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2022/12/01

  • 未来のワタシ

Vol.08「青春のメロディー」

  • 中学生のワタシ
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  • 現在のワタシ
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 中学3年の春、私は中学コーラスクラブの部長として、新3年生・新2年生の部員と、入学式に披露する「ハレルヤ」の指揮を取っていました。
 当時コーラスクラブでは、式典や文化祭、音楽会、またTBSこども音楽コンクールに出場し、年間通して様々な課題曲を奏でていました。練習は、基本的に上級生が練習の内容を考え、下級生に指導し、顧問の先生から総評をいただくというスタイルです。今でも、ふとした時に口ずさむのは、中学コーラスで歌った曲の数々、懐かしく思います。

 音楽室の大きな窓から、温かい春風が吹き込んできた、そんな日のことでした。
 私たち3年生と2年生との間に、少しずつ感情的な歪ができていることを感じました。そこからついに誰かが口火を切り、大きな言い合いへ発展したのです。これが、のちに忘れられない「Xデー」。その日の練習は潰れました。ひとしきり、皆の意見が言い終わった頃、顧問の先生が、一言。「いいたいことは言えましたか?」と。
 おそらくその場にいた全員が、このままでは、明日を迎えられないことに気づきました。一人、また一人と、この練習がどうすればよくなるのかという前向きな意見に変わっていきました。前段のとりとめの無い文句や雑言も参考にしながら、改善策を練り、練習の計画や方向性を確認し合いました。多少なりともそれぞれに傷を負いましたが、意見を言いあえる仲間ができました。
 目標へ向けて挑戦する、プロセス(練習計画)を、生徒たちだけで作り上げること、他を尊重し、意見を聞き、一つの音楽という形にする楽しさを中学コーラスで学びました。

 現在、私は、家業の米屋を継いでいます。お米を介し、お客様の問題解決をし、新しいプロダクトを作る楽しさが仕事にあります。私の実家は調布で創業118年営む、街の米屋です。店先に立ち、お客様の好みの味わいをお聞きし、様々な産地・品種・生産者のお米の中から提案していきます。例えば、寿司屋の大将から、「ふわっと軽いシャリを作りたい」とオーダーがあれば、炊飯器具や提供のスタイルなどをヒアリングします。その店の看板となる米を提案する為、単一品種で満足いくものが無ければ、その店専用のブレンドを仕立てます。お客様の問題を真摯にお聞きし解決し、新しいお米の提案へ導きます。

 新米期は、猫の手も借りたいほどの忙しさで、時にはその忙しさから、思わぬトラブルもあります。そんな時は、一度俯瞰して、根本的な歪みを発見し、チームの手をつなぎ合わせることに尽力する。あの「Xデー」の時のように。

58回生 秋沢 毬衣
(株)山田屋本店