生活を見つめて、設計を考える

2026.10.29

【卒業生インタビュー】株式会社竹中工務店 武田 基杏さん(家政学部住居学科2016年卒、家政学研究科住居学専攻2018年修了)

JWU PR アンバサダーによる卒業生インタビュー連載。今回は、家政学部住居学科(現 建築デザイン学部建築デザイン学科)をご卒業され、株式会社竹中工務店でご活躍されている武田基杏さんに本学までお越しいただき、インタビューを行いました。日本女子大学附属中学校から大学院までの学生時代の思い出や、現在のお仕事についてさまざまなお話を聞かせていただきました。

ものづくりに興味を持った高校時代

私は日本女子大学附属中学校から大学院までの12年間、日本女子大学で学びました。入学のきっかけは、日本女子大学の卒業生である友人のお母さんに「とても良い学校だよ」と教えられたことです。実際に附属中学校を見学した際、自然豊かで、生徒たちがのびのびと過ごしている様子を目にし、「素敵な学校だな」と感じ、入学を決めました。もともと動物を観察したり、食べることが好きだったので、大学では、物質生物科学科(現 化学生命科学科)か食物学科(現 食科学部)に進みたいと考えていました。
そんな時に高校の担任の先生から「君は手を動かして何かを作り出す方が向いているのでは?」と助言を受けました。思い返すと、中高6年間を通して、文化祭の衣装制作や卒業アルバム委員として、人と交流しながらものづくりに関わる活動に力を入れていました。そこで、建物の設計という形で、人の役に立つ道が合っているかもしれないと思い、住居学科への進学を決めました。今思い返すと、あの時、先生に私の性格を理解した上でアドバイスをいただけてよかったと感謝しています。

建築以外にも視野を広げた大学・大学院生時代

大学時代は、やる気に満ちた同級生がたくさんいて、毎日が充実していました。好きなことに熱中しながら学ぶ楽しさを知ったのは、この頃だったと思います。3年生から大学院まで所属していた篠原研究室では、篠原先生にいろいろなところに連れて行っていただきました。ベトナムでの研究活動や、台湾、中国の学生さんとの国際ワークショップは、異文化に多くの刺激を受け、とくに印象に残っています。
個人では、大学、大学院を通して「地域特性を活かした建築手法」をテーマに研究をしていました。集合住宅や公共施設は、その時の流行を捉えた、統一されたデザインで計画されることが多いですが、その土地のコンテクストを理解し、計画に積極的に取り込むことこそが、より使いやすく、地域に愛される施設を生み出す方法なのではないかと考えました。大学では卒業制作を通して、地元の新潟県三条市に町工場を取り込んだ大きな橋を提案し、大学院では、地方都市の民間集合住宅を調査し、地域の特性が出ている部分を抽出して、デザインへどのように還元していくべきかをまとめました。結果、集合住宅のデザインに対する住民の評価は、地形や住環境が大きく影響していることが分かり、各地域ごとに異なる結果が得られたので大変興味深かったです。
他にも、テニスサークルに参加したり、アルバイトでスキーのインストラクターをしたりと、学生時代には勉強以外のこともアクティブに活動していました。1つのことに固執せず、多様なことに挑戦することは、多角的な視点を作るために必要なことだと思っていましたし、その為に、臆せず積極的に取り組む精神は、中学校からの日本女子大学での環境によって身についたものだと感じています。

スリランカのジェータワナ ラーマヤ大仏塔
趣味は旅行で、国内外のさまざまな場所をアクティブに巡っている。
写真はスリランカのジェータワナ ラーマヤ大仏塔

竹中工務店でのアルバイトを経て、就職へ

すでにアルバイトしていた学科の先輩から「医療設計部門でアルバイトを募集しているからやらないか?」と誘われたのがきっかけで、大学2年生から竹中工務店でアルバイトをしていました。業務を通して、病院は、医療行為を行う場所であることを大前提に、人が病や傷を癒す場所として長期的に滞在する、「暮らし」の延長にある場所だと感じはじめ、医療設計のデザインは発展の余地があるのではないかと考えていました。
そんな時、模型制作を担当した同社が手掛けた病院を見学して、感銘を受けたことを覚えています。病室の窓際にカウンターを設けたシンプルなデザインなのですが、それだけで、患者さんにとっての新しい居場所が確保されていて、医療空間を保ちつつも、どこか病室らしくない雰囲気を感じました。これがきっかけで、「この会社で設計に携わりたい」と思いました。
入社して、希望通り医療設計部門へ配属されたので、自分ができる新しい病院デザインの一つとして、病棟の廊下に小さなベンチを計画しました。これもささやかな操作ではありますが、カウンターと同じように、患者や付添人に自分のベッドのまわり以外の居場所を提供する一つの手法だと思っています。竣工後に訪問した時は、リハビリの休憩や患者同士の談笑のスペースに使われていて、大変嬉しく思いました。
就職先として竹中工務店を選んだのも、病院設計に感じていた課題意識を、学生時代から同社の医療設計部門の方々と共有できたからです。
建築設計の就職活動は、一般的な就職活動とは少し異なり、即日設計試験や自身の研究についてのプレゼンテーションが求められます。大学院までの6年間で手掛けた作品を1冊のポートフォリオにまとめて「私はこういう作品を作れますよ」とアピールしました。

設計に携わったふれあい生協病院
設計に携わったふれあい生協病院(埼玉県川口市)では、病室の外にも患者や付添人の居場所を設けた

住居学科で学んだ“生活を基準にした考え”

入社当初は医療・学校建築部門に所属していましたが、現在はオフィス・商業部門で、企業オフィスの設計に携わっています。設計という仕事の魅力は、ありきたりかもしれませんが、「地図に残る仕事」であることです。一方、失敗も残ってしまうので、絶対に失敗できないという緊張感を持って取り組んでいます。1つの建物を建てるためには、デザインをする人から施工を管理する人まで、関わる人がとても多く、さまざまな部署や関係のある会社と打ち合わせ・調整をしながらプロジェクトを進めていくことになり、設計担当はその中心にいます。設計というと図面に向かい続けるイメージがあるかもしれませんが、そのような仕事は全体のごく一部で、打ち合わせなどで日々各地を飛び回っています。そういった意味では、やはり高校の先生のアドバイスは正しかったかもしれません(笑)。
設計するときには、すべての施設は「それぞれの住まいの延長」にあり、利用者の生活の一部になるように心がけています。こうした“生活を基準にした考え方”は、日本女子大学の住居学科らしさなのではないかと思います。
現在はオフィス・商業部門にいますが、将来的には再び医療設計にも携わりたいと考えています。とくに子どもが生まれたいま、もう一度産婦人科の設計に挑戦したいです。以前よりも利用者の目線に立ったデザインができるのではないかと感じています。

設計図をもとに打ち合わせをする武田さん
設計図をもとに打ち合わせをする武田さん。
手にしている三角スケールは仕事の必需品

現役の⼤学生に向けて

社会人になると自由に使える時間が限られてくるので、学生のうちに頑張っていろいろなところに行ってほしいです。とくに海外に出てみることをおすすめします。
私も大学院生の時にはたくさんの国に行きました。そうした経験が仕事でアイデアを出す際の引き出しになっています。
あとは、ぜひ友人を大切にしてください。社会に出てからも大学時代の友人とは頻繁に会い、近況報告をしたり、お互いを励ましたりしています。ぜひ充実した学生時代を過ごしてください。

プロフィール
武田 基杏 たけだ ききょう

附属中学校から本学で学び、2016年3月に家政学部住居学科を卒業したのち、同年4月に本学家政学研究科住居学専攻に入学。修士論文は「地域特性からみる地域の発展に資する民間分譲住宅共用部の研究」。2018年3月に修了し、同年4月に株式会社竹中工務店に入社。現在はオフィス・商業部門で建築設計を担当している。

Interwiewを終えて

武田さんのお話を伺って、「生活を基準にした設計」という考え方や「すべてのデザインは人の生活の延長にある」という捉え方がとても印象に残りました。日々をただ過ごすのではなく、生活するなかで身近なことから何かを感じ、そこから考えたりすることが重要だと思いました。私も残りの大学生活でも積極的に考え行動する姿勢を続けていきたいと思います。
(JWU PR アンバサダー/人間社会学部心理学科3年 小原司)

今回のインタビューをとおして、武田さんがご自身の仕事に誇りとやりがいを持って取り組んでいらっしゃる姿に、大変刺激を受けました。また、日本女子大学での学びや思い出が、現在のお仕事にとても活きているというお話がとても印象的でした。
私自身の専門分野は異なりますが、これからの大学生活では興味のあることに積極的に挑戦し、本学での学びを将来の糧にできるように努力していきたいです。
(JWU PR アンバサダー/家政学部家政経済学科3年 福田琴子)