共に学ぶために、できること ~ノートテイカー養成講座~

2023.06.28

皆さんは、ノートテイカーという活動をご存知でしょうか? ノートテイカーは、聴覚障害を持つ学生が授業に参加できるよう、教員などが発した音声を文字として伝える支援(情報保障)をする人のことです。本学ではボランティア活動として、パソコンを使ったノートテイクに協力してくれる学生を募っています。

6月8日(木)、この活動に参加するためのガイダンスとなる「ノートテイカー養成講座」がJWUラーニング・コモンズかえでで実施され、27名もの学生が受講しました。講師を務めたのは、人間社会学部教育学科の榎本 聡准教授です。

ノートテイクでは
「重要性」を判断しない、「理解」も必要ない

本学のノートテイクでは、筑波技術大学が開発した「T-TAC Caption2」という遠隔情報保障システムを活用しています。このシステムは、インターネットに接続したパソコン以外に特別な機器が不要で、複数人での連係入力も可能である点が特徴です。

講座では、はじめに榎本准教授よりノートテイクに関する重要なポイントが2つ紹介されました。
ひとつ目が「『重要性』の判断をしてはいけない」ということ。教員の雑談のように思えても、重要な内容である場合もあり、重要性の程度についてはノートテイクを受ける本人が判断する必要があります。
もうひとつが「『理解』をする必要もない」ということ。教員の説明が明らかに間違っているような場合でも、ノートテイクではそのまま伝え、声が小さくて聞こえない場合には、「聞こえない」と状況を伝えるそうです。それは、その結果どうするかは本人に委ねられるからです。

T-TAC Caption(開発:筑波技術大学 三好茂樹)

1人で入力、連係入力
それぞれの難しさ

榎本准教授によるレクチャーのあとはさっそく実践形式で、システムを使った入力の練習を行いました。
まずは、受講者それぞれが1人でサンプルの講義の内容を入力してみます。1人でのノートテイクでは、講義で話される内容を入力し続ける集中力が求められます。
次に実践した連係入力の場合は、他のメンバーが入力している様子を画面上で確認しながら、入力を途中から引き継ぐ連係が必要になります。もちろん授業中のため、お互いに声を掛け合うことはできず、入力されていくテキストから、どこで引き継ぐかを察しなければなりません。
講義の内容すべてを入力していく慣れない作業に、受講者も初めは苦戦していたようですが、練習を繰り返すうちに徐々に慣れていった様子でした。
最後に、現在ノートテイカーの活動に参加している学生、ノートテイクを受ける学生、それぞれの立場から受講生へメッセージが贈られて講座は終わりました。

集中しノートテイクに取り組む参加学生

一番大切なのは
授業の臨場感を共有すること

講座終了後、榎本准教授にお話を伺いました。
「多くの学生が講座に参加してくれて良かったです。ぜひノートテイカーに登録し、活躍してくれればと思っています。最初は難しく感じるかもしれませんが、取り組んでいくうちにテクニカルな部分は慣れていきますし、入力自体も速くなっていきます。
ノートテイクとは、健聴者が作成するノートのように授業内容の『記録を残す』ためのものではなく、サポートを受けたい学生が『その場の音を見る』ものです。授業内容はもちろんですが、じつはクラスの様子の情報を欲しています。たとえば先生が言った冗談で笑いが起こっているとか、急に『来週は試験だ』と言われ教室がザワザワしているとか。そういった臨場感こそが、教室で共に勉強する醍醐味だからです。ぜひノートテイクで共有していってください。ノートテイカーの活動が、普段から聴覚障害を持つ方の支援を考えるきっかけにもなってくれれば、嬉しいです」

なお、「ノートテイカー養成講座」は後期にも実施を予定しています。

参考リンク