被服学科の先生に聞く!「”着やすさ”の裏側にあるのは人間工学」
2024.06.18
ワールドグループの株式会社アルカスインターナショナルが展開するレディースのファッションブランド「grove(グローブ)」は、株式会社サンリオの大人気キャラクター「ハローキティ」とのコラボレーションアイテムを2024年4月15日に発売しました。
そこで以前からワールドグループのファッション雑貨を人間工学の観点から監修している、被服学科教授の横井孝志(よこい たかし)先生と同学科講師の武本歩未(たけもと あゆみ)先生に「人間工学とはどんなものなのか」「本学被服学科の強み」についてお話を伺いました。
横井孝志先生
人間工学や感性工学の方法を用いて人の姿勢・動作、生理、感覚・知覚、感性などの人間特性を計測し、被服の設計や評価に応用する研究を行っている。
【研究分野】
家政・生活学一般 スポーツ科学 応用健康科学 社会システム工学・安全システム リハビリテーション科学・福祉工学 自然人類学
【研究テーマ・内容】
被服科学 生体力学 人間工学 健康科学 福祉工学 ユニバーサルデザイン 感性工学 人間中心設計
— ワールドグループとの産学連携のきっかけと取り組み内容について教えてください。
もともとは2019年4月からワールドグループのひとつである株式会社Idiom(以下 Idiom社)から、日本女子大学被服学科の人間工学チームに打診をいただき、人間工学の視点を組み込みながらファッション雑貨製品を開発する産学連携共同開発プロジェクトを開始しました。Idiom社は、アパレル、靴、カバンなどの製造を担う会社で、これまでのファッション性重視のものづくりから、廃棄処分を減らすための「売れ残らない商品」づくりを最重要課題に位置づけ、そのための方法を探していたそうです。そこで日本工学会に問い合わせをされた際に、紹介をされたのが私たちのチームだったという経緯です。
開発当初は人間中心の設計プロセスを踏襲した製品開発を提案しましたが、製品の企画や開発の工程を踏まえると現段階ではブランドコンセプト、コスト、納期の制約が厳しく、労力や時間、コストにおいて提案のとおりに進めるのは難しいというIdiom社の判断により、現在は設計や試作品に対する助言、また試作品のテストなど監修という立場で携わっています。
—人間工学とはどんなことでしょうか。また、ファッション雑貨に人間工学はどのように生かされているのでしょうか。
まず、被服とは衣服だけではなく、靴や帽子、バッグなど身に着けるもの全般を指します。被服は、着用する人の体形、動き方などを考慮することが必要で、そのためには人間中心の設計や人間工学が重要です。特に人間工学は、使いやすさや動きやすさ(着やすさ、脱ぎやすさ、扱いやすさなど) 、快適性を追求し、「人にとって安全で使いやすく快適な製品を実現する」ために考慮すべきことです。
本学被服学科名誉教授 大塚美智子先生は体の形態にもとづいた衣服のデザイン設計におけるトップランナーです。 JIS改正原案作成委員でもある大塚先生は、JIS規格(日本産業規格(JIS=Japanese Industrial Standardsの略))における日本人の体形の寸法を更新するべく調査・研究をされています。
もともとは2019年4月からワールドグループのひとつである株式会社Idiom(以下 Idiom社)から、日本女子大学被服学科の人間工学チームに打診をいただき、人間工学の視点を組み込みながらファッション雑貨製品を開発する産学連携共同開発プロジェクトを開始しました。Idiom社は、アパレル、靴、カバンなどの製造を担う会社で、これまでのファッション性重視のものづくりから、廃棄処分を減らすための「売れ残らない商品」づくりを最重要課題に位置づけ、そのための方法を探していたそうです。そこで日本工学会に問い合わせをされた際に、紹介をされたのが私たちのチームだったという経緯です。
開発当初は人間中心の設計プロセスを踏襲した製品開発を提案しましたが、製品の企画や開発の工程を踏まえると現段階ではブランドコンセプト、コスト、納期の制約が厳しく、労力や時間、コストにおいて提案のとおりに進めるのは難しいというIdiom社の判断により、現在は設計や試作品に対する助言、また試作品のテストなど監修という立場で携わっています。
—人間工学とはどんなことでしょうか。また、ファッション雑貨に人間工学はどのように生かされているのでしょうか。
まず、被服とは衣服だけではなく、靴や帽子、バッグなど身に着けるもの全般を指します。被服は、着用する人の体形、動き方などを考慮することが必要で、そのためには人間中心の設計や人間工学が重要です。特に人間工学は、使いやすさや動きやすさ(着やすさ、脱ぎやすさ、扱いやすさなど) 、快適性を追求し、「人にとって安全で使いやすく快適な製品を実現する」ために考慮すべきことです。
本学被服学科名誉教授 大塚美智子先生は体の形態にもとづいた衣服のデザイン設計におけるトップランナーです。 JIS改正原案作成委員でもある大塚先生は、JIS規格(日本産業規格(JIS=Japanese Industrial Standardsの略))における日本人の体形の寸法を更新するべく調査・研究をされています。
武本歩未先生
快適で機能的な衣服設計のために、人体の形態と動きに着目し、三次元計測や動作解析、CADを用いた体型分析、衣服パターンについて研究を行っている。
【研究分野】
家政・生活学一般
—武本先生の研究領域とIdiom社との取り組み意義について教えてください。
私の研究分野は、人の寸法や形状を捉えて、その情報を衣服の設計に落とし込んでいく「被服構成学」という学問です。Idiom社との取り組みでは、ファッション雑貨の監修という形で、人がそれを使ったときにどう評価するのかを考えながら、設計の際にアドバイスをしていて、Idiom社はそれに基づいてものづくりをされています。
被服に限らず、工業製品は人がより良く使えるものでなくてはなりません。被服は、着用することで身体的、心理的に満たされることが最低限の条件です。そのためには装飾性も大切ですが、まずは「形」が重要であり、その形の機能性を高めるために、私や横井先生は被服の着用者である人間について研究しています。
造形の分野は、服飾のデザインや製作に関する科目だけでなく人間の特性を学ぶ科目など色々な科目があります。
—Idiom社と産学連携の意義を教えてください。
今はまだ実現はできていませんが、産業界とのつながりが多い被服学科ならではとして、学生とコラボレーションした何かを販売できる、学生も含めた本格的な研究、インターンで企業の製品設計に参加するなど、そういった相互にメリットのある取り組みができれば良いなと考えています。人間工学という分野は産業界とのつながりが大きいので、実務を通して社会とつながる機会を将来的は提供できればいいなと考えています。
多くのブランドを持っていて幅広い消費者に対して製品を提供する企業が「人間工学に基づく製品」として設計していると表現して発信してくださることは、めぐりめぐって被服学科や人間工学への興味を喚起するきっかけになると期待しています。
—武本先生が思う被服学科の強みを教えてください。
文化的・科学的な視点で、被服を広く、深く学ぶことができるカリキュラムを展開している点が強みです。科学的な学びを活かし、在学中に、繊維製品品質管理士(TES:Textiles Evaluation Specialist)のを取得する学生もおります。TESとは、繊維製品の製造、販売、品質などに関する専門家のことで、アパレル業界では認知度の高い資格であり、アパレルの品質管理、生産管理、企画職では取得を求められる場合もあります。本学の被服学科のファッションサイエンスコースでは、TES資格取得につながる科目に重点を置いていて、毎年、合格者を輩出していることはその学習環境の良さを裏付ける強みだと思います。科目の提供だけでなく、TES受検のために奨学金も始めたことで、経済的な面からも資格取得を後押ししています。
また、本学は衣料管理士(TA:Textiles Advisor )1級の養成大学としても認定されています。繊維製品に関する知識だけでなく、実験や実習により実践的な能力も身に着けることができる資格です。TA1級の取得は、繊維製品を扱う企業で、企画・設計/販売/品質保証/消費者対応などの部門で活躍するスペシャリストとしての道も拓けます。
ワールドグループの株式会社アスカインターナショナルとのコラボレーションアイテム発売についてのニュースは、以下のリンクをご覧ください。
私の研究分野は、人の寸法や形状を捉えて、その情報を衣服の設計に落とし込んでいく「被服構成学」という学問です。Idiom社との取り組みでは、ファッション雑貨の監修という形で、人がそれを使ったときにどう評価するのかを考えながら、設計の際にアドバイスをしていて、Idiom社はそれに基づいてものづくりをされています。
被服に限らず、工業製品は人がより良く使えるものでなくてはなりません。被服は、着用することで身体的、心理的に満たされることが最低限の条件です。そのためには装飾性も大切ですが、まずは「形」が重要であり、その形の機能性を高めるために、私や横井先生は被服の着用者である人間について研究しています。
造形の分野は、服飾のデザインや製作に関する科目だけでなく人間の特性を学ぶ科目など色々な科目があります。
—Idiom社と産学連携の意義を教えてください。
今はまだ実現はできていませんが、産業界とのつながりが多い被服学科ならではとして、学生とコラボレーションした何かを販売できる、学生も含めた本格的な研究、インターンで企業の製品設計に参加するなど、そういった相互にメリットのある取り組みができれば良いなと考えています。人間工学という分野は産業界とのつながりが大きいので、実務を通して社会とつながる機会を将来的は提供できればいいなと考えています。
多くのブランドを持っていて幅広い消費者に対して製品を提供する企業が「人間工学に基づく製品」として設計していると表現して発信してくださることは、めぐりめぐって被服学科や人間工学への興味を喚起するきっかけになると期待しています。
—武本先生が思う被服学科の強みを教えてください。
文化的・科学的な視点で、被服を広く、深く学ぶことができるカリキュラムを展開している点が強みです。科学的な学びを活かし、在学中に、繊維製品品質管理士(TES:Textiles Evaluation Specialist)のを取得する学生もおります。TESとは、繊維製品の製造、販売、品質などに関する専門家のことで、アパレル業界では認知度の高い資格であり、アパレルの品質管理、生産管理、企画職では取得を求められる場合もあります。本学の被服学科のファッションサイエンスコースでは、TES資格取得につながる科目に重点を置いていて、毎年、合格者を輩出していることはその学習環境の良さを裏付ける強みだと思います。科目の提供だけでなく、TES受検のために奨学金も始めたことで、経済的な面からも資格取得を後押ししています。
また、本学は衣料管理士(TA:Textiles Advisor )1級の養成大学としても認定されています。繊維製品に関する知識だけでなく、実験や実習により実践的な能力も身に着けることができる資格です。TA1級の取得は、繊維製品を扱う企業で、企画・設計/販売/品質保証/消費者対応などの部門で活躍するスペシャリストとしての道も拓けます。
ワールドグループの株式会社アスカインターナショナルとのコラボレーションアイテム発売についてのニュースは、以下のリンクをご覧ください。
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