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2024/08/06

  • 未来のワタシ

Vol.18「勉強が楽しい!は一生もの」

  • 中学生 文芸部のワタシ
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  • 現在のワタシ
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 日本女子大学附属中学校に進学した私を待ち受けていたのは、国語の試験の真っ白な解答用紙でした。

 真っ白というのは、回答欄の中に罫線が無く、文字数の制限がないということです。「この場面の主人公の感情は」といった問いに、時間の許す限り、時には解答用紙の裏面まで使って、自分の考えを自由に書くことができました。

 針の先のような小さな字でびっしりと書かれた解答用紙に、先生は丁寧に線を引きながら点数をつけてくれました。テストの返却時には、優秀な回答も併せて紹介されます。自分の回答が読み上げられた時の喜びを静かな教室でかみしめるのが、次の試験へのモチベーションにもつながりました。

 気がつくと私は国語の授業に夢中になっていました。授業では1人1冊購入した文庫本を数回に渡って最後まで読み込みます。「坊っちゃん」、「銀河鉄道の夜」——。線を引いたりメモをしたりして、ぼろぼろになるまでページを繰りながら先生と一緒に本の世界に浸りました。放課後に残り、忙しい先生を1分でも長く引き留め、議論するのが日課でした。

 入学した当時、文章を読むのも遅く、書くのも苦手で、国語が得意科目とはとても言えませんでした。ただ、考えれば考えるほど面白くて、試験を受けることすらワクワクするような授業を受けて、勉強するのがとにかく楽しくなりました。読み書きへの苦手意識も次第に克服し、中学・高校を通じて、学校新聞の発行にも携わりました。

 大学を卒業後、日本経済新聞社に就職しました。政治記者として、首相官邸で総理大臣や官房長官の番記者を経験し、現在は外務省を担当しています。記者は、担当する分野について知識を蓄え、最前線で働く人たちに日々お話を伺い、得た情報を読者の方々に分かりやすく伝える仕事です。この仕事に就きたいと思ったのは、中学校で勉強の楽しさを知ったからです。

 読者の方たちが政治や経済を「よくわかる!」「おもしろい!」と思える記事を書くためには、まず誰よりも自分が理解し、興味を持ち続けながら記事を書くことが必要だと思っています。「難しいけど楽しい」と思えた中学時代の学びがあったからこそ、どんなに複雑な問題の取材にも前向きに取り組めています。

 私はいま働きながら、夜間や休日の時間を使って大学院にも通い、国際政治や安全保障の授業を受けています。「勉強が楽しい!」は一度覚えてしまえば一生ものの宝です。皆さまが、この日本女子大学附属中学校で、自分だけの「学びの楽しさ」に出会えることを、心から願っております。


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回生 馬場加奈 

(日本経済新聞社)