「異界」を探検し、表現する。没入型演劇ワークショップ
2025.10.10

高知県高岡郡梼原町(ゆすはらちょう)と日本女子大学は2023年4月に「相互協力に関する協定」を締結しました。その取り組みの一環として、国際文化学部国際文化学科の脱キャンパス型実習科目「実践プログラム」における研修先としても協力をいただいており、2025年度も高知県唯一の木造芝居小屋である「ゆすはら座」にて演劇ワークショップを実施しました。このワークショップでは3日間をかけて学生がゼロから演劇をつくり上げます。
梼原という「異界」に出会い
自分ではない「誰か」になってみる体験
今回参加した学生は2年生9名、3年生2名の合計11名。梼原町を深く知らない学生たちにとって、そこは新鮮で新しい体験ができる「異界」です。
国際文化学科の木村覚(きむらさとる)教授、そして本学文化学科卒業生で俳優の万里紗(まりさ)さんによる指導のもと、学生たちは演劇ワークショップを通して梼原町という「異界」を探検し、自分とは異なる「誰か」になるという体験をしました。

この日に初めて顔を合わせたという学生も多く、最初は会話もどこかよそよそしいような雰囲気からスタートしたワークショップでしたが、心を開放する準備運動から、互いの距離を縮めるミニゲームなど、万里紗さんの工夫あふれる指導によって、1日目が終わるころにはすっかり打ち解けた関係が構築されていました。
住民へのインタビューで
世代も、暮らす地域も異なる方々と触れ合う
2日目には3つのチームに分かれ、梼原町にお住まいの方々へインタビューを実施しました。
町役場や教育委員会のご協力で、梼原町にゆかりのある3組4名の方々をご紹介いただいてお話を伺うことができました。

3チームはくじ引きによってそれぞれ「変革」「成長」「生まれ変わる」といったインタビューのテーマが与えられました。インタビューで伺った情報をもとにして、最終的には演劇の台本に落とし込むため、あらかじめそれを想定した質問を準備して臨みました。
世代も暮らす地域も異なる方々とのコミュニケーションは学生たちにとって非常に新鮮な体験で、大いに刺激を受けている様子でした。
各チームは最終日の成果発表会に向けて、演劇の台本をまる1日で仕上げなければなりません。時間のない中でゼロから形にしていく共同作業は、学生たちにとってかなりプレッシャーのかかる作業でしたが、仲間と何度も話し合い、時には実際に演じてみながら形にしていきました。
表現の場はステージ上だけじゃない
観客を巻き込んだイマーシブシアター(没入型演劇)
最終日、梼原町の方々もご招待して成果発表会が実施されました。梼原町の吉田尚人(よしだ ひさと)町長をはじめ、インタビューでお話を聞かせてくださった方々や、発表会の告知を聞いて駆けつけてくださった方など、梼原町の方々にたくさんお集まりいただきました。
今回の演劇ワークショップは「イマーシブシアター(没入型演劇)」という手法が取り入れられました。これは、備え付けられたステージ上だけで演じるのではなく、劇場のありとあらゆる場所を舞台として、時に観客を巻き込みながら演劇が進行するもので、今回は観客である梼原町の皆さんも一緒になって「異界」を探検してもらいました。
本番の成果発表会では、「ゆすはら座」のありとあらゆる場所——観客席や通路、楽屋に至るまで——が表現の場として活用されました。学生の自由な発想には本当に驚かされます。
1チーム目は、本来は観客が座る場所を舞台としてある少女の成長を演じました。見どころは1人の学生がテンポよく講談風に語るのに合わせて、3人の学生が軽やかに身体を動かし、表情豊かにセリフを掛け合う構成です。「飛べない鳥」であった少女が、周囲を思いやれる「一丁前の鳥」へと成長して幕が下りました。

2チーム目は、劇場の柱を鳥居に見立てて、神社に閉じ込められた不思議な世界観を表現しました。神社に迷い込んだ2人と、神社の関係者2人が、何度も鳥居から外に出ようとしては見えない壁にぶつかる様子を熱演。「外に出られない」と覚悟した4人が、これまでの自身を振り返り胸の内を打ち明けることで、見えない壁が消えるという結末を迎えました。

3チーム目は、かつて梼原町で世代を問わず憩いの場として使われていた茶堂(ちゃどう)をテーマに、そこに鎮座する仏像が「なぜ人の子は来ない?」と投げかけるところから始まります。たまたま茶堂を訪れた2人の会話に乱入し、その悩みに耳を傾ける仏像。仏像の誘いによって、観客が全員、舞台裏に移動するという大胆な場面転換もあり、その意外さに会場からは笑いが起きました。

3チームによる熱演のあとは、吉田町長をはじめ観客の皆さんと学生が一緒に車座になって、各チームの演劇の内容や演技について講評していただきました。

今回の梼原町における演劇ワークショップは、学生たちにとって毎日が刺激に満ちた新鮮な体験となりました。それは大学生活、ひいては人生においてさえも重要な部分を占めるほどの、大きな思い出のひとつとなった……そんな感想が聞かれました。
今回の梼原町の訪問について、木村教授は「梼原での演劇ワークショップの実施は、今回で3年目となります。短い準備期間ながら想像力に富んだファンタジックなドラマは、ご覧いただいた梼原の皆さんにも大変好評でした」と話しています。
梼原町と日本女子大学は、今後もさまざまな取り組みを進めてまいります。
海外あるいは国内のさまざまな地域に出向き、現地で文化や社会を体験しながら学ぶプログラムです。海外は半期(海外a)か、1年(海外b)の留学を選択します。海外の行先はアメリカ、イギリス、カナダ、フランス、中国、韓国などがあり、国内では各地で国際芸術祭や文化遺産の見学を行ったり、ワークショップに参加したりします。いずれも、大学での事前学修でしっかり準備を行った後、各地域で学び、仕上げとしてICTを活用して英語・日本語で成果を発信します。海外あるいは国内のさまざまな地域に出向き、現地で文化や社会を体験しながら学ぶプログラムです。海外は半期(海外a)か、1年(海外b)の留学を選択します。海外の行先はアメリカ、イギリス、カナダ、フランス、中国、韓国などがあり、国内では各地で国際芸術祭や文化遺産の見学を行ったり、ワークショップに参加したりします。いずれも、大学での事前学修でしっかり準備を行った後、各地域で学び、仕上げとしてICTを活用して英語・日本語で成果を発信します。
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