開催レポート
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第28回子育てサイエンス・カフェ開催レポート
一生の健康につながる”よく噛む習慣” 子どものうちに育てたい食べ方
開催:オンライン開催
講師:小城 明子(食科学部栄養学科 准教授)
はじめに
健康のために“何を”、“いつ”食べるかはよく語られますが、実は“どう食べるか(咀嚼)”という日常の健康行動こそが、生涯にわたる健康の土台となります。今回は、子どものうちに身につけたい“食べ方の育て方”についてお話ししました。
“噛む”は学習で身につける機能、将来の初期設定に
噛む機能は生まれつき備わっているものではありません。離乳期から学童期にかけて、適切な刺激と経験を通じて獲得していく発達現象であり、学習して身につけるスキルです。この時期に毎日繰り返される“いつもの食べ方”は、大人になっても無意識に行われる、いわば初期設定(デフォルト)となります。一度身についた習慣は安定しますが、負担が減る方向(噛まなくなる方向)へは簡単に変化してしまいます。だからこそ、感受性の高い子どものうちに「よく噛むことが当たり前」という土台を築いておくことには、一生の財産としての大きな価値があります。
データが示す“よく噛む習慣”の多角的な健康メリット
丁寧な咀嚼は、唾液アミラーゼによる消化を助けるだけでなく、食べ物本来のおいしさを引き出します。研究データによれば、よく噛むことで満腹中枢を刺激するホルモン(GLP-1)が働きやすくなり食べ過ぎを防ぐ可能性や、咀嚼動作そのものが食後のエネルギー消費(DIT)を高め、体重コントロールを支える可能性が示されています。また、日本の子どもを対象とした追跡調査では、早食いの習慣がある子は将来の体格指数(BMI)が高くなる傾向や、血圧などの健康指標に影響を及ぼす可能性も報告されています。よく噛むことは、将来の生活習慣病予防にも直結する重要な習慣です。
家庭で習慣を育むための支援のポイント
“よく噛む”を家庭で当たり前にしていくためには、以下の3つのポイントを意識した支援が有効です。
(1)「噛める能力」を育む食事の仕掛け
まず何より大切なのは、食卓に“噛みごたえ”を用意することです。根菜やきのこ、乾物といったカムカム食材を積極的に取り入れ、食材を大きく切る、加熱を短くする、水分を少なく仕上げるといったカムカム調理を意識しましょう。こうした工夫は、毎日の食事そのものを自然な練習の場に変え、特別なトレーニングをせずとも子どもの噛む力を引き出し、自然に噛むことを意識させることにつながります。
(2)「やってみたい」という意欲を引き出す工夫
噛むことで生まれる甘味の変化や食感のおもしろさを親子で共有し、食べることへの関心を高めます。幼児期ならカレンダーにシールを貼って達成感を視覚化するなど、楽しみを交えたアプローチが、子どもの前向きな意欲を後押しします。
(3)「続けやすい環境」を整える
習慣の定着には、物理的な環境づくりも欠かせません。食べ方を意識しやすくするために「一口量を少なくする」ことや、噛むプロセスを飛ばさないよう「飲み物での流し込みを防止する」といった具体的なルールを共有しましょう。そして、時間に追われずゆとりを持って味わえる十分な食事時間を確保することが、無理なく習慣を定着させる鍵となります。
日々の食卓で “よく噛む”ことを意識しながら、生涯にわたる健康の土台を育んでいきましょう。
(食科学部栄養学科 准教授 小城 明子)
食科学部 栄養学科
本専攻では、基礎医学や臨床栄養学に重点を置き、管理栄養士として活躍できるカリキュラムを提供しています。
実験・実習を豊富に取り入れ、健康維持・増進、疾病予防や治療に対する栄養管理・栄養教育を学ぶことで、将来、医療職の一員として医療現場や保健施設、行政などで求められる思考力と実践力を育みます。
卒業時には栄養士免許が得られるため、管理栄養士国家試験の受験資格が取得できます。
