繊維素材のプラズマ処理に関する研究で日本繊維製品消費科学会のポスターベスト発表賞を受賞!

2026.09.17

【学生インタビュー】家政学部被服学科4年木村祐子さん

2026年6月27日(土)、28日(日)に京都女子大学で開催された「日本繊維製品消費科学会2026年 年次大会」で、家政学部被服学科4年の木村祐子(きむらゆうこ)さんの発表「プラズマ処理が繊維材料に及ぼす効果とその評価」が「ポスターベスト発表賞」に選ばれました。今回はさらに研究を深めている木村さんに、研究の内容からこれまでの学生生活、今後の展望までお話を伺いました。

プラズマ処理による
染色性向上を明らかに

—— このたびはご受賞おめでとうございます。さっそくですが、今回受賞された研究を始められたきっかけから教えていただけますか?

私が所属する整理・染色加工学研究室の榎本一郎(えのもといちろう)先生から「これまでの卒業論文を見て、興味のあるテーマがあれば引き継いでいいよ」と言われ、先輩方の卒業論文を読み進める中で「繊維素材のプラズマ処理技術」に出会いました。プラズマ処理時間によって繊維に変化が生じる点に興味を惹かれました。「プラズマ処理」とは、気体に高電圧をかけて発生させてイオンや電子で、繊維に物理的・化学的な影響を与える技術です。私の研究では「真空プラズマ処理」を用いていて、容器内を真空ポンプで減圧し、少量の酸素ガスを流しながら高電圧をかけて気体をプラズマ化させています。プラズマは、科学館にある静電気発生装置の紫色の火花をイメージしてもらえるとわかりやすいかもしれません。処理中は容器の中にぼんやりと青紫系の光が発生するのですが、その光景を見るたびにワクワクして、研究のモチベーションになっています。

—— 具体的にはどのような研究をされているのですか。

プラズマ処理は、薬剤を用いずに繊維の表面を改質して染色性を向上させる手法として知られています。先輩の先行研究は羊毛繊維を対象に、プラズマ処理の時間と染色の時間を変えて染色性を調べるものでしたが、私はより細かい条件で検証したいと考えました。そこで、プラズマ処理時間と染色時間を掛け合わせた計25パターンの、同じ羊毛繊維の試料を作成。さらに染料濃度も3種類用意して、染色性を比較評価しました。また、それらの試料に対して染色堅ろう度試験(洗濯による色落ちや生地の変形などを調べる試験)も行いました。その結果、プラズマ処理により羊毛の表面構造が変化し、初期染着性(染め始めの染まりやすさ)の向上が確認できました。一方で染色堅ろう度の低下や、生地の変形・黄変、きしみといった課題も見られ、プラズマ処理によって繊維構造が「染料が入りやすく, 同時に出ていきやすい状態」に変化している可能性が示唆されました。

染色性を比較評価した試料
染色性を比較評価した試料

—— プラズマ処理によって染色性が向上できるとどのようなメリットがあるのですか?

一般的な衣服の染色工程は高温で染める必要があるため、エネルギー消費や汚水の処理など環境負荷が大きいのですが、プラズマ処理で染色性が向上すれば、環境負荷低減につながります。大量生産・大量廃棄による環境負荷が指摘されるファッション業界において、こうした技術の可能性を探ることは、私たち世代の関心事のひとつですし、大きな意義があると感じています。

—— 今回、学会初参加で「ポスターベスト発表賞」を受賞されたのですね。

まわりの発表者は社会人や大学院生ばかりだったので、名前を呼ばれたときは本当に驚きました。評価理由に「着眼点、構成、展開力、質疑に対するプレゼンテーション力」とあり、自分の研究や当日の対応が認められたことが素直に嬉しかったです。
じつは春休みに毎日コツコツ実験をしていたら、先生から「京都で学会が開催されるけど発表してみる?」と聞かれ、「京都に旅行に行ける!」ぐらいの軽い気持ちで「行きます!」と即答してしまったんです(笑)。でも、いざ発表をするとなると、期限内に実験を終えなければならないし、ポスター作りも初めてで大変でした。学内の八十年館の廊下には食科学部など他学科の先輩方のポスターが貼られているので、どうすれば伝わりやすいレイアウトになるか何度も見に行って参考にさせていただきました。
当日は2時間ほど自分のポスターの前に立ち、来場者に概要を説明したり、質問に答えたりしたのですが、発表が終わった瞬間に自然と涙があふれてきてしまいました。ずっと気を張り詰めて対応し続けていたので、終わった安堵感と、最後の最後でいただいた鋭い質問にうまく答えられなかった悔しさもあったんだろうと思います。

学会でのポスター発表の様子
学会でのポスター発表の様子

裁縫好きの中学生が
サイエンスに目覚めるまで

—— ここからは、木村さんのこれまでの学生生活と今後についても伺えればと思います。進学先に日本女子大学の被服学科を選ばれた理由はなんだったのでしょうか?

進路を決めるきっかけのなったのは、中学生のときに授業で作った刺繡入りティッシュケースが市のコンクールで表彰されたことです。それがとても嬉しくて、高校は家政科に進みました。高校ではファッションや食のカリキュラムが充実しており、とくに私はファッションの授業に力を入れていました。高校の同級生はファッションの専門学校や調理師学校などに進む子も多かったのですが、私は「技術を極めるだけでなく、知識や考え方、それらを体系的に組み立てるロジックまで深く学びたい」と思い4年制大学を目指し、幅広く被服について学べるという理由で日本女子大学の被服学科を選びました。じつは小学校5年生のときに姉と一緒にオープンキャンパスに参加しており「良い学校だな」と感じた記憶が心に残っていたのも決め手になりました。

—— 実際に被服学科に進学されていかがでしたか?

一番感じるのは、先生方が本当に親身になってくださることです。私は1つのことに集中すると周りが見えなくなりがちなのですが、先生方はそんな性格を理解して「大丈夫?」と声をかけてくださいます。同級生もみんな「服が好き」という共通点があるので、お互いのファッションやこだわりを尊重し合える居心地の良い雰囲気があります。

—— もともとは裁縫が好きだったところから、現在は染色加工を科学的に研究されているのですね。

そうなんです。高校時代は化学がとても苦手だったので、自分でも驚いています。被服学科は実験授業も多いのですが、「なぜこうなるんだろう?」と浮かんだ疑問を、レポートにまとめながら解明していく作業が私には向いていたみたいです。ファッションのデザインなどは感覚的で曖昧な部分もありますが、私は「答えがあり、そこに向かって論理的に突き詰めて考える」ことが好きなんだと、大学に入ってから気づきました。

プラズマ処理を行う木村さん
プラズマ処理を行う木村さん

—— 大好きなファッションの分野だからこそ、苦手意識を克服できたのかもしれませんね。最後に今後の目標についても教えてください。

現在取り組んでいる卒業論文では、学会で発表した内容の条件や生地の種類、プラズマ処理に使う種類などを変えながら研究を深めていく予定です。卒業後は大学院の被服学専攻に進学し、引き続き榎本先生のもとで研究を続けます。プラズマ処理の研究はもちろん、先生が取り組まれている「ウルトラファインバブル(細かい空気の粒子が混ざった水)」を染色や洗濯に活かす研究にも挑戦してみたいです。大学院でも「考えを組み立てる力」を磨き、将来は人の役に立つ商品開発などの仕事に携わりたいと思っています。

—— 貴重なお話をありがとうございました!