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2023/11/27

  • 校長より

「言葉の海」(2023/11/27)

 先日、技術・家庭科の「情報」の授業を見学しました。今年度、本校で特に力を入れている分野です。学習用の生成AIソフト(プログルラボ)を用いた3年生の授業で、生成AIの簡単なシステムやその使い方について実践を交えながら学んでいくという内容でした。

 はじめにChatGPTのような生成AIがどんなものであるかを知るために、様々な質問をしていきます。「好きなアイドル」や「今後流行りそうなファッション」について尋ねたり、中には「鶏の解剖を授業で扱う意義について」(本校らしい質問!)とか「岸田総理の政策についてどう思う?」などと聞いている生徒もいました。答えを読んだ感想を聞いてみると「理屈っぽくて嫌な感じ」「カッコつけすぎ」などあまり好ましく思ってはいないようでした。面白かったのは「昔の謙譲語で喋って」という質問。その答えは「拙者はGPT-3.5と存じ候。拙者はOpenAIにより訓練されし大規模な言語モデルでござる…」というものでした。聞き方にもよるのかもしれませんが、「昔」の「謙譲語」がどのような括りでデータ化されているのかが伺える内容だと感じました。

 その後、3学期に行われる「球技会」のスローガンを作成していきました。「アニメ風に」「青春を打ち出して」「全員女子の参加なので可愛く」などイメージや条件を次々に入れて、アイデアを引き出していきます。たくさんの答えを引き出しても、なかなか自分たちのイメージに合ったものがなくて、生徒たちは次から次へと条件を重ねていました。「全体的に良くある感じ」「センスがない、映えない」「個性が感じられない」という感想も出ました。今年度の初めに、時間をかけて基本方針のスローガンを考え出した生徒会や十月祭行事委員会のメンバーもいるので、苦労を重ねた自分たちの経験を思うと、簡単に並べられていくAI製のスローガンでは満足できなかったのかもしれません。同時に欲しい答えを導き出すためには「条件を整理して、聞き方を工夫すること」が大切であることも学んだと思います。

 授業を見学していて、AIが出した結果になかなか納得しない生徒たちの様子に、私はちょっと嬉しくなりました。生徒たちが普段から豊かな言葉の海の中で過ごしていることを感じられたからです。自分の言葉を紡ぐ歓びを知っているからこそ「心に響かないもの」には満足できないこと、語彙の豊かさがあるから「もっといいもの」を欲しがる気持ちが溢れること。言葉は、時間をかけて自身の中で育てていくものであることを実感します。便利なツールは上手く使いこなしながらも、学びをどう深めていくのか、常に自分自身に問い続ける日々であってほしいと思います。

校長 野中 友規子
  • 生徒会総務のメンバーが生み出した今年度基本方針
    生徒会総務のメンバーが生み出した今年度基本方針
  • 生成AIソフトが作成したスローガン
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