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2022/06/14

  • 校長より

「本物を味わう校外授業が始動…『おかえりなさい!3年生』」(2022/06/14)

 我が校全員参加の校外授業が6月11日(土)から本格的に始動しました。

 この日、まずは2年生が国立劇場へ出かけ、歌舞伎鑑賞教室に参加「彦山権現誓助剣(ひこさんごんげんちかいのすけだち)一幕二場」を観劇しました。前日に歌舞伎の研究者でいらっしゃる児玉竜一先生から事前講義を伺いました。児玉先生は早稲田大学 文学学術院の教授で新聞の歌舞伎評にもよく登場なさっている先生ですが、本学の日本文学科にいらした頃から、毎年中学2年生が観劇前に歌舞伎の見どころを講義していただいています。日本の伝統演劇がいかにミルフィーユのように層を重ねながら同時進行で続いてきた芸術であるか、歌舞伎がどんどん新しいものを取り入れつつも素知らぬ顔で伝統と混ぜ合わせていく舞台であるか等々、軽妙洒脱な先生の語り口に魅了される生徒たち。「今回の演目の見どころは?」の生徒質問に「敵討ちのお話の枠組みの中で、返り討ちに次ぐ返り討ちにあって、本当に敵が討てるのかと心細くなるような境遇を、助けてくれる強力な味方に出会うという場面だ」と伺って、鑑賞の視点も定まりました。事前授業を受けて興味関心のツノツノを刺激されてこそ、観劇当日の本物を味わう目と心が養われていきます。国立劇場を後にしながら生徒の「すっごく面白かった!」という感想が、それを証明してくれました。

 もちろんこれは、3年生が行った東北校外授業も同様です。気ままに先入観なく行く旅の魅力もありますが、本校の校外授業は事前に調べ学んで準備して行くからこそ現地で出会う楽しみが増幅でき、実物に学び向学心が増す旅なのです。本校らしい校外授業の学びが実施できなかったこの2年間の苦労を経て、遂に、昨年度行くはずだった東北校外授業が3年生6月に実現したのです。コロナ禍で策定した「校外授業における新型コロナウイルス対応ガイドライン」をご家庭にも徹底し協力いただいて、学校の体制も万全に、短縮版2泊3日の旅が6月11日からと翌12日からの2期に分かれて始まりました。
 例年とは逆コースで一気に新幹線で八戸駅まで北上。恒例の車窓見学説明は今回静かに各々が観察し、しおりに書き込みます。それでも降り立った最初の見学地、十和田湖・奥入瀬渓流は、新緑の美しさでいつも以上に生徒たちをうっとりさせたことでしょう。奥入瀬の理科の説明の様子が写真で送られてきて、「これぞ校外授業!」と嬉しくなりました。毎食の郷土料理も、いつものようにみんなで鍋を囲むことのない黙食ですが、それでも夕礼後の津軽三味線の鑑賞はいつもの名手、きっと津軽三味線の迫力ある太い音がお腹の底に響いたことでしょう。2日目、十和田湖発荷峠から望む景色は、火山湖の成り立ちを実感させると共に、忘れられない絶景であったことでしょう。尾去沢鉱山の史跡に潜り、宮沢賢治記念館で1年次に学んだ『銀河鉄道の夜』を思い返しながら、賢治のイーハトーブを思う時間。最終日は高村光太郎山荘を訪れ、花巻に蟄居した戦後の光太郎に思いを馳せて、初日に仰いだ十和田湖畔の乙女の像を思い返したことでしょう。そして最終見学地は、藤原三代の栄華を偲ぶ中尊寺と毛越寺。「鎌倉殿の13人」を観てから訪れた平泉は、又違う見方を生徒たちに与えたかもしれません。

 もちろん見学地の見どころ満載・学びどころ満載とは別に、初めてのクラスメイトとの泊を伴う旅行は、コロナ対策を健気に守りながらも何よりも嬉しい忘れられない思い出になったことでしょう。ところで、1つ嬉しいほっこり報告が届きました。東北校外授業の一週間前6月4日は運動会でした。この3年間毎年違う形式の運動会実施を迫られそれを牽引してきた体育科の年長教員が、3年生の学年主任で、1期の期長です。1泊目の夜のこと、ある生徒がホテルのお土産屋さんで買ったゆずの香りの入浴剤を一つ、その先生にプレゼントしてくれました。「先生、運動会からずっと大変そうだったから」と…頑張りに頑張っている先生のことを生徒はちゃんと見ていて、感謝の思いを伝えてくれました。生徒の優しさが身に沁みて、またまた頑張る先生達です。
 今夕、2期ともに皆、無事に帰ってきました。3年生、お帰りなさい!さあ、また、頑張っていきましょう。

 受験生の皆様、今週末6月18日には、オープンスクールでお目にかかれることを楽しみにしています。

 校長 椎野 秀子
  • 東北校外授業 史跡尾去沢鉱山 坑道見学
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  • 2年 歌舞伎鑑賞教室
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