものを見る力のひとつである、顔を認識する能力に興味を持ち、乳児を対象とした心理学の研究を始める。同年4月より研究の場を中央大学大学院に移し、2010(平成22)年3月、中央大学大学院文学研究科心理学専攻博士前期課程を、2013(平成25)年3月、中央大学大学院文学研究科心理学専攻博士後期課程を修了。博士(心理学)の学位を取得。現在、自然科学研究機構生理学研究所統合生理研究系感覚運動調節研究部門に籍を置き、日本学術振興会特別研究員PDとして研究を重ねている。

インタビューを終えて

「心理学を専門としない方にお話をすることはあまりないため、(分からなかったら)聞いてくださいね」と終始私のペースに合わせてくださる小林さん。その優しい人柄がとても魅力的でした。興味の裾野を広げることが、さまざまなものとの出会いを生み、そこから自らの生き方に変わるということを小林さんから学びました。私も小林さんのように好きなこととともに生きる人になりたいです。


●取材・文・学生記者
人間社会学部文化学科3年 根本友里恵