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2024/11/20

  • 校長より

「いま生きているということ」(2024/11/20)

 詩人の谷川俊太郎さんが亡くなりました。本当に残念な気持ちでいっぱいです。ご冥福を心よりお祈り申し上げます。

 谷川さんの詩は本校の国語の授業でも多く採り上げており、生徒たちにとても人気があります。
 「春に」「生きる」「朝のリレー」などの教科書に載っている詩から、「うそ」「ほほえみ」といった優しい言葉で書かれていながら鋭く心の隙間を突くような詩まで、様々な詩を生徒と共に読んできました。
 また以前にも書きましたが、谷川さんをお招きして交流会を開いたこともありました。2004年7月のことです。当時、新聞社企画の「オーサー・ビジット」で少人数の中学生と交流なさっていた谷川さんでしたが、それとは別のご縁でご無理をお願いして、中学2年生250名を対象とした会をお引き受け頂きました。ただし一方的な講演はなさらないということで、生徒企画による「谷川先生との会—先生と私達—詩と心を考える」が実現したのです。

 会は、生徒たち自作のプロモーションビデオから始まりました。小室等氏の「いま生きているということ」の曲に載せて自分たちの「今」を綴った学校生活の写真を集めたものです。続いて「わたしの心に届いた詩」鑑賞文の発表、谷川さんと有志11名によるディスカッション、生徒全員によるアクロスティック(折句)の創作が行われ、それら全ての取り組みを踏まえて谷川さんにお話をして頂き、最後は「朝のリレー」をご自身で朗読して下さった密度の濃い2時間余りの会でした。ディスカッションでは詩の言葉や詩作について、詩の解釈が試験等で問われることの是非についてなど活発なやり取りが行われていました。詩人谷川俊太郎の力強く情熱的な言葉の数々に、生徒たちは心揺さぶられ、想いを形にしていくことの難しさと楽しさを感じたことでしょう。
 その時の生徒たちの感想を紹介します。中学生の「今」を存分に生きて、これらの言葉を記した59回生の貴女は、今どのように過ごしていますか。

 詩はダンス、思い付き、美しい言葉を探す…どれも私が思っていたこととは正反対でした。これをきっかけに、自分と詩がもっと身近になるような気がしましたし、実際そうなると思います。

 詩は一つの文でありながら、おそろしく沢山な世界があるのだな、と思いました。私が一番驚いたのは、先生ご自身で作った詩であっても、ご自分で分からないことが沢山あると仰っていたことです。自分で試験を受けても点数が取れないとも聞きました。それはまわりが、作者が考えていないところまで考えてしまうというところにあるわけですが、私はそれはそれでいいと思います。もし答えが一つだけの詩があったら、その詩は狭い範囲でしか味わってもらえないと私は思います。人間にあるたくさんの感情・考えによって詩の世界は広げられ、深いものになっていくのだと思います。

 詩を読む、考えるというのは心のゆとりの空間があってこそと思います。心にゆとりの空間があるというのは誰しも同じで、その大きさによって考える幅や深さが広がってゆくものだと私は考えています。詩の解釈は人それぞれで、人によって色々な考え方があります。全てを含めて、詩には何か特別な思いが込められている気がします。

 校長 野中 友規子
  • 谷川先生とのディスカッション
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