建築を“共通言語”に、世界と協働する
2026.04.08
日本女子大学建築デザイン学部とホーチミン市建築大学および野村不動産株式会社(以下、野村不動産)が共催した国際ワークショップに、学部生4名と大学院生7名が参加しました。国際ワークショップは、3月9日(月)から18日(水)までの10日間にわたりベトナム・ホーチミン市で行われ、両大学から計31名の学生が参加しました。
日本女子大学とホーチミン市建築大学は2025年11月に大学間協定を締結しています。今回のワークショップは、その協定に基づいた教育・研究活動の一環として実施されました。さらに野村不動産が参画する、大学の学びと社会をつなぐ産学連携の取り組みでもあります。
それぞれの強みを生かしながら進める調査と設計検討
学生たちは日本とベトナム混成の5グループに分かれ、「建築」を共通言語とし、言語の壁を越えて協力しながらホーチミン市内の集合住宅を調査し「自然と暮らす」をテーマに、都市の再開発計画や住戸設計の提案に取り組みました。対象となったのは、再開発が進むホーチミン市内の集合住宅(団地)です。外廊下に鉢植えが置かれていたり、住民が自分たちで増改築していたりと、公共の空間と私的な空間の境界が緩やかに重なり合う特徴的な住環境が広がっています。学生たちはこうした特徴を読み取りながら、空間の構成だけでなく、そこに根付く暮らしやコミュニティのあり方にも目を向けていきました。
参加した住居学科(現:建築デザイン学部)4年の冨岡さんは「日本では、構造や環境条件をもとに建築を組み立てていくアプローチが重視されることが多いと感じていました。一方で、ベトナムの学生は建築をより表現的な視点から捉え、自由度の高いコンセプトや空間構成を提案している点が印象的でした」と話します。
言葉の壁を越えた協働の中で深まる設計の視点
各チームで議論と設計検討が本格的に進められていく中、言語や文化、設計のアプローチの仕方の違いに向き合いながら、一つの提案へとまとめていくプロセスは決して簡単なことではありません。
学生たちは、図面やスケッチ、模型といった視覚的な表現を使って考えを共有し、意見をすり合わせていきました。優秀プロジェクトに選ばれたチームの一員となった建築デザイン研究科修士課程2年のAlaraさんは、「言語の違いを越える手段として、図面やスケッチによる非言語的なコミュニケーションが大きな役割を果たしました。描く行為そのものが思考の共有と調整のプロセスとなり、提案の説得力を高めることにつながったと感じています」と振り返ります。
この経験を通じて、学生たちは設計の力だけでなく、思考を構造化して他者と共有する力、対話を通じて解を導く力を実践的に身につけていきました。
「残す」発想から生まれる提案
最終日には、各グループが提案を発表しましたが、いずれの提案にも共通していたのは、「既存の建築物を生かしながら地域をより豊かにしていく」という視点でした。
具体的には、住民同士の交流を促す空間の工夫や、日本の伝統的な修復技法である「金継ぎ」にヒントを得た改修の考え方、地域コミュニティに根差した都市農業の導入など、多様なアイデアが生まれました。
手描きの図面や模型を用いた発表は、これまでのマンション設計とは異なるアプローチとして、野村不動産の設計部の責任者からも「全体としてクオリティが高い」と評価されました。これらの提案は、実際の物件への反映も検討されています。
専門家との対話を通じた学び
ワークショップには、現役の教員であり建築家でもある篠原聡子学長はじめ、キャズ・T・ヨネダ先生や、国内外で活躍する専門家が講師として参加しました。講義や講評をとおして、学生たちは自分たちの提案を多角的に見つめ直し、設計の意図や価値をより明確にすることができました。フィードバックを受け、何度も検討を重ねる経験は、設計の完成度を高めるだけでなく、思考の深度を引き上げる大きな学びとなりました。
世界とつながり、社会に応答する力へ
世界へ飛び出し、異なる文化の中で建築を考え、他者と協働しながら課題に取り組んだ今回のワークショップは、学生にとって大きな成長の機会となりました。建築デザイン学部では、大学間協定に基づく国際連携と産学連携を組み合わせた教育を通じて、社会の中で建築でかなえられることを問い続ける力を育んでいます。
