Vol.04

水留さんへ

当時の十月祭プログラム
当時の十月祭プログラム

 悩み多き人—それが水留さんの印象です。様々なことに気づき、自己の問題として深くとらえ、考え抜くからこそであり、豊かな心を育む為に欠かせない時間を過ごした証そのものなのですが、渦中の貴女は苦しいことも多かったことと思います。
 弦楽クラブでヴィオラを奏でる傍らで、十月祭の行事委員として3年間夢中になって取り組み、運動会の応援団も務めるバイタリティー溢れる日々。高校や大学でもダンスのクラブやサークル活動に勤しみ、進学した日本女子大学では、忙しい合間を縫って管理栄養士の国家試験も合格した強者。やりたいことを思う存分やってきたような貴女ですが、それだけに悩みも途切れることなく続いたのでしょう。
 1年生の時に担任し、その後はクラスも離れてしまいましたが、中高在学中はもちろんのこと、大学生、また社会人になってからも、時間を見つけては話に来てくれました。こうした繋がりを持てることは、教員として本当に幸せなことだと感じます。キャリア教室という、本校の中学3年生向けのプログラムの講師に推薦したのも、数年来のやり取りで十分に感じた貴女という人を、信じているからです。社会人としてしっかりと過ごしているという事だけでなく、中学生にとって心を開いて話ができる人、中学生に寄り添って考えてくれる、貴女の人間性そのものに感銘を受けたからに他なりません。
 中学校の文集に、貴女が書いた文章を覚えていますか。1年生の時は、「あらゆることに影響されてすぐに気持ちが変わってしまう、気まぐれな自分が嫌」で「一つのことに熱中している友達のかっこよさ」に憧れる気持ち。3年生では「自分の可能性を信じ切れず、慎重になりすぎて自ら限界を作ってしまう」ことへの嘆きが綴られていました。しかし、どんな悩みであっても嘆くだけではなく、その時々で貴女はちゃんと自分で答えを出してきたのです。そしてそういう日々を過ごしてきたことを自身の宝だと思い、今度は自分が支える側になりたいと心から思って下さっていることが何よりも嬉しいのです。伝統とはこうした繋がりがあることなのだと、嚙みしめるように思い味わう、今日この頃です。

国語科 野中