Vol.02

柳澤さんへ

国語の作品
国語の作品

 柳澤さんを中学3年間、私は担任し成長を見守りました。初回に登場した源川さんと同級生、2人は中高6年間クラスも違えばクラブも異なる、中学受験入学の源川さんと附属豊明小学校出身の柳澤さんですが、中学生の頃からなぜか大事な心を打ち明け合える友達なのです。
 中学時代の柳澤さんは、硬式テニスに日々打ち込み真っ黒に日焼けした引き締まった肢体、それでいて物事をとことん考え深めていく哲学者の面持ちがありました。当然クラスの信頼は厚く、彼女「ヨッタン」の落ち着いた対応はクラスを安心させてくれました。彼女だけでなく精鋭の揃ったこの年の硬式テニスクラブは、四国で行われた全国選抜大会では準優勝を勝ち取りました。お互いに切磋琢磨したメンバーのその後の進路と活躍ぶりは、彼女をはじめそれぞれに素晴らしく、ひとつの世界で力を極めて鍛え抜いたことが、別の世界においても意欲を持って己を磨き実力を発揮する道を拓くのだと感心するばかりです。「志のあるところに道は拓かれる」、いつでも生徒の志を応援する私達でありたいと思います。
 学校のクラブに加えテニススクールにも通っていた彼女の帰宅は夜遅く、それから食事等々、学校の課題に取り組むのは深夜に及ぶという生活を聞いて、心配したものでした。それでも彼女の勉学へのこだわりは強く、いつも綿密に細かな字で見事な意見を打ち出した作品が提出されました。思索の途中にはお父様との意見交換もある様子、遠藤周作の「ルオーのなかのイエス」を授業で取り上げた時には、お父様愛読の『沈黙』や『深い河』まで読破したことなど、学期末の面接で楽しく話しました。3年生の面接時に「高校に進んだら今度は勉強第一、東大を目指す」という宣言を聞いて拍手喝采、自分の沢山の可能性を育てていく本校の生徒、彼女の宣言は本物になりました。充実の大学生活、卒論はみごとに学部長賞の一高記念賞を受賞、今春からは外務省でのキャリアがスタートします。
 自分を信じる心、信念の人、私の自慢の教え子です。

国語科 椎野