高等学校長の言葉

現代は、変化が激しく、先行きが不透明な「VUCA」の時代です。このような時代には、適切な意思決定を行う判断力が求められます。最近の脳科学の研究(アントニオ・ダマシオ博士が提唱するソマティック・マーカー仮説)によると、合理的な判断には理性だけでなく、身体知(知覚・感覚)や感情記憶の蓄積が不可欠とされています。このことが、近年感情教育が重視される理由です(山口周著『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』)。
さらに、近年「AI(人工知能)」が急速に発展し、普及しています。AIを上手に使いこなす能力は、これからの時代に必要不可欠です。しかし、AIにはできないこともあります。それは、世界を身体で感じ取ることです。人類は狩猟採集生活をしていた太古から、森林や草原の自然に触れ、万物に心を通わせながら、このような力を磨いてきました。このことから、最近では森が学習環境として尊重されるようになっています(宮台真司・おおたとしまさ著『子どもを森へ帰せ「森のようちえん」だけが、AIに置き換えられない人間を育てる』)。
私たちの学校では、生田の森に囲まれた自然豊かな環境で学ぶことができます。生徒たちは各教科と連携した高度な情報教育を受けることで、将来AIを自在に使いこなす能力を身につけるだけでなく、AIの時代にこそ必要とされる豊かな感覚や感情も育むことができます。
本校での学びを通じて、みなさんがこれからの時代に必要な力をしっかりと身につけ、あの「風の谷のナウシカ」のような、「感じる心」と「やわらかな心」を持って未来を切り開く人になってほしいと考えています。