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2025/09/17
- 教員リレーエッセイ
【9月】あなたはどう考えるか、どう表現するか
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型作り -
生まれたばかりの作品 -
わたしだけの宝箱
私の専門分野は金属工芸の鋳金ですが、高温で金属を溶かし鋳型に流し込んで成形する…といったことを、普段の授業で行うことはなかなかできません。
そこで今年の夏休み、鋳金の魅力を生徒にも味わってもらえればと、中学1年生の希望者対象に鋳造教室を開きました。作るのは「私の宝箱」。箱の部分は木材で、蓋部分を金属のピューターを鋳造して制作しました。ピューターとは、錫(スズ)・アンチモン・銅の合金で、融点250℃程の銀色で美しい金属です。
当日は35人もの生徒が参加してくれました。いきなり金属を溶かすわけではありません。まずは蓋に施したいデザインを、金属を流し込む型(木材)に彫刻刀で彫っていきます。自由度の高い作品制作に最初のアイディア出しの苦労は付きものですが、自分の世界を持っている生徒が多いのか、普段から何かにつけて「あなたはどう考えるか?」と聞かれまくっているからなのか、悩みながらも十人十色のアイディアで、スムーズに型作りに取り組んでいました。中には、「これは複雑すぎて型が作れないかも」と(親心だけど余計な)アドバイスをしても、作りたいアイディアを決して曲げず、そして見事に作りきる生徒も…。伸びやかでたくましい本校の生徒の姿が垣間見られました。
そしていよいよ、ブロック状のピューターを熱して溶かし、型に流し込みます。美しく溶けたピューターは、型の中で徐々に温度を下げ固まります。型を外すと、それぞれのデザインが金属となって現れました。「すごーい」「綺麗~」自然に言葉が溢れます。
慣れない作業、限られた時間の中ではありましたが、仕上げ作業まで丁寧に取り組み、無事全員「宝箱」を完成させることができました。自分の作品制作に対する生徒の姿勢はまっすぐで、完成した作品を手にする顔はとても嬉しそうでした。
私もそうでしたが、溶けた金属の美しさや面白さは、自分の目で見ないとわかりません。硬くて熱くて扱いづらい金属だからこそ、姿を変えた美しさに人は感動するのだと思います。そんな感動の瞬間を生徒の皆さんと一緒に味わえたことは、私の夏休みの大切な思い出となりました。