「学問が、交差する。」2025年度日本女子大学 卒業論文/卒業研究/卒業制作 合同発表会を開催
2026.04.06
開催の背景
日本女子大学では、全学科において卒業論文(卒業研究・卒業制作)の作成が必修で、少人数教育のもとで培ってきた専門的な学びの集大成として、学生一人ひとりが自ら課題を設定し、その成果を発表します。卒業論文は4年間の学修の総仕上げとして取り組まれるものであり、専門分野への理解を深めるだけでなく、自ら問いをたて、主体的に考え、分析し、表現する力を養う重要な教育機会となっています。
2026年2月6日から10日にかけて各学科で卒業論文発表会が開催され、学生たちはそれぞれの研究成果を披露しました。そして2月28日(土)、学長企画として、7学科から推薦された学生による卒業論文合同発表会が行われました。本発表会は、本学の特色である幅広い学問領域を背景に、人文・社会科学・自然科学・生活科学と、多様な分野の研究が一堂に会する文理融合の場となりました。専門分野の枠を越えて研究成果を共有することで、学生たちは異なる視点や方法論に触れ、学問の広がりと新たな気づきを得る貴重な機会となりました。
開催概要
名称:2025年度日本女子大学 卒業論文/卒業研究/卒業制作 合同発表会
「学問が、交差する。 -文理融合・学科横断の知の発表-」
場所:目白キャンパス 青蘭館
対象:本学教職員、学生
発表者:7学科12名
▼発表順
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家政学部 住居学科(※)
貴戸 天音さん(指導教員:江尻憲泰教授)
都市における版築構法の再評価と建築的応用
—石灰と藁が版築の性能に与える影響— -
理学部 化学生命科学科
田中 菜々美さん(指導教員:菅野靖史教授)
土壁の強度形成に寄与する微生物の同定と機能解析 -
家政学部 住居学科(※)
Mさん(指導教員:佐藤克志教授)
美術館展示空間における休憩スペースと鑑賞者の疲労感に関する研究 -
人間社会学部 社会福祉学科
手塚 穂乃華さん(指導教員:岩永理恵教授)
放課後等デイサービスのサービスの質の低下とはどのような問題か -
人間社会学部 社会福祉学科
Iさん(指導教員:岩永理恵教授)
児童養護施設退所者の実態と支援の検討 -
人間社会学部 心理学科(※)
鈴木 佳奈さん(指導教員:塩﨑尚美教授)
子どものイヤイヤ行動の捉え方に女子大学生の被養育経験とメンタライジング機能が及ぼす影響 -
人間社会学部 心理学科(※)
Kさん(指導教員:藤崎和香教授)
音痴はどこから音痴と判断されるのか -
文学部 史学科(※)
Sさん(指導教員:吉村雅美准教授)
十九世紀における山岳参詣者像
—相模大山を中心に— -
理学部 数物情報科学科
秋保 和香さん(指導教員:秋本晃一教授)
GaN結晶評価のためのX線トポグラフィと半値幅解析 -
理学部 数物情報科学科
Yさん(指導教員:清水謙多郎教授)
リアル/フェイク画像の識別手法に関する研究 -
理学部 化学生命科学科
伊原 知美さん(指導教員:阿部秀樹教授)
カルカソンAおよびBの合成研究 -
家政学部 児童学科(※)
石原 舞さん(指導教員:川端有子教授)
『指輪物語』における自発的隷従の構造
学問が交差する質疑応答と講評
生成AIが専門分野の一つである、理学部数物情報科学科 長谷川治久教授は、メンタライジング機能について発表した心理学科 鈴木さんに対して質問をしました。
AIを用いたメンタリング研究の現状と、反抗的な学習者に対してAIが適切に関与できないという課題を紹介し、メンタライジングの視点から、学習者の心の状態を踏まえた効果的な支援のあり方について聞きました。鈴木さんは、自身の保育現場での経験を踏まえ、反抗的な子どもに対しては無理に向き合おうとするのではなく、歌を歌ったり別の話題に導いたりするなど、一度注意や関心を別の方向に向けることが有効なのではないかと、自身の考えを話しました。
各発表はいずれも長期間にわたる研究の成果として、専門外の立場からも研究の構造や意義が理解できる完成度の高い内容であった。また、建築学や化学生命科学における建築材料の研究のように、異なる分野でありながら共通の対象を工学的・科学的視点から探究する例や、歴史学研究における資料の収集・検証・比較の過程が理系の研究手法と共通する点など、文系・理系を越えて共通する方法論や問題意識が存在することが分かった。
さらに、多様な人々のニーズや感覚、認識の仕組みを理解し、社会の中でどのように応えていくかという視点が多くの研究に通底しており、それぞれの専門分野から現代社会の課題に向き合う姿勢が示されていた。
今回の合同発表会は、学科の枠を越えて研究成果を共有することで、学問に共通する探究の本質とその広がりを実感する機会となり、本学における文理融合・学際的な学びの意義を改めて示す場となった。
学生たちの研究は専門性が高く、調査や実験などに主体的に取り組んだ成果として大変完成度が高いものであった。また、先行研究を踏まえながら現代社会との関わりの中で課題を設定し、学問が社会と深く結びついていることを示す発表であった。
異なる分野の研究が交差し互いに刺激を与え合うことで、学問のつながりと広がりが実感できる発表会であった。数物情報科学科の長谷川先生から、心理学科の鈴木さんに質問されたのも学科の専門性が交差していて興味深いやり取りであった。AIが進展する時代において人間にしかできないことを探究する意義や、大学生の研究が社会と深く結びついている点が重要だと感じた。
多様な分野にわたる研究はいずれも身近な社会とのつながりを感じさせる内容であり、本学において幅広い研究が展開されていることを改めて実感した。また、学生たちには本学での経験を糧に、それぞれの次のステージでも活躍してほしい。
発表学生のコメント
初めて他学科の方々に自分の研究発表をするため、「ガリウムナイトライド(GaN)」という専門的な内容を文系の方にも伝わるような言い回しで発表することを工夫しました。文系の方の発表は初めて聞く内容で興味深かったです。特に「音痴はどこから音痴と判断されるのか 」(心理学科 Kさん)という研究は、普段は数値化されないことを数値化した観点から発表されていて、理系の私の視点から見ても興味深い内容でした。
家政学部 児童学科(※) 石原 舞さん
今回題材として取り上げた「指輪物語」を読んだことのない方にも伝わるように、スライドにイラストや図を多く使用しました。
理系の方の発表は私たちと少し異なり、実践的な内容の研究が多いという印象を受けました。中でも生成AIを用いた画像をどのように見分けるかという研究発表(「リアル/フェイク画像の識別手法に関する研究」 数物情報科学科Yさん)は、今の時代に即していて、面白いと感じました。
篠原聡子学長のコメント
この合同発表会は文理融合の学びを学生自身に実感してもらいたいという思いから企画しました。異なる分野の学生が一堂に会し、互いの研究に触れることで、「日本女子大学でこのように多様な学びが行われている」ことを実感してほしいと思います。
また、本学のコンパクトなキャンパスに多様な専門分野の研究が集まっていることは大きな強みであり、皆さんの発表から、この発表会が自分の専門とは異なる分野の人にも研究内容を分かりやすく伝える力を養う貴重な機会になったと実感しています。今後、社会や研究の場でさまざまな分野の人々と関わる中で、こうした経験が活かされていくことに期待しています。
終わりに
発表後には学生と教職員での懇親会を行いました。互いの研究発表をねぎらいつつも興味を持った発表者に質問を投げかけるなど、学びを通じたコミュニケーションが生まれていました。本合同発表会は、分野を越えて学生たちの研究が交差し、新たな気づきと学びを生み出す場となりました。発表を通して、学生たちが4年間の学びの中で培ってきた探究心と専門性、そして社会へとつながる視点が示されました。本学での学びを礎として、それぞれの道へと進む学生たちの今後の活躍が大いに期待されます。
(※)学部再編による学部・学科名変更等の補足(記事中の掲載順)
・家政学部住居学科:現 建築デザイン学部建築デザイン学科
・人間社会学部心理学科:2028年度より人間科学部心理学科(仮称)開設構想中
・文学部史学科:2026年度より歴史文化学科
・家政学部児童学科:2028年度より人間科学部人間発達学科(仮称)開設構想中
