海外で働くOGの講演会を開催 – 清水建設株式会社勤務 魚谷理奈さん(2018年住居学科卒業)

2024.05.24

2024年2月16日、キャリア支援課および国際交流課の共催による、海外での勤務経験持つ本学卒業生が在学生向けに話す講演会「海外で働くOGに聞く」をオンラインで開催しました。講師の魚谷理奈さんは大学生活や就職してからのこれまでの経歴はもちろん、在学生に教訓となるような就活での失敗談なども率直にお話しくださいました。年の近い卒業生によるリアリティのある内容で、参加者全員がとても関心を持って聞いていました。

講師のご紹介

プロフィール
魚谷理奈さん

2018年 家政学部住居学科建築デザイン専攻(※) 卒業
卒業後、建築施工(現場監督)として清水建設株式会社に入社。グローバル事業本部 国際支店に異動し、上海勤務後、現在はホーチミン(ベトナム)に駐在し、ハノイ営業所にて勤務中。

講演会の内容

1.会社概要
2.自己紹介
3.海外での仕事について
4.大学生の時の過ごし方
5.就活の時のエピソード
6.海外で働くうえで大切にしていること
7.質疑応答

想定外だった初めての海外転勤「実は希望はしてはいなかった」

清水建設株式会社(以下 清水建設)は入社4年目に1回目の人事異動があるシステムで、当時千葉支店で勤務していた魚谷さんにその時期が迫ったころ、人事より希望の聞き取りがありました。シンガポールで生まれ、1歳で帰国するも学生の時に海外研修や卒業旅行でたびたび海外を訪れたことのある魚谷さんは「海外で働くこと、生活することに抵抗“は”ない」とだけ伝え、多分どこか国内の地方支店に異動だろうと予想していたと言います。それがまさかの国際支店への転勤となり、驚きつつも海外で働くチャンスが突如訪れました。

日本と海外の働く環境の違い

魚谷さんは初めての海外転勤で中国・上海営業所に異動しました。清水建設では、魚谷さんの職種の場合、日本の現場での立ち位置と海外の現場での立ち位置はガラッと変わるそうです。日本の現場では自分が一係員となって働いていたのに対し、海外の現場では、その土地のローカルスタッフがいるため、彼らに指示を出す主任的な立ち位置になったそうです。その後、ベトナム・ハノイ営業所に異動してからは、図面のチェックや半年先に始まる工事の計画を立てる業務なども担当しているそうです。

また、海外で働く難しさとして、国によって国民性や働く姿勢などパーソナリティやバックボーン、考え方の違いからぶつかったり、理解に時間がかかる時もあり、「清水建設としてはこうやるべきだよ」と伝えたりするなど、スタッフへの指示の仕方やコミュニケーションが難しく感じる時期もあったと話しました。

ベトナムでの建設現場で働く様子。写真右は右が魚谷さん。
ベトナムでの建設現場で働く様子。写真右は右が魚谷さん。

部活と課題に明け暮れた大学生活

高校時代ラクロス部だった魚谷さんは、大学に入学してもラクロス部に入りました。部活中心の生活を送っていたため、朝練によって早起きの習慣が身についたことは、結果として今の現場監督の仕事でも役に立っていると言います。
高校時点では明確な進路や目標を持てていないなか、女子大学への憧れや、「建築系」「医療系(看護系)」「幼児教育系」に興味があったそうです。合格した大学の中から、「将来的な“建築”に関わる仕事が豊富にあること」「デザインを学んでみたい」「オープンキャンパスで知った住居学科の学びの雰囲気」が決め手となり、本学の住居学科を選んだという魚谷さん。いざ入学してみると、センスの塊のような同級生たちを目の当たりにし、1年次に「自分には意匠設計は向いていないと気づいたんです」と笑いながらも、住居学科の学びは面白かったと振り返りました。
課題は友達との連携プレーで乗り切ることもあれば、それでも徹夜してしまうこともあったそうです。そのような経験は、体力的にもメンタル的にもタフさが身につき、今でも「あれを乗り越えたからこれも乗り越えられる」と仕事が辛い時の支えになっているそうです。

力を注いだラクロス部の活動(左)と住居学科での課題制作(右)
力を注いだラクロス部の活動(左)と住居学科での課題制作(右)

現場見学が将来へのターニングポイントに。「現場監督」という職業との出会い

住居学科3年で履修する「建築施工」という授業で清水建設の建設現場に行ったことがきっかけで現場監督を目指すことになったと魚谷さん。もともとお父様が土木関連のお仕事をされていた影響で建築に興味があり、設計の方に目を向けていたところ、この現場見学で、設計よりも現場での仕事の方が性に合っていることに気づいたそうです。現場見学で感じた「目の前で建物が建っていくおもしろさ」「ものづくりの奥深さ」を、仕事を通してさらに追求してみたいと思うようになったこの経験が、魚谷さんの将来を左右する大きなターニングポイントになったと話しました。
「構造材料実験」の授業中の様子(奥が魚谷さん)
「構造材料実験」の授業中の様子(奥が魚谷さん)

海外では英語力以上に、コミュニケーションスキルが大切

実際に海外で働いてみて、英語力よりもコミュニケーションスキルの方が大切だと感じると魚谷さんは話します。海外で求められる資質・能力は国内とほとんど同じで、国内でできていないことが海外でできるわけはないと強調しました。魚谷さんの経験として、英語力は必要なもののそれはコミュニケーションの一つの手段に過ぎず、それだけは仕事にならない。「人間力×仕事力(技術力)」が大事で、どんな人に対してもリスペクトを持って接することが大切だと思うと話しました。

魚谷さんの周りでは、日本人・外国人問わずどんな人からも慕われ、信頼されている人や、明るくバイタリティのある人、思いやりがあり対等で公平に接する人、意思疎通のために相手のことを一生懸命知ろうとする人が海外でも活躍しているそうです。

「海外で働くことは思うほどハードルは高くない!」学生へのメッセージ

最後に学生へのメッセージをいただきました。社会人になる前の自由な時間を利用していろいろな経験をして有意義な時間を過ごしてほしい、そして「これだけは頑張った!」と胸を張って言える経験を積んで欲しい、海外に行った経験のない方は近隣国でもいいので学生時代に行っておくことがおすすめだそうです。

また英語については、できることに越したことはないが中学英語でほとんど何とかなる、業種にはよるものの海外で働くことは想像するよりハードルは高くないというポジティブなメッセージをいただきました。

加えて、魚谷さん自身の「キャリアについての考え方」を紹介してくださいました。キャリアの考え方は人それぞれで、キャリアの積み方に良し悪しはないと魚谷さん。明確にプランが有る無しに関わらず、結局自分がどこで納得するかが重要だと話します。ただし、チャンスが訪れた時にそれを掴めるよう、会社の制度を知っておくことや、普段の仕事を頑張っておくことは大事だと思うと付け加えました。

「男性が多い職場は慣れるもの?」「日本が恋しくなることは?」など学生からの質問コーナー

Q 男性が多い職場はどのように慣れましたか?

建設業は男性がとても多い業界です。職人と呼ばれる手を動かしてくれる方はほとんど男性ですが、私のように女性の現場監督がいるケースは日本ではすごく増えています。今は現場に1〜2名は女性がいる時代なので、女性ならではの悩みなど打ち明けやすい環境になってきたように思います。

Q 日本が恋しくなることはありますか?

上海に渡った時はロックダウン中で、ホテルにこもっていたので、本当に寂しかったです。今は海外で新しい友達もできて、海外の生活には慣れてきました。日本に帰って友達に会いたい気持ちもありますが、それを超える海外の楽しさを見つけた気がします。駐在員など日本人だけのコミュニティが現地にはあるので、そのようなところで新しく日本人の友達をつくることもできますし、現地の友達をつくることもできます。私は今、海外でも楽しく過ごすということにフォーカスを置いて過ごしています。

Q どうやって自分に合う仕事を見つけましたか?

先ほどお話ししたように、私は大学での授業の中の現場見学を通して、自分に合う職種を見つけました。そこで働く自分を想像できたことが大きかったです。企業に関しては、説明会に行ってその企業が大事にしていることを知るようにしました。やりたいことや業種が絞れないという時には、まず会社説明会に行って知らなかった企業のことを知ってみることが大事だと思います。

Q 今後のご自身のキャリアプランなども含めて、最後にメッセージをお願いします。

私は大きな目標というのは実はあまりないんです。今は目の前の仕事を一生懸命頑張ることに集中しています。明確な目標があるのはとても良いことだと思いますが、無いからといって自分を責める必要もないと思っています。一つ一つ目の前の仕事を頑張った先にまた新しく自分の挑戦があると信じています。あまり自分にプレッシャーをかけずのびのび取り組んでみてください。海外は、結構日本よりのびのびできる環境だと思います。海外で働くことを目指している方もあまりハードルを感じることなく、挑戦していって欲しいと思います。

海外で働くことに興味を持つ在学生が多く参加した今回の講演。魚谷さんの実情と経験に基づいたプレゼンテーションで学びや気づきにつながった学生も多いはずです。各自が今後の就職活動や企業研究にいかしていくことを期待しています。

(※)家政学部住居学科は、2024年度から建築デザイン学部建築デザイン学科となっています。