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2022/04/13

  • 未来のワタシ

Vol.03「40年前の新入生より」

  • 西生田キャンパスの庭に灯る街灯
    西生田キャンパスの庭に灯る街灯
  • 2021年度 キャリア教室にて
    2021年度 キャリア教室にて

 1982年4月、今からちょうど40年前に附属中学校に入学し、大学までの10年間、日本女子大学で学びました。大学では住居学科に進学、卒業後は「アトリエ事務所」と呼ばれる建築家が主宰する設計事務所で建築の実務を学び、32歳で独立し今に至ります。

 中学時代とは、誰にとっても人生の課題に直面する出発点のような時期ではないかと思います。私は何であるか、私はどう生きるかという、命ある限りつづくであろう自分への問いかけが始まるように思います。そんな時期、本校の桜のトンネルをくぐると、もれなく全員に「信念徹底」「自発創生」「共同奉仕」というつの3つの四文字熟語がプレゼントされます。私には3つは多いので最後の「共同奉仕」はお返ししようとしても、遠慮しないで受け取って!とばかりに先生は押し戻してくれます。当時の私はそんな押し問答を、先生、家族、友人に、拙くも全力で仕掛けていました。
歳を重ねていっても、一社会人として、一生活者として、進もうとする道を選択するとき、「信念徹底」「自発創生」は体現するどころか揺らぐことがありますし、「共同奉仕」を抵抗なく受容できるようになっても手探り状態は続きます。日常的に、三綱領が想起されるわけではありませんが、ふとした時によぎり、襟を正してくれる言葉になっています。

 10年ほど前、私は幸運にも、住居学科の同級生とともに、西生田キャンパスの中庭の改修設計者として、母校の環境づくりに携わる機会を得ました。西生田校地は、周辺が市街化していく中で、緑豊かな里山の風景を残しています。本校の自由でのびのびとした校風は、この大らかな環境によるところが大きいと感じます。里山の地形を生かし、環境に対しても他者に対してもオープンなつくりの中高の統合校舎は、中学受験を控えた小学生の私には新鮮かつ発展的で、初めて自ら好きだと選んだ場所だったといえます。設計対象は大学の校舎の中庭でしたが、同級生とのコラボレーションは、西生田校地の空間体験を共有できる安心感の中に、異なる経験を積んできた時間の緊張感があって、手ごたえのあるプロジェクトになりました。
 日々の気づきが、身体にしみわたり、そこから表現となるまで、様々な形での対話があります。そして表現は、新たな対話を生みます。若き日の私たちと、どんな時もしっかり向き合ってくださったことの尊さに応えられるよう、これからも精進していきたいと思います。

38回生 鈴木 陽子
(鈴木陽子建築設計事務所)