Vol.06

荒川さんへ

当時のクラス日誌
当時のクラス日誌

 「私は将来、土木関係の仕事に就きたいのです」と中学3年生の個人面談で、荒川さんは私にそう言いました。私は中学生=土木という公式が結びつかず、「なぜ??」とお聞きしました。ご家族の影響もあって、その道に進みたい、とすでに意志は固いようでした。
 荒川さんの印象は、私の中ではリケジョというより文学少女でした。本が好きで図書委員長をつとめ、クラス日誌にはいつもあなたの好きな本の紹介や、好きな歌の歌詞の一部、好きなマンガのセリフが、整った文字でびっしりと書き込まれ、それを読み解いてお返事を書くのも大変だけれど楽しいことでした。心の内が少しのぞけるような気がするからです。もちろん理系教科もしっかり学び、成果をあげていた方ですが、物事の核心をつく文章の書き手でもありました。
 その後、大学受験を経て、念願の土木関係の仕事に就き、今は長野で新幹線のトンネルをたたいて点検や補修計画を立てている、とうかがって、私は「信念徹底の人だなぁ」と感心しています。まさに本校の教育理念の体現者、中学生時代から口にしていた夢を実現した、有言実行の人です。
 中学時代に好きなもの、夢中になれるもの、やりたいことを見つけ、それが将来の仕事につながっているという人は、本校の卒業生では少なくありません。紆余曲折はもちろんありながら、最終的に自分の意志を全うするのは、自分自身の粘り強い努力はもちろんのこと、周囲の理解や助けも必要です。「信念徹底」「自発創生」「共同奉仕」の三綱領が自然と身についている本校の生徒は、ゴールの目指し方を知っていると言えるのかもしれません。
 教員をやっていると、教えることより教わることの方が多く、尊敬すべき生徒や保護者の方との出会いがたくさんあります。荒川さんとの出会いに感謝し、あなたのこれからの未来をいつも応援しています。

英語科 本木