駐日リトアニア大使から学ぶ、リトアニアの魅力

2026.02.03

【イベントレポート】リトアニア カウナス工科大学との大学間協定締結記念講演会

2025年9月に日本女子大学とリトアニアのカウナス工科大学が協定を締結したことから、2026年1月8日(木)、日本女子大学成瀬記念講堂にて、駐日リトアニア共和国特命全権大使であるオーレリウス・ジーカス博士の特別講演会を開催しました。「駐日リトアニア大使から学ぶリトアニアの魅力」と銘打ち、多岐にわたるテーマが扱われ、非常に密度の濃い内容の講演となりました。

大使はリトアニアの歴史、文化、そして現在直面する国際情勢や未来への展望について触れました。
バルト三国の一つであるリトアニアは、日本ではまだ馴染みの薄い国かもしれません。しかし講演を通じて、その歩んできた歴史と、若い国ならではの力強いビジョンが、参加者に鮮明に伝えられました。

(左)貴重な講演には一般参加者も駆けつけた (右)リトアニアを紹介するジーカス大使
(左)貴重な講演には一般参加者も駆けつけた (右)リトアニアを紹介するジーカス大使

人々と自然が調和する、リトアニアという国

リトアニアはバルト海に面するバルト三国(リトアニア、ラトビア、エストニア)の一国です。
豊かな森林や湖に恵まれた自然環境を有し、人々の暮らしと自然が近いことも特徴です。

言語はリトアニア語で、同じバルト三国であってもラトビア語やエストニア語とは異なり、それぞれ独自の言語と文化を持っています。

食文化についての話題では、日本でも身近な例が紹介されました。
実は、ファミリーレストラン「サイゼリヤ」で提供されているエスカルゴは、100%リトアニア産。知らず知らずのうちに、私たちはリトアニアの食文化と接しているようです。

「国には3つの誕生日がある」── リトアニアの歴史

リトアニアの歴史を語るうえで欠かせないのが、「国には3回の誕生日がある」という大使の言葉です。

7月6日:建国記念日(Statehood Day)
 1253年、ミンダウガスが戴冠し、国家として誕生

2月16日:独立記念日
 1918年、帝政ロシアからの独立を宣言

3月11日:独立回復記念日
 1990年、ソビエト連邦からの独立を回復

何度も占領と支配を受ける状況に置かれながらも、そのたびに独立を勝ち取ってきた歴史は、リトアニアの人々の強いアイデンティティを形づくってきました。

杉原千畝による「命のビザ」

第二次世界大戦期、ナチス・ドイツによるポーランド占領を背景に、多くのユダヤ人が迫害を逃れようとリトアニアへ避難しました。
その暗い時代に、一筋の希望となったのが、日本人外交官 杉原千畝(すぎはらちうね)による「命のビザ」の発給でした。

リトアニアのカウナスに日本領事代理として赴任していた杉原は、多くのユダヤ人難民にビザを発給し、命を救いました。この行動は、現在もリトアニアで深く記憶され、両国の友好の象徴となっています。

ウクライナ侵攻と、エネルギー独立への挑戦

講演では、現在の国際情勢についても率直に語られました。 ロシアによるウクライナ侵攻を受け、リトアニアは「次のターゲットになり得る」という強い危機感を抱いています。

その中で、エネルギー大国ロシアとの貿易を完全に廃止する決断がなされました。現在リトアニアでは、エネルギーの独立化を国家目標に掲げ、 再生可能エネルギーを中心に、今後10年でエネルギー自給率100%を目指す取り組みが進められています。

独立から35年──「資源がない国」の成長戦略

1990年の独立回復から約35年。
リトアニアは「若い国」でありながら、著しい経済成長を遂げてきました。

その原動力について、大使は次のように語ります。
「リトアニアが成長できたのは、資源がなかったからです。」

天然資源に恵まれないリトアニアが唯一持っていた資源——それは若い人材でした。

優秀な人材の育成こそが国の成長につながると考え、教育システムの改革を進めてきたことが、スタートアップ企業の誕生やIT・ライフサイエンス分野の発展を促し、国の経済成長へと結びつきました。現在ではユニコーン企業も生まれています。

女性の教育と活躍が国の強み

リトアニアのもう一つの大きな特徴が、女性の教育水準の高さと社会での活躍です。

女性が研究、起業、政治などさまざまな分野で活躍しており、それが国全体の競争力を高める重要な要素となっています。

日本女子大学とリトアニアの学術交流へ

講演の最後には、本学とリトアニアのカウナス工科大学との大学間協定についても触れられました。

この協定により、本学学生にとって留学の選択肢がさらに広がり、ヨーロッパで学ぶ新たな道が開かれています。

過去の経験を礎に、未来を切り拓くリトアニアとの交流は、学生一人ひとりが世界を多角的に捉える貴重な学びの機会となることでしょう。

(左)講演後、花束を受け取るジーカス大使 (右)左から、田中有美国際交流委員長、宮崎あかね国際交流センター長、ジーカス大使、篠原聡子学長
(左)講演後、花束を受け取るジーカス大使 (右)左から、田中有美国際交流委員長、宮崎あかね国際交流センター長、ジーカス大使、篠原聡子学長
(左)サインに応じるジーカス大使 (右)プレゼント交換をするジーカス大使と篠原学長
(左)サインに応じるジーカス大使 (右)プレゼント交換をするジーカス大使と篠原学長
プロフィール
オーレリウス・ジーカス博士

駐日リトアニア共和国特命全権大使

1978 年、リトアニア共和国カウナス市生まれ。ヴィータウタス・マグヌス大学で美術史(学士)、コミュニケーション学(修士)、政治学(博士)を学び、後に同大学アジア研究センター長、政治・外交学部准教授を歴任。博士号取得のテーマはパブリック・ディプロマシー。文部科学省国費外国人留学生として金沢大学と早稲田大学に留学し、国際交流基金でのインターンシップも修了。2022年5月より現職。

■カウナス工科大学について

カウナス工科大学は、1922 年に創立されたリトアニア大学の工学部を起源とする、リトアニアを代表する工科大学です。バルト三国最大の理工系高等教育機関として知られ、特に工学、情報科学、テクノロジー、応用化学などの分野で国際的にも高く評価されています。また、欧州各国を中心とする多数の大学と交流実績があり、欧州研究プロジェクトへの参加や国際連携教育にも積極的に取り組んでいます。

参考リンク