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2022/03/23

  • 校長より

「祝福と春愁‥春なればこそ‥‥」(2022/03/23)

 春の雪に見舞われた昨日、早咲き桜に雪が降り注ぐ絶景の校地でした。今朝は、テニスコートの横にある小さく低い枝垂桜が満開で、しばし見とれました。私は毎年花の色濃い可愛いこの枝垂桜の姿に、大伴家持の「春の園 紅にほふ 桃の花 下照る道に 出で立つをとめ」の歌を思い、この満開の下に笑いさざめく中学生の風景を思い浮かべ、甘やかな春を味わいます。

 先週3月18日、75回生の卒業式は肌寒の中、温かくも厳かに執り行われました。卒業証書授与に続き、卒業を祝う皆様の温かな祝辞が続きましたが、やはり圧巻は卒業生代表の言葉でした。この3年間で学びの幅がいかに興味深く楽しく広がったのか、学びの本質を語る喜びの言葉のその深さに、彼女の成し遂げた成長がありました。そしてこの代表生徒の確かな言葉は、卒業生全員の実感でもあったと思います。簡単に数字化できない奥深い本質的な納得こそ、本校の毎日の授業・学校生活で各々が自分のものにしてきた学びだと思えました。式後に学園の理事長・学長・高等学校長・前中学校長と一緒に学年全員揃ってもみじ劇場で撮影した写真は、「新しい明日を共に創る」記念写真となりました。
 翌19日の終業式では、今年度をもって退任する専任教員からのお話がありました。今までご報告してきた英語授業でのSDGsはじめ数々の今年の新しい試みを導いてきた先生です。その授業で交流を持てたフィンランドの学校の先生からの、ウクライナとロシアのことをいかに考え、生徒達とどんなことを話し合っているかという近況報告メールの話。かつてロシアの占領地であったフィンランドの地に住む先生の切実な実感と使命が、ホールで伺っていた生徒達にも確かに伝わりました。起こりえないと思っていた戦争が実際に起こってしまった事態に、私たちは一体何ができるのか何をしなければならないのか、日本に住む私たちも共に考えなければなりません。やれることがきっとあります。
 
 一体私に何ができるのか、眼前に広がる混沌を前に我々は途方に暮れます。やりたいこと・やらねばならないことが沢山あり希望に満ちているはずなのに、何一つ始まっていない・どうなるか分からない自分に不安を覚え、憂う思い。春はそんなもどかしさに満ち満ちている季節でもあるのです。若くてこれからに満ちているからこそ、まだこれからを選択してない今、だから青春。もう一つ私の好きな家持の歌は「うらうらに 照れる春日に ひばり上がり 心悲しも ひとりし思えば」です。春愁の愛おしさが響きます。
 春休みこそ、今度新入生となる78回生も、卒業しちゃった75回生も、もちろん76・77回生も、一人の時間を愛おしんで過ごしてください。来た道・行く道に一人思いを馳せて、大いに春の物思いにふけってください。美しい桜の開花と共に…再会を楽しみにして…

 校長 椎野 秀子
  • 卒業式後の集合写真
    卒業式後の集合写真
  • 退任教員の送別会にて
    退任教員の送別会にて