まちに息づく「居場所」を見つめて——日本建築学会優秀卒業論文賞を受賞

2026.05.01

【受賞学生インタビュー】建築デザイン研究科 建築デザイン専攻 修士2年 宮﨑はなえさん

建築デザイン研究科建築デザイン専攻修士2年次の宮﨑はなえ(みやざきはなえ)さんが、第36回日本建築学会優秀卒業論文賞を受賞しました。受賞論文題目は「杉並区におけるネパール人中高生を中心とした居場所の認識とコミュニティの実態 —エベレストインターナショナルスクールジャパンの生徒を対象として—」です。外国にルーツをもつ子どもたちの「居場所」に着目し、地域社会の実態を丁寧に描き出した本研究について、研究の背景や大学院での学び、今後の展望を伺いました。

受賞論文について——地域の子どもたちに寄り添う視点から始まった調査

幼い頃から親しんできた地元・杉並区を歩いていると、近年、外国にルーツをもつ子どもの姿をよく見かけるようになりました。どのような経緯でこのまちに暮らし、日々を過ごしているのだろうという疑問が、研究の出発点になりました。
まず、杉並区で暮らす外国にルーツをもつ子どもたちが、日常的にどのような「居場所」を持っているのかを明らかにするため、アンケート調査を実施しました。調査にご協力いただいたのは、杉並区内のネパール人学校・エベレストインターナショナルスクールジャパン荻窪キャンパスです。在籍者約300名のうち238名から回答を得ることができ、家庭の状況、来日時期、保護者の就労、放課後に訪れる場所などを多面的に把握しました。その後は、同校の高学年生を中心にインタビュー調査を重ね、具体的な施設名や利用の仕方まで掘り下げながら、子どもたちが「安心できる場所」を言葉と地図で可視化していきました。
調査から見えてきたのは、年齢や国籍を問わず、「公園」を居場所として挙げる子どもが非常に多いという事実です。公園は単なる遊び場ではなく、「アクセスが良い」「自然がある」といった理由から、日常的な居場所として認識されていました。一方で、塾や児童館を居場所として挙げる子どもはほとんどいませんでした。この結果は、公園以外に居場所の選択肢がない可能性も示しているのではないかと考えています。

留学で得た視点——「少数派」として過ごした時間

私は文部科学省が主導する留学支援制度「トビタテ!留学JAPAN」の15期生として、2023年8月から2024年6月までスウェーデンのウプサラ大学教育学部に留学しました。多国籍の人々が集まるおもちゃ図書館(おもちゃの貸出を行う図書館)でのボランティア活動や、保育施設での調査を通して、異なる文化的背景をもつ人々の暮らしに触れる機会を得ました。また、日本人が少ない環境で、私自身が「外国人居住者」として生活した経験は、日本での調査においても、少数派の声に自然と耳を傾ける姿勢につながっていると感じています。
現在も「トビタテ!留学JAPAN」の同期メンバーとはSNSでつながり、世界各地で活躍する姿から刺激を受けています。日本女子大学附属高等学校在学中にニュージーランドへの短期留学を経験していましたが、スウェーデン留学中にはフィンランド、スペイン、フランス、イギリスなども訪れ、海外への心理的なハードルは大きく下がりました。
「思い立ったら行動に移す」そのスピード感は、これからも大切にしたいです。

留学から帰国後に着手した研究論文が、日本建築学会にて受賞

私は学部4年次の夏、留学から帰国してから本格的に卒業論文に取り組み始めました。当時、所属していた井本佐保里(いもとさおり)先生の研究室の中では最も遅いスタートで、「本当に論文を書き上げられるだろうか」という不安もありました。そのような中で、自身の留学経験を生かしてテーマを立てて論文を書き始めました。井本先生からは文章構成や図表の整理、プレゼンテーションに至るまで、きめ細やかなご指導をいただき、無事に完成させることができました。

その後、完成した卒業論文については複数の賞に応募しました。先に結果が発表された賞では受賞できなかったので、日本建築学会では自分の研究がどのように受け止められるのか気になっていました。そのため、受賞の知らせを受けたときは、素直にうれしい気持ちと同時に、研究への責任を強く感じました。

大学院での学びは、世界と地域を行き来しながら

大学院進学後、学びのフィールドはさらに広がりました。2025年度には、研究室およびナイロビ大学の学生と協力し、約12日間にわたりケニア・ナイロビで住宅調査を実施しました。スラムから移住した人々が暮らす住戸を対象に、実測、観察、インタビューを通して、室内環境や生活の実態を丁寧に記録しました。あわせて、スウェーデン留学中に出会ったケニア人の友人とナイロビで再会できたことで、現地での時間がより印象深いものになりました。
国内では、U30復興デザインコンペ2025「re:孤立する都市」に研究室の有志メンバーで参加。福岡県富岡町・双葉町・大熊町を対象にした提案で、2025年11月に一次審査を通過し、12月7日のポスター公開審査に臨みました。最終選考には至らなかったものの、審査員による議論を間近で聞く貴重な機会となり、2026年3月2日には、現地でインタビューを行った住民の方々に向けて成果報告も行いました。
さらに、豊島区では「コミュニティソーシャルワーカー(CSW)」と連携し、都営住宅の入居手続き支援や相談の傾向把握に取り組んでいます。制度と生活の「間」に生じるつまずきを見つけ、つなぎ直す実践です。
これらの国内外での活動は、週5日の授業に出席し、カフェでのアルバイトも行いながら進めてきました。複数のプロジェクトに並行して取り組む大変さはありますが、その分、学びと実践が結びついた充実した日々を送っています。

これからの展望——建物の外側まで含めて「暮らし」を支える人へ

幅広い可能性を視野に入れて就職活動を進めています。
「建築の専門性を軸にしながら、建物そのものだけでなく、その周囲に広がる暮らしや制度、文化まで含めて理解し、支えられる仕事に携わりたいと考えています」
国内外のフィールドでの経験は、住まいを単なる「空間」ではなく、「生き方」と結びついたものとして捉える視点を育んでくれました。今後も、住まい・移動・コミュニティといった生活領域を横断しながら、研究と実践を深めていく予定です。

日本女子大学の魅力とは

私は、日本女子大学附属豊明小学校に入学して以来、現在まで本学で学んできました。
本学の魅力は、先生や職員との距離が近く、相談すると丁寧に向き合ってくださる方が多いことだと思います。留学でも研究でも、やってみたいと伝えると、実現に向けて一緒に考えてくれます。
女子大学であることについては、男女別学がないスウェーデンで驚かれたことが印象に残っています。しかし私にとって女子大学は、のびのびと学び、私生活も大切にできる居心地の良い空間です。良い刺激を与えてくれる友人に恵まれたことも、大きな財産です。