コンテンツ

2025/12/18

  • 校長より

「雪の日に」(2025/12/18)

 長い長い2学期が終わりました。3年生の選択校外授業に始まり、2年生の東北校外授業、自治の話し合い、十月祭や音楽会などたくさんの行事を経て、生徒たちも様々に成長できた実感があるのではないでしょうか。また「生活レポート」にあるように、先日は本校の卒業生でもある久保田朋子さんにお越しいただき、被爆講話を伺う機会を得ました。家族との会話やその時々に感じたことなどを織り交ぜながら語られる内容は、自分がその場に居合わせたような不思議な感覚を持って聞き入ってしまう臨場感がありました。「知らないことを理由に目を逸らしてはならない。知ろうとすることから逃げてはいけない」という生徒の「終わりの言葉」からは、この講話により大きく意識が変わったことが伝わります。貴重な機会を得られたことに、深く感謝したいと思いました。
 
 今日の終業式では「雪の日に」という詩について、話をしました。合唱組曲「心の四季」に収められている作品であり、先週の音楽会でもコーラスクラブが合唱しました。詩の作者は吉野弘さん。吉野さんは日常のささやかな営みから深く考えを巡らす方で、私の大好きな詩人の一人です。
 

雪がはげしく ふりつづける

雪の白さを こらえながら

 

欺きやすい 雪の白さ

誰もが信じる 雪の白さ

信じられている雪は せつない

 

雪は 汚れぬものとして

いつまでも白いものとして

空の高みに生まれたのだ

その悲しみを どうふらそう

 

雪はひとたび ふりはじめると

あとからあとから ふりつづく

雪の汚れを かくすため

 

雪がはげしく ふりつづける

雪はおのれを どうしたら

欺かないで生きられるだろう

それが もはや

みずからの手に負えなくなってしまったかのように

雪ははげしく ふりつづける

「雪の日に」 吉野弘(「吉野弘詩集 ハルキ文庫」より一部抜粋)

 他者から寄せられた、或いは押し付けられたイメージが自分自身を縛り付け、やがて身動きが取れなくなってしまう。相手の想いに何とか応えようと頑張り続けるあまりに、上辺を取り繕い続け自分自身を苦しめていく。汚れを隠すかのように、上辺の白さを塗り重ねていくことで引き返せなくなっていく様子を、降りしきる雪に重ねて表現しています。太宰治の『走れメロス』にあるように、「信じる気持ち」は大きな力となって人を支えますが、時に相手に重くのしかかり、本質を見えなくしてしまうこともあります。人間とは本当に複雑な生き物だと感じるとともに、生徒たちには自分はどうあるべきかを、これからも考え続けてほしいと伝えました。
 冬休みはゆっくりと自分に向き合い、様々なことに思いを馳せる日々であってほしいと思います。皆様、どうぞよいお年をお迎えください。
 校長 野中 友規子
  • 終業式
    終業式
  • 式典の後は大掃除です
    式典の後は大掃除です
  • 束の間の冬休み、ゆっくりお過ごしください
    束の間の冬休み、ゆっくりお過ごしください