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卒業生

「知りたい」思いを通してより良い社会を探る

株式会社日本総合研究所 調査部 主任研究員
文学部英文学科卒業
池本美香さん

学園ニュース VOL.256

桜が咲き始めた4月上旬、株式会社日本総合研究所の調査部にご勤務の池本美香さんにインタビューをさせていただきました。近年、問題となっている幼児・児童に関する制度について、池本さんは海外の動向を調査し、日本と比較しながら、より良い環境に向けて、研究や提言をされています。どうしてだろう、これでいいのだろうか、そのような思いと共に仕事に取り組んでいらっしゃる姿勢を感じました。

海外の生活の豊かさを実現したい

当初は数学科進学を考えていましたが、附属高校の英語の先生の影響で海外の生活・文化に興味が出てきて、最終的に英文学科に進学しました。大学時代、イギリス人の先生の故郷でのホームステイプログラムに参加し、住環境や労働時間の短さなど、生活の豊かさにびっくりして、海外への興味が強まりました。
卒業後は銀行に就職し、総合研究所に出向となりましたが、サマータイム制度、保育制度、育児休業制度、学童保育など、主に海外の制度との比較で、日本の在り方について提言してきました。
自分の子育てを通じて、日本の保育や教育に対する問題意識は一層強まっています。最近は、少子化や待機児童問題など、世の中の関心も高まってきたことから、主張を記事などに取り上げていただく機会も増えました。

  • 池本さんの著書・論文は、本学図書館でも読むことができる
    池本さんの著書・論文は、本学図書館でも読むことができる

より良い社会の環境を求めて

研究にはいろいろな手法があり、たとえば児童福祉分野であれば、歴史研究や統計データ分析などもありますが、私は現状を改善するために必要な制度やしくみを、国内外の好事例を集めて、直接現場を見て、考えることを心掛けています。外国の資料や文献など、以前は海外に行って集めていた情報がインターネットで読めるようになりましたが、そうした情報収集の際、大学で学んだ英語力はとても役に立っています。

周囲とのつながりの中で

共感いただいた編集者との出会いから本を出版したり、保育園や幼稚園の先生方の集まりに呼ばれて、海外の制度についてご紹介したり、国や自治体の会議で委員として発言の機会を得るなど、研究成果を現場に届けられることをありがたく思います。
私は自分が何かをしたいと計画を立てて進むより、その時周囲にいた方からいただいた機会の積み重ねや環境のおかげで、今の仕事に至っています。ほかの人にとってはあたりまえのように思えることにも、なぜだろうと疑問を持ち、知りたいと思い続けていると、だんだん情報が入ってきたように思います。仕事を通してたくさんの人とお会いして、いろいろな発見がありましたが、これからも出会う人にまず信頼していただける人間でありたいと思います。

プロフィール

池本 美香(いけもと みか)さん
附属中学校から本学に学び、1989(平成元)3月文学部英文学科卒業。同年4月三井銀行入行、三井銀総合研究所出向。2000(平成12)年千葉大学大学院社会文化学研究科博士課程修了。博士(学術)の学位を取得。所属先の合併に伴い2001(平成13)年から現職。保育・教育政策、社会保障などについて調査研究を行う。2008(平成20)年度・2009(平成21)年度に本学非常勤講師として「女性と政策」の講義を担当。一般社団法人JWUほうめいこどもクラブ設立のための調査・研究プロジェクトに客員研究員として参加。著書に『失われる子育ての時間』、編著書に『子どもの放課後を考える』『親が参画する保育をつくる』がある。

インタビューを終えて

池本さんのお話をうかがって、出会った人から学ぶ事がとても多く、そのご縁が自分のこの先を作っていくのだと感じました。私も出会った友だちや先生、支えてくれる家族との関係を大切にしたいと思いました。

●取材・文・学生記者 
文学部英文学科3年 小坂鈴香