食物・栄養学専攻修士1年の太田眞唯子さんが「JAPAN PACK 2025」のステージイベントに登壇

2025.10.29

【イベントレポート】包装資材を最適化し食品ロスを減らすことで環境に優しい未来を創る

10月7日(火)から10月10日(金)まで4日間、東京ビックサイトで「JAPAN PACK 2025 ~日本包装産業展~」が開催されました。JAPAN PACKは1964年に初開催された「日本包装機械展」にルーツを持ち、包装産業に関わる最新鋭の製品・技術・サービスが一堂に会するイベントです。その会期中の10月9日(木)に行われたステージイベント「パネルディスカッション『研究成果から見える日本の未来』」に、日本女子大学家政学研究科食物・栄養学専攻修士1年の太田眞唯子(おおたまゆこ)さんが登壇しました。
このイベントには、太田さんのほか、金沢工業大学、星城大学、十文字学園女子大学、愛知県立大学から学生・大学院生が登壇。5名の学生が「人との暮らし」(超高齢化社会・労働力不足・ウェルビーイング)と「地球の未来」(サステナビリティ・地球環境問題)の2つのテーマから、日本の未来に包装業界がどう貢献できるのか、そして包装の魅力や新たな価値について、意見を交わしました。

国内4年制大学唯一の食品包装学研究室に所属
青果物トレイに関する研究成果を発表

イベントの前半では、それぞれの登壇者に対して自身の研究を紹介する時間が設けられ、
国内の4年制大学で唯一の食品包装学研究室である、「食品学・食品包装学研究室」(主宰:北澤裕明准教授)に所属している大学院生として、太田さんは「青果物用トレイの最適化」について発表しました。
現在、日本における青果物の流通で使用されるトレイは、おもに「プラスチックトレイ」と「パルプモールドトレイ」の2種類です。プラスチックトレイは水分を逃がしにくいため、青果物の萎(しお)れを防ぐ機能特性がある一方で、結露が発生しやすいため、カビが生じやすいという課題があります。また、パルプモールドトレイは透湿性が高くカビを防ぎやすい機能特性がある一方、水分が抜けやすく萎れが生じやすいという課題を抱えています。
このような相反する課題を研究の背景として、太田さんは、トレイの「透湿性(蒸気状態の水分を外に逃がす性質)」に着目し、透湿性がトマトの品質にどのような影響を与えるかを研究しました。具体的には、透湿性以外の条件を統一するために「パラフィンを含侵させてプラスチックトレイを模したパルプモールドトレイ」と「一般的なパルプモールドトレイ」を用意し、それぞれに新鮮なトマトを入れ、流通用の段ボール箱に収めて、実際の流通環境に近い温度・湿度条件で一定期間保存し、トマトに起きる変化を観察しました。
その結果、トマトから水分が抜けることで起きる重量減少量については、パルプモールドトレイの方が大きい傾向にありましたが、商品価値の基準である「重量減少5%以下」を満たしており、萎れも見られなかったことから、これらのトレイの間に商品性への影響の違いはありませんでした。また、パルプモールドトレイの方がパラフィン含侵トレイよりもカビの発生量が少なく抑えられました。以上から、パルプモールドトレイは、外観や商品性を損なわずにカビを抑制できることを明らかにしました。
「今後は、カビと水分減少の両方を抑えられる最適なトレイ条件を探り、他の青果物でも検証を進めたいです。包装資材の最適化によって食品ロスを減らすことは、環境に優しい未来をつくる第一歩になると考えています」と太田さんは発表を締めくくりました。

後半のパネルディスカッションでは、「地球の未来」のテーマの中で、司会者から「一般消費者の手に渡る前に廃棄される食品は結構あるのか?」という質問が投げかけられました。それに対し太田さんは「農産物に限りますと、国内流通における青果物の減耗量はおおよそ3割弱*です。食料自給率の低い日本においてこの数値は高く、解決すべき課題です。ただ、皆さんが“環境に優しい包装”としてイメージする『紙の包装』にすべて移行しようというのは極端です。包装材料にもそれぞれ向き不向きがあり、環境問題を考えるうえでは、まずは食品の特性をよく理解し、それに合った適切な包装を選ぶことが重要であると考えます」との見解を示しました。

*農林水産省の食料需給表より推算される野菜および果実の減耗率(10~11%および16~17%)の合計。

ステージイベントの終了後
太田さんにお話を伺いました

—— ステージイベントを終えられていかがでしたか?

昨年、東京国際包装展「TOKYO PACK 2024」のセミナーセッションにも参加させていただきましたが、その時はとても緊張してしまいました。今回は大学院に進学して研究を進めていることもあり、自信を持って落ち着いて話すことができて良かったです。

—— 今回のイベントでは「研究発表コーナー」にも参加されていましたが、来場者の反応はいかがでしたか?

多くの方に興味を持っていただき、研究内容について詳しく質問してくださる方もいらっしゃいました。国内4年制大学で唯一の食品包装学研究室に所属していることにも関心を寄せていただいたように感じます。

—— 最後に今後の抱負を教えてください。

将来的には、青果物の品質をより保持・延長できるトレイを開発していきたいです。
現在は既存のトレイを比較する段階ですが、一歩ずつ研究を進め、成果を積み重ねていきたいと考えています。