光に触れて照明デザインを考える

2026.03.25

【イベント紹介】建築デザイン学部で「照明デザインのワークショップ」を実施

建築デザイン学部特別招聘教授の東理恵(あずまりえ)先生が中心となって進めている、樟渓館ワークショップA教室のリニューアルでは、光環境の見直しも計画されています。
そこで今回、建築デザイン学部の学生たちに「照明デザイン」に触れてもらうことを目的に、2025年10月30日(木)と11月6日(木)の2日間、特別ワークショップを開催しました。
講師を務めたのは、「星のや東京」をはじめ数々のプロジェクトで東先生と協働してきた、ICE都市環境照明研究所 所長の武石正宣(たけいしまさのぶ)氏。2週にわたって行われたワークショップの内容と、学生たちの取り組みを紹介します。

武石氏(写真右)と東先生(写真左)
武石氏(写真右)と東先生(写真左)

照明デザインを考えるうえで大切な3つの「間」

1回目の授業では、武石氏がこれまで手がけてきたプロジェクトの紹介を交えながら、ライトの種類や光の単位といった基礎知識から、光を用いて空間を演出する際の考え方まで、幅広く解説していただきました。
「『ここに○○があるから光を当てなければならない』という発想で照明を考えると、空間はどうしても説明的になってしまいます。そうではなく、『人間にとって本当に必要な光とは何か』を起点にデザインすることが大切です。また、照明は交換や保守点検が必要になるもの。“作る人”“守る人”、そしてそこで“過ごす人”。すべての人にとって良い結果でなければ、照明デザインは持続しないと考えています」(武石氏)
東先生は、武石氏との協働を振り返りながら、次のように語ります。
「一緒に仕事をしていて勉強になるのは、『光は、当てる先があって初めて見える』ということ。武石さんの仕事は、光を当てる場所を丁寧に考え、そこを際立たせながら、周囲に影をつくっていく点がとても印象的です」
学生たちが特に熱心に耳を傾けていたのが、武石氏が大切にしている3つの「間」についての話でした。
「私は『空間』『時間』『人間』の3つの“間”を意識しています。『空間』は“空(カラ)”の“間”。床や壁、天井に囲まれたその空間の中で、光がどうあるべきかを考えます。照明は『時間』によって変化させることもできます。朝から夜へ、そしてまた朝へと移ろう時間の流れに寄り添った光の設計が必要です。最後が『人間』。照明は人と人との間に存在します。例えばレストランで、自分だけが明るく照らされていたら落ち着きませんよね。テーブルや料理に光が当たり、向かい合う相手はほどよい明るさで見える。そのように、人と人の間で光をどう設計するかも重要です」(武石氏)
講義の後は、学生たちが4チームに分かれ、照明デザインの課題に取り組みました。
各チームには、色温度(ケルビン)の異なるスポットライトとラインライトがそれぞれ2灯ずつ配布され、それらを使ってワークショップA教室内の有孔ボードを照らし、プレゼンテーション空間を演出することが課題です。発表は翌週の2回目授業で行われます。
学生たちは早速、ライトごとの照射範囲や明るさを比較しながら検討を開始。武石氏や東先生からアドバイスを受けつつ、試行錯誤を重ねていきました。

ケルビンやルクス、ルーメンなど、照明の基本用語についても解説いただきました
ケルビンやルクス、ルーメンなど、照明の基本用語についても解説いただきました
ラインライトの特性について説明する武石氏
ラインライトの特性について説明する武石氏
授業終了後も学生たちは時間の許すかぎり武石氏に質問をしていました
授業終了後も学生たちは時間の許すかぎり武石氏に質問をしていました

学生たちが目指した理想のプレゼン空間

2回目の授業では、引き続きチームごとに照明計画を練り上げ、最後に発表が行われました。各チームの発表概要は以下の通りです。

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■ 現状の教室照明は空間全体を均一に照らしており、有孔ボード上の発表物に視線が集まりにくいと考えました。そこで、光によってボードが浮かび上がるような構成を目指しました。
スポットライトの照射範囲を制限できないかと考え、ライトの直径より小さな穴を開けた紙を被せて検証したところ、制限された光が周囲に反射していることが分かりました。この現象を生かし、ピンク色の色紙を用いて反射光に色を付けています。
ラインライトは、光源が直接目に入らないように隠しつつ、ボードの広い面に反射させて空間全体の演出に活用しました。中央のボードに設置した2本のラインライトの光が、背面や側面のボードに反射し、通常時は空間全体を明るく、発表時にはスポットライトによって展示物に焦点が当たる構成としています。

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■ 「表から見ただけでは、裏側でどのように光が当たっているのかが分からず、想像をかき立てる照明」をコンセプトにしました。
最前面のボード裏に縦方向のラインライトを設置し、2枚目のボードにはグラデーション状に光が当たるよう調整。3枚目のボードはラインライトとスポットライトの光が重なり、最も明るい面となっています。
最奥の4枚目のボードには、床面近くからスポットライトを当て、床反射と合わせて、ふんわりと光が宿るような表現を目指しました。光源が直接見えなくても、光の輪郭が感じられる特別な空間体験を意識しています。

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■ 「光をきれいに見せたい」という思いを出発点にデザインしました。最終的に、ラインライトを床に置くことで、手前のボードは暗く、奥のボードは反射光によって美しく見える構成にしています。
手前の展示が見えにくくならないよう、発表時には2つのスポットライトを使用。できるだけ遠くから当てることで、鑑賞者の影が映らず、展示物だけが際立つ位置を探りました。発表時以外はスポットライトを消し、そこにいるだけで心地よい空間となるよう工夫しました。

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■ 実験を重ねる中で、ボード正面にライトを置くと、鑑賞者の動線を妨げたり、眩しさを感じたりすることが分かりました。そこで、メインボードの両側にサブボードを配置し、反射による光のグラデーションをつくりました。
今回のワークを通して、明るすぎても暗すぎても人は居づらく、淡い光のある場所に心地よさを感じることを実感しました。

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各発表に対し、武石氏からは具体的なアドバイスや、さらに発展させるためのアイデアなどをいただきました。総括として武石氏は、「もっとシンプルな提案になるかと思っていましたが、どのチームもインスタレーションまで考えていて、とても面白かったです。発表をまとめるまでに、みなさん身体を使って照明を動かし、たくさん試したと思います。もちろん頭で考えることも大切ですが、身体動かして取り組む姿勢は、実社会の現場でも非常に大切になります。今後はぜひ、照明のことも考えて建築デザインに取り組んでいただけると、皆さんの作品にさらに深みが増すのではないでしょうか。2日間おつかれさまでした。」とメッセ—ジをいただきました。東先生は「建築の設計で照明の提案まで行うことは、授業ではあまり扱わないかもしれませんが、社会に出ると非常に重要な要素になります。今回武石さんから学んだことを忘れずに、メーカーに一任して照明を配置してもらうのではなくて、自分の意思を照明にも反映できる設計者になってほしいです」と授業を締めくくりました。

発表に向け試行錯誤を繰り返す学生
発表に向け試行錯誤を繰り返す学生
学生の発表にアドバイスをする武石氏
学生の発表にアドバイスをする武石氏
最後は全員で記念撮影
最後は全員で記念撮影

建築デザイン学部では今後も、各分野の第一線で活躍する専門家を招いた授業やイベントを実施し、創造性と表現力を備え、豊かな生活環境をデザインできる人材の育成に取り組んでいきます。