3D都市モデル「PLATEAU」とAIを活用し、地域課題の解決策を形に
2026.10.28
8月24日(月)から26日(水)までの3日間、日本女子大学で「Project PLATEAU ブートキャンプ for Women's University Students 2026 ~女子大学生が拓くまちづくりのデジタルトランスフォーメーション~」を開催しました。
今回で4回目となる本イベントは、女子大学生 ICT 駆動ソーシャルイノベーションコンソーシアム(WUSIC)と日本女子大学が主催・共催し、国土交通省、角川アスキー総合研究所、文京区、宇和島市、日本女子大学理学部の協力のもと実施されたものです。本学からは理学部数物情報科学科(※)の学生30名と食科学部食物学科の学生1名、大妻女子大学から1名の合計32名が参加しました。
学生たちが活用した「PLATEAU(プラトー)」は、国土交通省がさまざまなプレイヤーと連携して推進する、3D都市モデルの整備・活用・オープンデータ化プロジェクトです。都市計画や防災、観光、エンターテインメントなど幅広い分野での活用が進められています。
「アイデアを考える」から「形にする」ハッカソンへ
PLATEAUブートキャンプでは、これまで学生がチームで地域課題について考え、解決につながるアイデアを提案する「アイデアソン」を行ってきました。今年度はそこから一歩進み、アイデアをアプリやサービスとして実際に形にするところまでを目指す「ハッカソン」形式に進化。「日常生活を豊かにするもの」「防災」「観光・地域活性化」「エンタメ/SNS」などを切り口に、3D都市モデルを活用したサービスの企画・開発に挑戦しました。
初日は、国土交通省や自治体、企業の専門家による講義からスタートしました。国土交通省の宮崎優氏によるPLATEAUの紹介をはじめ、文京区の前田直哉氏、宇和島市の谷岡賢氏らから、都市が抱える課題や3D都市モデルの活用について学びました。
さらに、株式会社Eukaryaの山本義孝氏、株式会社シナスタジアの古沢文吾氏によるレクチャーを通して、3D都市モデルを扱うためのツールやアプリ開発について学習。最初に専門家から知識や技術を「インプット」し、その内容を翌日からの開発で「アウトプット」する、実践的なプログラムとなりました。
チームで考え、試し、改善する3日間
2日目からは本格的なハッカソンが始まりました。
学生たちは興味のある課題やアイデアを持ち寄ってチームをつくり、課題の設定、サービスの企画、開発、プレゼンテーションまでを分担しながら進めていきました。エンジニア・タレントの池澤あやか氏がファシリテーターを務め、株式会社ミックウェアナビゲーションズの高橋皐月氏らがメンターとして学生をサポート。国土交通省の宮崎氏、文京区の橋野浩親氏、Eukarya山本氏、シナスタジア古沢氏、さらに各企業から応援メンバーが加わり、貴重なアドバイスを受けながら進められました。途中には中間発表も設けられ、専門家から受けたアドバイスをもとに、各チームがアイデアや機能を磨いていきました。
限られた時間の中、チーム内で意見を交わし、役割を決め、試作と修正を繰り返します。自分一人の知識や発想だけではなく、メンバーそれぞれの視点を組み合わせて一つの成果物へとまとめていく過程も、このプログラムの大きな特徴です。
3日目の最終発表では、各チームが3日間のインプットや議論、開発の成果をプレゼンテーションしました。課題の設定からアイデアの具体化、3D都市モデルやAIの活用、さらにユーザーにとってどのような価値があるのかという視点まで、それぞれのチームが試行錯誤した過程も含めて発表。実際に制作したアプリやサービスのデモンストレーションも行われ、アイデアがどのように形になったのかを紹介しました。審査員との質疑では、実現可能性やユーザー視点、サービスとしての発展性などについて講評が寄せられ、3日間の成果をたたえる表彰式でプログラムを締めくくりました。
なかでも最優秀賞を受賞したチーム「T-KHON」の「家庭菜園シミュレーション 空畑 -ソラハタ-」は、3D都市モデルを用いて日照などの環境をシミュレーションし、それぞれの住環境に合った家庭菜園を支援するアイデアです。都市の緑化という課題と日常生活を結び付けた発想に加え、気象情報やAIによる栽培アドバイスなどを盛り込んだ完成度の高さや、今後の発展性が評価されました。
優秀賞には、利用者の情報や希望に合わせてAIがデートプランやルートを提案する、チーム「MARRS」の「たくしマッチング」が選ばれました。審査員特別賞には、チーム「安全第一」の「自転車を取り巻く、道路の危険」と、撮影スポットやカメラの向きを3D都市モデル上で確認し、お手本となる写真と同じ構図での撮影を楽しめる「ぴたとこ」を提案したチーム「ネイチャーゆたかズ」が選ばれました。また、参加者による投票で決定するオーディエンス賞も「T-KHON」の「家庭菜園シミュレーション 空畑 -ソラハタ-」が受賞しました。
AIを「使う」だけでなく、目的に合わせて選ぶ
今回、もう一つの特徴となったのがAIの活用です。成果発表では、すべてのチームが「使用したAI」を提示し、「何を実現するために、どのAIを使ったのか」まで説明しました。例えば「空畑 -ソラハタ-」では、開発支援にGeminiやClaudeなどを活用。ほかのチームでも、アイデアの検討、情報整理、プログラミング、サービスの機能設計など、それぞれの目的に応じてAIを使い分ける姿が見られました。
AIから答えを得ること自体を目的とするのではなく、「実現したいもの」を起点に必要なツールを選び、得られた結果を検討しながら成果物に組み込んでいく。AIを実際に活用しながら、その特性や可能性について学ぶ機会にもなりました。
ITや情報を学ぶことが、社会とつながる
表彰式では、審査員やメンターから学生たちに講評が送られました。
「賞を取ることだけがハッカソンの目的ではなく、チームワークや学科を越えて生まれたつながりも財産」「まちづくりにデジタル技術をどのように還元していくか、今後も関心を持ち続けてほしい」といった言葉のほか、自治体関係者からも、行政の立場だけでは生まれにくい学生ならではのアイデアに刺激を受けたとの声が聞かれました。
WUSIC運営に携わる本学理学部数物情報科学科の長谷川治久教授は3日間を振り返り、「初日にインプットした内容を学生たちが吸収し、開発に生かしており、3日間での成長が非常に大きかった」と総括。アイデアを出しては見直し、議論を重ねながら磨いていく学生たちの姿にも触れました。受賞した学生からも、メンターからのアドバイスや仲間の支えによって課題を乗り越え、成果物を形にすることができたという声が聞かれました。
今回のブートキャンプは、3D都市モデルやAIといった新しい技術を学ぶだけでなく、社会や地域の課題を自ら見つけ、仲間や専門家と意見を交わしながら解決策を形にする実践の場となりました。デジタル技術や情報を活用する力を養うとともに、分野を横断して課題を捉え、試行錯誤しながら答えを導くSTEAM型の学びを経験。さらに、他者と協働する力や課題解決力を育み、将来のキャリアにもつながる機会となりました。
日本女子大学では今後も、学生が学んだ知識を社会の課題と結び付け、実践を通して新たな可能性を切り拓く機会を提供していきます。
受賞結果と本イベントを支えた登壇者・審査員・メンター、運営スタッフは以下の通りです。
受賞結果
· 最優秀賞
チーム T-KHON 「家庭菜園シミュレーション 空畑 -ソラハタ-」
· 優秀賞
チーム MARRS 「たくしマッチング」
· 審査員特別賞
チーム 安全第一 「自転車を取り巻く、道路の危険」
· 審査員特別賞
チーム ネイチャーゆたかズ 「ぴたとこ」
· オーディエンス賞
チーム T-KHON 「家庭菜園シミュレーション 空畑 -ソラハタ-」
登壇者・審査員・メンター
· 講師・審査員
国土交通省 宮崎 優氏
· 講師
株式会社シナスタジア 古沢 文吾氏
株式会社Eukarya 山本 義孝氏
· 講師
文京区 都市計画部 都市計画課長 前田 直哉氏
文京区 都市計画部 都市計画課 都市計画担当主査 橋野 浩親氏
宇和島市 建設部 都市整備課 都市計画係 主任 谷岡 賢氏
· ファシリテーター
池澤 あやか氏
· 審査員
株式会社チェンジホールディングス 田中 芙優氏
· メンター・審査員
株式会社ミックウェアナビゲーションズ 高橋 皐月氏(Kula Takahashi氏)
司会・運営スタッフ
· 角川アスキー総合研究所
松原 ルマ氏
田中 慈音氏
· 日本女子大学 理学部 数物情報科学科
4年 野村 実花
3年 西村 千紘
2年 水村 実稀、緑川 凜香、松崎 郁実、前澤 梨音、森久保 聖
