今より深く、サイエンスに触れる夏!「理学部サマースクール2026」で体験した、知的好奇心が刺激される3日間

2026.09.15

【イベントレポート】理学部サマースクール2026

もし、大学の本物の実験室で、研究者が使う装置を自分の手で操作できるとしたら……?そんなワクワクするような理学の世界への扉を開く、高校生を対象とした「理学部サマースクール」が、本学で開催されました。今年で22年目を迎えるこのイベントは、2004年のスタート以来、累計1,300名以上の高校生に科学の本当の面白さを届けてきました。今年は「今より深く、サイエンスに触れる夏」をテーマに、8月5日(水)から7日(金)までの3日間にわたって開催されました。
今回は、全6講座の中から、対面で行われた3つの講座をピックアップし、教科書のページをめくるだけでは経験できない、知的好奇心が刺激される講座のレポートをお届けします。

1人1台の高性能顕微鏡!?教科書の図が目の前で動き出すミクロの世界を探究!

「えっ、このすごい顕微鏡を、本当に自分専用で使っていいんですか?」
そんな驚きから始まったのが、化学生命科学科の永田典子先生による講座「高性能顕微鏡を使って細胞の中を探検しよう」です。大学の生体機能実験室に入ると、そこには研究者が実際に使用するレベルの顕微鏡がズラリと並びます。本学ではこの高性能顕微鏡を、学生実習用として40台備えています。今回は、1人1台の顕微鏡を独占し、文字通り「研究者の卵」になってミクロの世界を探究しました。

1人1台の高性能顕微鏡で、細胞のミクロな世界を探索
1人1台の高性能顕微鏡で、細胞のミクロな世界を探索

体細胞分裂の「立体感」と、活発に動き回るミトコンドリア!

最初に体験したのは「微分干渉観察法」を使ったタマネギの根の観察です。透明な生物試料でも、コントラストと立体感のある観察像を得られる手法です。学校の授業では、図を描くのが大変だな……と思われがちな体細胞分裂ですが、実際にプレパラートをセットし、顕微鏡を操作することでモニターに映し出されたリアルな染色体の姿を見ると、教科書の図表で見た通りのことが、今まさに目の前の細胞で行われています。

自分の操作している顕微鏡の画像が各自のモニターに
自分の操作している顕微鏡の画像が各自のモニターに

続いて行われた「蛍光顕微鏡法」の観察では、ノーベル賞でも話題になったオワンクラゲの蛍光タンパク質(GFP)の遺伝子導入技術を使い、植物の根の中で緑色に光るミトコンドリアを追跡します。ミトコンドリアを潰さないようにふわりとカバーガラスをかぶせ、顕微鏡にセットし微調整をすると、暗闇の中に浮かび上がったのは、流れるように動く緑の光の粒です。「ミトコンドリアって、こんなに元気に動いているんだ!」「なんだか、かわいい!」との感想が寄せられました。

カバーガラスを上手にかぶせないと動きが観察できないことも
カバーガラスを上手にかぶせないと動きが観察できないことも

ナノの世界で出会った「昆虫の美しい構造美」

後半は、地下の電子顕微鏡室へ移動し、「走査電子顕微鏡(SEM)」を使った観察です。電子線をあててナノメートル(100万分の1ミリ)レベルの極小構造を見るこの装置では、白金パラジウムでコーティングされたマルハナバチやシジミチョウの標本を拡大観察しました。

画面に映し出されたのは、想像を超える精密な世界でした。マルハナバチの複眼のすき間には毛が生えており、花粉が引っかかっている様子がはっきりと見えます。さらに、シジミチョウの翅(ハネ)を拡大すると、縦と横の線がまるでハシゴのように規則正しく並んでいることがわかりました。この美しい構造は、風をスムーズに流したり水をはじいたりするためのものと考えられています。チョウの翅の構造は、現代の最先端建築や最新素材の技術(バイオミミクリー)にも応用されているのだそうです。ただ美しいだけでなく、機能と理由が詰まった自然の造形美に、高校生たちの目も自然と輝いていました。

電子顕微鏡で撮影した画像には見たことのない世界が広がる
電子顕微鏡で撮影した画像には見たことのない世界が広がる
シジミチョウの翅を拡大した画像
シジミチョウの翅を拡大した画像
自分で撮影した顕微鏡画像のデータが入ったUSBメモリをプレゼント
自分で撮影した顕微鏡画像のデータが入ったUSBメモリをプレゼント

毎日塗る「日焼け止め」の科学!自分の肌細胞を観察してUVバリアの秘密に迫る

化学生命科学科の市川さおり先生が担当した講座「皮膚と紫外線」では、身近なスキンケアや日焼け対策を、本格的な「皮膚科学」の視点から解き明かしていきました。白衣やエプロンを身にまとい、まるで化粧品会社の研究員のような真剣な表情で実験に臨みます。

自分の肌から細胞を採取!「角層」のミクロ観察と日焼け止め化粧品の測定

実験は、自分の皮膚表面にある「角層細胞」を「テープストリッピング法」で採取し、顕微鏡観察することからスタートします。また、紫外線を吸収して熱などに変える「紫外線吸収」と、紫外線を鏡のように跳ね返す「紫外線散乱」の2つのメカニズムを学習しました。さらに、特殊な「分光光度計」という装置を使って、市販の日焼け止め化粧品がどれくらい紫外線を遮蔽(しゃへい)できているか測定し、SPF/PA 値との関係を確かめました。普段から使っている日焼け止めが、高度な科学の力によって肌を守ってくれていると知り、日常の疑問が実験によって「納得」へと変わる実体験の時間となりました。

日焼け防止化粧品のSPF/PA 値評価システム
日焼け防止化粧品のSPF/PA 値評価システム

スマートフォンの画面はどうして指に反応する?銅テープ実験や最新UI研究

私たちが毎日何時間も触れているスマートフォンですが、その「使いやすさ」の裏側には、人間とコンピュータをつなぐ技術「ユーザインタフェース(UI)」の目覚ましい進化があります。数物情報科学科の加藤邦拓先生による講座「スマートフォンの使いやすさを支えるユーザインタフェースの秘密」では、身近なスマートフォンの仕組みから最先端の情報科学までを解き明かしていきました。

加藤先生の講座は対面とオンラインのハイブリッドで行われた
加藤先生の講座は対面とオンラインのハイブリッドで行われた

タッチスクリーンの歴史と「銅テープ」を使った実験!

タッチスクリーンの歴史は古く、1965年代半ばまで遡ります。1965年には、CRTディスプレイの表面へ静電容量センサーを取り付けたものが発表され、航空管制への利用を想定した研究が進められていました。その後も、赤外線を使って指の位置を検出する技術など、様々なタッチ技術が開発されてきました。さらに、複数の指を同時に認識するマルチタッチ技術も発展し、現在のスマートフォンなどで広く利用されるようになりました。

現在のスマートフォンの画面には透明な電極が網の目のように並んでおり、指が近づいたときの「静電容量の変化」を感知してタッチされた位置を特定しています。その仕組みを体感するため、講座ではちょっと不思議な実験が行われました。スマートフォンの画面の上に、導電性の「銅テープ」を貼ってみます。すると画面の液晶部分ではなく、飛び出した銅テープの端を触るだけで、スマートフォンが反応します。参加者はこの実験を通して、普段何気なく使っているタッチスクリーンの仕組みを体感しました。

スマートフォンの画面に銅テープを貼って、センシング技術を体感
スマートフォンの画面に銅テープを貼って、センシング技術を体感

未来の暮らしを変える!手作りコントローラーと光のUI

講座の後半では、加藤先生が進めている研究テーマを体験しました。例えば、光を当てると電気の通りやすさ(抵抗値)が変わる仕組みを利用した「Light Touch Gadget」。さらに、料理中に野菜の適切な切り方を画面がリアルタイムで教えてくれるシステムなど、日常生活に溶け込む新しいインタフェースの開発が進んでいるとのことです。「情報科学=パソコンに向かってプログラミングをするだけ」というイメージがガラリと変わり、人々の暮らしを便利に、楽しくデザインする学問なんだ!という新しい視点を得ることができました。

加藤先生の研究テーマの講義に熱心に耳を傾ける
加藤先生の研究テーマの講義に熱心に耳を傾ける

専門的な内容に最初は緊張していた様子でしたが、先生方や学生スタッフの丁寧で優しいサポートにより、すぐに打ち解けていきました。講座終了後も、先生や先輩たちに質問をする高校生たちの列がなかなか途切れない様子もありました。

参加した高校生から寄せられた感想
「教科書で見ていた細胞を自分の目で見ることができ、感動しました!」
「最初は緊張していたけれど雰囲気がとてもよくて、気軽に質問できました。普段は触れないような機器を触れて世界が広がりました!」
「学校の授業では『図を描くのが面倒だな』と思っていた体細胞分裂が、実際にその通りに行われていると知ってすごく面白くなりました。」