「好き」を育ててキャリアに~卒業生 福田未来さん公開講座~

2025.10.01

【授業紹介】家政経済学科 経営戦略論Ⅰ 「女性起業家のライフ・キャリアデザインを聞く」

2025年6月25日(水)、家政学部家政経済学科の選択科目である「経営戦略論Ⅰ」において公開講座が開催されました。家政経済学科の卒業生であり、現在は女性起業家としてキャリアを積まれている福田未来さんをお招きし、キャリアデザインや起業の実体験についてお話を伺いました。
福田さんは住友商事や東京オリンピック・パラリンピック組織委員会での勤務を経て、副業として始めた「字を書く仕事」を本業として展開し、起業された経歴をお持ちです。今回の講演ではその経験をもとに自分らしいキャリアプランの描き方のヒントを与えてくださいました。JWU PR アンバサダーのT.Oがレポートをお届けします。

「好きなことを仕事にする!」

講座の冒頭では、福田さんの学生時代やこれまでのキャリアについてお話がありました。学生時代はサークル活動に熱心に取り組み、就職活動では、スポーツに関わる企業を志望していたそうですが、思うような結果が出ず悩んだ時期があったそうです。当時は「スポーツが好き」という熱意を前面に出していたものの、企業が求めているのは「その人が自社でどう活躍できるか」という視点であることに後から気づいたと語ります。最終的に入社した住友商事では優秀な人たちと働くなかで劣等感を感じ、自分には何もないのではと感じることもあったとのこと。
そんなとき、恩師から「誰かの真似でなく、あなたにしかできないことをやってみては」と言葉をかけられ、自分の「好き」や「得意」を見つめ直すようになったそうです。

キャリアについて話す福田さん
キャリアについて話す福田さん

「好き」や「得意」を棚卸しする中で、幼い頃から続けていた書道が「もしかしたら自分の強みかもしれない」と感じた福田さんは、仕事の傍ら師範の資格取得に挑戦。仕事が終わったあとに学校に通い、課題に追われながらも5年かけて資格を取得しました。
そんな中、友人から結婚式の招待状宛名書きをしてほしい と頼まれたことが転機になりました。依頼を受けた際、友人から当たり前のように「いくら払えばいい?」と聞かれたことで自身の「字」が他者にとって価値のあるものだと気づいたそうです。自分の好きなことが仕事になるかもしれないと思うようになり、字を書くことを副業としてスタートさせました。
最初はSNS上で見かける同業者と比べてしまい、「ほかにも上手な人がいる」「自分レベルでお金をもらっても良いのだろうか」と悩んだようです。しかし、「字の上手さ」だけでなく「やり取りの丁寧さ」「福田さんだから依頼したい」などサービス全体に価値を感じてくれる人がいることを知り、自分の場所やニーズを見つけるようになったと言います。

「何をするか」だけでなく「誰と、どんな風に働くか」

一方でどうしても諦めきれなかった「スポーツに関わる仕事」への思いから福田さんは、それまで正社員として勤務していた住友商事を退職。東京オリンピック・パラリンピック組織委員会に契約社員として転職しました。
周囲からは住友商事を退職することに驚かれたそうですが、この経験があったからこそ、「何をするか」だけでなく「誰と、どんな風に働くか」ということも自分にとって大切であると実感し、働き方を自分でデザインすることを意識するきっかけになったと言います。
1年延期が決定した東京オリンピック・パラリンピックですが、その間、コロナ渦で手紙のニーズが高まったことを受け、副業としていた「字を書く仕事」の起業を決意しました。
起業当初は、なかなか依頼が来なかったようですが、一つひとつ丁寧に依頼に向き合い続けた結果、友人、知人やSNSのレビューで高評価を得たことによって評判が広がり、新たな依頼につながったと言います。現在は手紙の代筆、雑誌や商品PRのための手書き文字提供、対面・オンラインでのペン字レッスンなど さまざまなお仕事をされています。

学生から送られるリアルタイムの質問にも答える福田さん
学生から送られるリアルタイムの質問にも答える福田さん

講座では、ワークシートが配られ、学生がどのようなライフ・キャリアデザインを描いているか、また起業に関するイメージについて自身で考えた後、ペアワークが行われました。学生からは「将来自立できるか不安」「入社した企業に自分が適応していけるかどうか怖い」といった声があがりました。

講座の中ではリアルタイムで質問ができるアプリを使って、福田さんと学生との間でさまざまな質疑応答が行われました。その中の一部をお届けします。

—自己分析で自分のやりたいことが分からなくなった

福田さん:部活やアルバイトなど自分が努力したこと、好きなことや得意なことなど何か強みを一つ見つけることが大事です。

—起業する上でどのように情報取集したか

福田さん:起業にあたって、インターネットや友人から情報を集めました。また、夫からもアドバイスを受けたので、起業したいという気持ちを人に言ってみることも重要だと思います。私は元々字を書くことは得意ではありましたが、好きではありませんでした。しかし、依頼を受け、感謝される経験をとおして段々と好きになりました。一つひとつのことを積み重ね継続することは大切だと思います。

—同業者が多い中で自分のスタイルをどう差別化して確立するか

福田さん:自分の得意なことを書き出してその中から2つ掛け合わせてみてください。2つ掛け合わせることで一気に市場が小さくなります。私は商社で働いた経験から身に着けたビジネスマナーや円滑なコミュニケーションなどと字を書くことを掛け合わせています。

ペアワークの様子
ペアワークの様子

受講を終えて

私は、就職活動やキャリア・ライフプランを考えると、これからどう自分の人生を歩んでいくのかといった大きな課題に対して漠然とした恐怖や不安を抱えていました。そんな中で、福田さんが講座で仰っていた「好きなことを仕事にする!」という言葉にはっとさせられました。好きなことを仕事にするには、やりがいや楽しさといった良い面もあれば、好きだからこそ他人と比べてしまうなど悪い面もあるかと思います。それでも「好きなことは、育てることができる」「”やりたい”を口に出すと、仕事につながる」といった言葉を信じて起業された福田さんのお話を伺って、就職活動やキャリアへの考え方が柔軟になったと思います。福田さんのように自分の「好き」や「得意」を見つめ直し、自分らしいキャリアプランを描きたいです。