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「詩を聴く体験」から学ぶ

アメリカの詩人をお招きしたポエトリー・リーディング

人間社会学部文化学科 田中有美研究室 では、2022年12月15日、ゼミの特別編としてアメリカ現代詩の最前線で活躍されている詩人/文学研究者のお二人をお招きし、詩の朗読会を開催しました。このイベントは、本学の特別重点化資金招聘企画の助成を受け 、東京大学と共同主催したもので、学生、教員合わせて17名が参加しました。

ゲストスピーカー:
マイケル・スネディカー氏(ヒューストン大学英文学科教授、詩集Meanderest著者)
ケヴィン・ホールデン氏(ハーヴァード大学ジュニア・フェロー、詩集Pink Noise著者)

Guest Speakers:
Dr. Michael Snediker, Professor of the Department of English at the University of Houston, and author of Meanderest
Dr. Kevin Holden, Junior Fellow at Harvard University, and author of Pink Noise

イベント第1部では、まもなく出版される詩集の中からいくつかを、お招きした両氏より、特別に朗読いただきました 。日本でも諸外国でも、朗読会において著者による直接の朗読が聞けるのは、貴重な体験です。

スネディカー氏の朗読

詩の朗読会では、途中でお話を挟む著者もいるそうですが、お二人はそのまま読むスタイルとのことで、それぞれ20分ほどかけていくつかの詩を読んでいただきました。学生たちは、お預かりした詩の文字情報も手がかりにしながら、知っている単語、知らない単語、音や勢いにも関心を向けながら聴きました。

スネディカー氏は、「読む行為は受け身のように捉えられがちなので、朗読はアクティブ・リーディングとも言える。詩を『聴く』というユニークな体験を楽しんでほしい」、ホールデン氏は、「詩が自分の言語であっても、全てを理解しているわけではありません 。皆さん自身の理解に達するために 、”do the best you can” (自分のベストを尽くして下さい)」と話し、朗読に対する聴き手のあり方を指南くださいました。

ホールデン氏の朗読

イベント第2部では、学生が質問を用意し、両氏へ直接英語でお尋ねする時間となりました。その中から、いくつかを紹介します。

学生からの質問を引き出す田中先生

-アメリカ社会では、詩がどう評価されていると思われますか?バイデン大統領の就任式で詩人が詩を朗読するのを見ました 。

「残念ながら、詩が大切に扱われているとは言えません。どの国でも、人の集中力が短くなっているなどの傾向が見られています。また、正解を求めがちで『この詩はどうやって解読するのか?』という態度で臨む人もいます。しかし、詩においてもっと大切なのは、感じることであり、詩の解釈において間違っているということは一つもありません」

「大統領の就任式で、若き詩人アマンダ・ゴーマンが詩の朗読をしましたが、あくまでセレモニー的なものでした 。私は、意識できない感情や、通常の認識を超える新しい世界を詩で表現したいと考えています。その一方で、ゴーマンのように、多くの人が共感できるような詩を書く詩人もいます。色々なタイプの詩人がいますが、詩に関する助成金が縮小していることもあり、詩人だけで生計を立てるのは大変です」

-今日は詩の朗読をしていただきましたが、詩を「聴く」のと「読む」のではどのような違いがありますか?

「実は読むという行為において、”聴く”よりも多くのことがページ上でできると思います。詩の行や行間を楽しむこともできます。そして本は1回きりではありませんし、何回でも読み直せるからです」

-英語の詩には、知らない単語もあります。その場合、調べて勉強するのがいいでしょうか?

「そんなことはありません。詩は自由なものなので、シンプルに楽しむことができます。一方で、より分かるようになると、より楽しめるという要素もあります。詩には、何かを反映した表現があったり、日常の言葉とちがう言葉を使ったりするので、それを知らないと分からないケースもあります。しかし、勉強と楽しみを分けてしまうのではなく、勉強しながら洗練された言葉を楽しむ、ニュアンスを楽しむ、という知的な楽しみ方もできるのです」

休憩時間には日本の和菓子について話が弾んだ

参加した3年生 成嶋茜さんのコメント:
朗読会の一番の学びは、詩は文章の意味が分からずとも、人を楽しませることができるという理解です。ケヴィン先生とマイケル先生による朗読は、詩や英語が十分にわからなくても、一つの作品として記憶に残りました。
また、先生方にお伺いしましたがアメリカでも詩は尊重されてはいません。日本でも詩の勉強をしたことのある人は少なく、私もその一人でした。何も知らない分野に飛び込めたことが、今回一番の成果だったと思います。

田中有美先生のコメント:
参加した学生の一人が、「お二人の詩には様々な欧米の文学や哲学への言及が含まれていますが、そのことを知らない非欧米圏の読者もお二人の詩は楽しめるものだと思いますか?」と質問していたのが印象的でした。それに対し、ホールデン氏が「楽しめる」と断言し、なぜなら、ご自身の詩を高く評価するのは、英語を母語としないフランスの読者が多く、最良の理解者が常に同じ文化圏にいるとは限らないから、とのことでした。私は小説を専門としているので、ストーリーや意味に重点を置きがちなのですが、どのような言語であれ、目の前に並んだ言葉とその音を、無心に楽しむことの快楽を実感したイベントとなりました。

人間社会学部文化学科、そして2023年4月に開設する国際文化学部国際文化学科では、文化と文化を行き来し、境界を越えていけるような科目や企画の数々を用意しています。学生が多様な文化や言語を実際に体験し、新たな問いを立て、さらに発信していける人材となるよう、今後も学修の機会を作っていきます。

*参考

日本女子大学国際文化学部(2023年4月開設)