Vol.13

飯村さんへ

動画制作同好会を立ち上げた 第52回、53回十月祭
動画制作同好会を立ち上げた 第52回、53回十月祭

 4月になったばかりの頃に届いた、1通の嬉しいメール。東京女子医科大学に進んだあなたが、白衣授与式を終えてstudent doctorになったこと。そして、大学の科目であるTBLとテュートリアルの科目優秀者に贈られるアンドロメダ賞を受賞したことが綴られていて、努力家で一つ一つのことを丁寧に積み上げていく姿が目に浮かびました。
 高校生のあなたが、大学入試のための「志望動機書」を書いたので見てほしい、と教員室を訪ねてきたとき、実はちょっと驚いてしまいました。本の虫で図書室に入りびたり、図書委員や文集委員なども務めていて熱い文学論を語るあなたのことを、私は完全に文学少女だと思っていたのです。まさか医学部に進学したいと考えていたとは思いませんでした。よく考えてみれば、森鴎外や北杜夫、コナン・ドイルやチェーホフなど医師で作家という人はたくさんいて、文学を愛する心と医学を志す気持ちは両立するものであり、文理に分けない本校らしい生徒の姿そのものだと気づきました。中学時代は動画制作同好会を立ち上げて十月祭で発表したり(動画アプリ等が現在ほど豊富には存在しない中で完成した作品は、本当に見事でした!)、高校では生物部とパソコン部を兼部したりと幅広い興味関心のもと、やりたいことに邁進していた中高時代だったのだと思います。

The Library News
The Library News

 中学3年生の時、図書委員だったあなたは、図書委員会が発行している「The Library News」の編集責任者となり、文字通り水を得た魚のごとく、生き生きと活動していました。あなたが中心となってまとめ上げたこの年の「The Library News」はどの号もとても面白く、読み応えのあるものばかりでした。十月祭号の294号は本校を知ってもらおう! と意気込んで、授業で取り扱った文豪を特集し、文豪たちの相関図も載せていました。瞳を輝かせて作家たちの話をしていた様子は、今でもよく覚えています。295号の冬休み前号では、ビブリオバトルのチャンプ本を紹介。その時にあなたが取り上げていたのは、何と坂口安吾の『桜の森の満開の下』でした。
 登場人物の心情の変化を辿りつつ、作品の背景を考え、作家の意図することを深く読み解いていく。そうして自分が捉えたことを相手に伝えるべく、言葉を選んで打ち出していくこと。話し合いの中で、相手の考えを理解しようと全力で向き合うこと。授業でも図書委員の活動でも、いつも真剣に取り組み、夢中になって楽しんでいた姿を思い出します。高校生活を楽しむ傍ら再生医療に興味を持ち、女子医の教授の研究論文や書籍を読み、シンポジウムまで参加していたというそのひたむきさは、これからもあなたを支える力となるでしょう。志を強く、自分を信じて歩んでください。心から応援しています。

国語科 野中