生活に根ざした視点から、考え・伝える仕事の最前線へ
2026.03.19
JWU PR アンバサダーによる卒業生インタビュー連載。今回は、毎日新聞社で記者としてご活躍されている鴨田玲奈さんに本学にお越しいただきインタビューを行いました。現在のお仕事で大切にされていることや、大学での学びに興味を持ったきっかけなど、たくさんのお話を聞かせていただきました。
記者としても必要な思考パターンを学んだ大学時代
日本女子大学への進学を決めた理由は、日本女子大学附属豊明小学校に通っていた頃から、児童や生徒たちの自由な雰囲気と芯の強さが好きだったからです。大学進学を前に、受験というものを経験しておきたいなと心揺らいだ時期もありましたが、担任の先生や親に相談したところ、自分のやりたいことが日本女子大学でできるかどうかを判断基準にするよう助言をもらい、そのまま進学することに決めました。
私は、文章を書くのが好きなこともあり、高校生の頃から、漠然と新聞記者になれたらいいなと考えていました。家政経済学科への進学を決めたのは、各学部・学科について調べたときに、家政経済学科では「生活する人の視点」を大切にしていることを知ったのがきっかけです。当時、「大学で何かを学ぶなら、日々の生活やこれからの人生に結びつくことをテーマにしたい」と考えていました。いま振り返ってみると、新聞記者になりたいという夢も、身近な事象を扱いたいという思考から生まれていたのかもしれません。
大学で印象に残っている授業は、1年生の時に受けた「生活・家庭管理論Ⅰ」です。専業主婦がいかにして生まれたのかという歴史などを学び、個人的な問題に見える事象が、実際には社会構造や歴史によって形作られてきたということに気づくきっかけになった授業でした。たとえば、家事、育児、介護を夫婦で共同してやり遂げることを考えたとき、それを「夫婦の個人的な問題」として見れば、夫婦における役割分担をどうするか、といった個別具体的な解決策を考えることに帰着します。しかし、経済格差が広がり、物価高騰に対して賃金の引き上げが追いついていない社会情勢下では、多くの夫婦が共働きをせざるを得ません。すると、共働きで家事、育児、介護を成し遂げることが可能かどうかを、夫婦の努力だけで判断することはとても難しくなります。
このような視点に立つと、家事や育児、介護の問題は、個別の夫婦に限った問題ではなく、社会情勢に起因する普遍的な課題に様変わりします。ともすれば個人の問題として見過ごされてしまいそうな課題を、社会的な背景と結びつけて考える思考パターンが、この授業で養われ、現在の仕事にも生かされているように思います。
文章を書く楽しさと社会への関心が“記者”への興味に
記者という仕事に興味を持ったのは、記憶を遡ってみると、附属中学校で受けた国語の授業にきっかけがあった気がします。現在中学校で校長を務める野中友規子先生の授業だったのですが、テストの解答用紙の形式が特殊で、ただいくつか大きな枠があるだけで、そこに収まる範囲であれば、いくらでも解答を書いていいというルールでした。なので、想像力を膨らませて、米粒みたいな小さな文字で好き放題に回答を書き散らしているうちに、文章を書く楽しさに目覚めました。それが解答として良いものであったかは分かりませんが…(笑)。
高校生の頃にも気づきがありました。当時は家族でそろって夕方6時半にNHKのニュースを見ながら夕食を取るのが習慣でした。私はテレビの画面に向かって、ニュースに対して感じたことを(基本的には文句のようなことなのですが)、ずっと言っていたようです。それを見た母から「あなたはニュースが好きなのね」と言われて、自分はニュースに関心があるのだと初めて気がつきました。それ以前から「文章を書く仕事をしたい」と思っていたので、その時に記者の仕事への興味が湧きました。
誤解を恐れずに言うと、多くの人にとって、大学の授業で学んだ内容が仕事に直接生きることはほとんどないと思います。大学は学問を修める場所であって、職業訓練のための機関ではないので、無理に大学での学びと仕事を結びつける必要はないと考えています。
一方で、大学で学ぶプロセスの中には、人生のどんな場面でも普遍的に通じる学びがあると考えます。たとえば、自分にとって理解に時間のかかる分野について学ぶとき。ただ試験のために暗記するだけでは、その場限りの「労力」で終わってしまうと思います。
私はどんなに苦手と感じる分野でも、その中で何か1つは面白いと思える部分を見つけるように心がけていました。これは現在、記者としての仕事でも大切にしていることです。記者として仕事をしていると、自分にとっては未知と思えるような分野の取材をすることが多々あります。記者であるからには、未知の分野であっても、その分野の中で何がニュースなのか、面白いポイントを見つけ出し、判断しなくてはなりません。大学生時代からの些細な心がけや学びの姿勢が、ふとしたときに自分の仕事や人生に生きてくるのではないでしょうか。
宇都宮支局での取材先で生まれた絆
基本的に、新聞記事は情報を分かりやすく伝えるために存在します。ですので、文章での表現に記者独自のこだわりを落とし込む機会はあまりありません。とくに、警察や行政の担当は、事故の発生を伝える記事や、逮捕情報を伝える記事、行政の施策や選挙の情勢を伝える記事など、事実を淡々と、なるべく多くの情報量で書き込むことが求められるケースがほとんどです。
ただ、記者の視点や個性がにじむ記事もあります。たとえば、スポーツについては、記者が取材して気づいたプレーの面白さや選手の魅力、選手を取り巻く人たちの思いなど、その記者にしか書けない記事というものが生まれやすいのです。私は高校野球の担当を長くしていたので、活躍した選手にフォーカスを当てた記事を書くときには、自分が取材して感じたその選手の人となりが十分に伝わるよう表現することにこだわっていました。
2023年春の選抜高校野球(以下、センバツ)に、栃木県の県立石橋高校が出場したときのことがとくに印象に残っています。私は宇都宮支局に配属されていた3年間、ずっと高校野球を担当していました。石橋高校は21世紀枠でセンバツへの出場を決めていました。毎日新聞社がセンバツを主催していることから、ほぼ毎日記事を出すために石橋高校に通うようになりました。そうすると、自然と選手たちや先生と仲良くなることができます。
大会が終わったあと、石橋高校が、私が書いた新聞記事や、撮影した選手の写真をまとめた冊子を作ってくださり、校長先生から「記事の最後に鴨田さんの名前が載っているのを見るとホッとしました」というお礼のメールをいただきました。そのとき、本当にこの仕事をやっていてよかったなと感じました。
将来に向けた思い、大学生へのアドバイス
2025年4月から経済部で働いています。東京の本社で記事を書くことは初めてですし、経済情勢はとくに動きが速いです。ですから、知るべきことは増えますし、ニュースへのアンテナの精度もこれまで以上に高めなければいけないと感じています。インプットとアウトプットを繰り返しながら、難しい経済についても分かりやすい記事を書く実力をつけることが今後の目標です。一方で、ワークライフバランスも大切にしたいと考えています。記者は情勢に左右されやすい職業ですが、私自身もワークライフバランスについての記事を書くこともあるので、まずは自分自身で充実した生き方や日々の過ごし方を体現できるようになれたらと思っています。
大学生の皆さんは、採用選考が早期化したことから「早く就活に向けて動き出さなければ」と焦ることもあると思います。私も大学生のときは同じように感じていました。ですが、先ほどもお話ししたように、大学時代に学んだ内容が仕事に結びつく人はごく稀で、ほとんどの人は全く新しいことをやることになると思います。では、それを見据えて学生の頃から仕事の内容を知って準備をしておけばいいのか、というとそんなことはありません。仕事は、会社に入ってからきちんと教えてもらえますし、会社に入ってから学ぶものです。ですから、就活のことばかりを考えて焦るのではなくて、授業やアルバイト、サークルなど、学生時代にしか打ち込めないことを一生懸命やってほしいと思います。ありきたりかもしれないですが、何かに一生懸命取り組んだ経験は、仕事をしていく上でふとした時に役に立つものです。役に立つだけでなく、自分はこれだけやった、と自負できるものが何か1つでもあれば、それが自信になって思い切った生き方ができるとも思います。
日々の仕事に追われる社会人になると、そんな経験がとても貴重に思えてきます。今しかない学生時代をぜひ大切に過ごしてください。
プロフィール
鴨田 玲奈 かもだ れいな
附属豊明小学校から本学で学び、2021年3月に家政学部家政経済学科を卒業したのち、同年4月に株式会社毎日新聞社に入社。2024年3月まで宇都宮支局に所属し、同年4月からデジタル編集本部デジタル編成グループに。2025年4月からは東京本社の経済部で、商社、流通各社を担当している。
interviewを終えて
鴨田さんのお話を伺っていて、大学生活の学びの中で身についた「思考のパターン」にとても共感していました。何かひとつのことを考えるときも、自分が置かれている立場からではなく複数の立場に立ってみること。私の「立場」を形作るものは決してひとつの要素だけではなく、性別や年代を始めとしたものたちが複雑に絡み合っていること。このことを意識するだけで、以前よりずっと状況を俯瞰して考えられるようになった気がしています。個人的に見える問題や課題を、社会的な構造によって生まれたものではないかと想像を広げることは、周りに対して優しくなれるだけでなく、きっと自分自身が何か悩んだときに、必要以上に自分のことを責めずにいられる考え方ではないでしょうか。これからも貪欲に大学で学びを重ね、よりさまざまな考え方を持てるように日々努力したい。そう考えることができる、とても大切な時間になったと感じています。
(JWU PR アンバサダー/人間社会学部教育学科 3年 石原愛珠)
大学生になってから授業の課題としてもJWU PR アンバサダーの活動としても自分の考えを表現する機会が増え、どのように表現すべきか悩むことが増えました。そのなかで、新聞記者として第一線で活躍されている鴨田さんのお話を伺えたことは貴重な経験でした。大学時代にさまざまな活動を通してたくさんのことを吸収していきたいと感じました。
(JWU PR アンバサダー/人間社会学部心理学科 2年 小原司)
※2027年4月に家政学部家政経済学科を前身とした経済学部経済学科(仮称・構想中)を開設予定です。
