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2023/09/12

  • 未来のワタシ

Vol.13「教養を身につけて」

  • 中学生のワタシ
    中学生のワタシ
  • 現在のワタシ
    現在のワタシ

 中学校を卒業して8年の月日が流れましたが、時を重ねるにつれ現在の私の生活が在学中の数々の経験によって支えてられていることに度々気づかされます。

 本校では様々な作品や知識に出会い、疑問や意見が浮かんでは調べ、伝えるという経験を積みます。とりわけ国語では考えを文章に起こし、先生からお返事をいただくことが最高の楽しみでした。テストは苦手でしたが、国語だけはテスト返しや作品返却での先生のコメントが待ち遠しかったことを覚えています。授業で扱った沢山の書籍や作品の中から美術館や書店に足を運ぶようなお気に入りを発見し、一推しを紹介しあった親友たちとは大学生・社会人になった今でも頻繁に集まり何でも話せる間柄になりました。

 現在、私は大学で医師を志して学んでいます。患者様や医療従事者の方々と接する中で、机上だけでは教わることが出来ない言葉遣い、身だしなみ、立ち振る舞い、マナーなどの重要性を日々実感しています。相手の気持ちと向き合うこと、相手に伝わる適切な言葉を選ぶこと、敬意を持った態度で接することは、時に「何を伝えるか」以上に大切だと思います。中学校では沢山の「伝えたいこと」を見つけ、それを文章や自分の声にのせて発信しました。相手の言葉の背景を考え、意見を否定せずに受け入れ、その気持ちに応えることを何度も経験しました。友人たちの意見や作品からは「いつもの彼女」の知らない一面を知り、改めて彼女を好きになり尊敬しました。私とあなたに優劣をつけるのでは無く、「ここがあなたの素敵な(・得意な・かっこいい・可愛い・やさしい)ところ」を見つけ、自分も相手も尊重できる時間と機会に恵まれた3年間でした。先生方や友人たちと共に数え切れないほどの思いを受け止め一緒に考えた経験は、医師を志し、「誰かの人生に寄り添いたい」という気持ちの礎となっています。

 日本女子大学附属校では国語、家庭科、音楽、理科をはじめ特色豊かな授業や行事、様々な活動が存在します。卒業した今だからこそ、この恵まれた環境が私に与えてくれたものは「知識」だけではなく「教養」であったと思うのです。現代の私たちが生きていく情報社会では、知識はいつでも誰でも簡単に手に入ります。しかし、懸命に考え、伝え、手を動かし、意見を交わし、心で感じ取る経験は、可能性を秘めた中学生の今だからこそ、あなたの教養の一つとして長い人生を楽しく豊かに生きていく糧となるのではないでしょうか。
この場をお借りし、育てて下さった先生方、職員の皆様、友人たちに心より感謝申し上げます。
そして後輩の皆様の未来が実り多きものになりますよう祈念しております。

69回生 飯村 周有子
東京女子医科大学 医学部