コンテンツ

2021/11/09

  • 校長より

「わたしがわたしであるために…」(2021/11/09)

 11月に入って昨日まで好天が続きました。4階の屋上テラスに出て、青空に伸びる森の緑と白い校舎を眺める一時は、どんな景勝地にも負けない秋のすがすがしさを味わう至福の時間です。視線を落とすと「緑の風像」を囲む新しい回廊パーゴラテラスでは、生徒たちが楽しげに陽を浴びていて、手を振ってくれました。
 今日は、1年生が本学人間社会学部の教授の小山聡子先生から「アサーション」についてのお話を伺いました。以前小山先生が中高の附属校担当理事をなさってくださっていた時から毎年お願いしている心にしみる講演会です。小山先生はご自分の中学生時代の少女の気持ちを紐解きながら、1年生に届く自分の心との付き合い方を教えてくださいます。お話の後半、生徒を壇上に上げてのワークショップも楽しく、心と身体をほぐしてくれます。
お話を伺っていると私の心も、はるか遠くなった中学生時代の自分の感情をよみがえらせて脈打ちます。そしてあの頃の切なくてもどかしくて自分をどう形作っていけばいいのかと陰に陽に揺れ動いた感情が、実は、「中学校の先生になりたい!」原点だったとも思うのです。
 生徒たちにどんな人になってほしいのか、いつも考えます。一人一人がこの新しい時代に、自分を活かし活躍してほしい。自分を甘やかさずに、自分を認め、自分を磨いていく生き方を自分のものにしてほしい。「わたしがわたしであること」に納得をもって生きてほしいし、そのために「わたしがわたしであること」を認める環境・社会を作ってほしい。長い人生の生き方の原点が本校で過ごした日々であればと願います。11月2日の放送朝礼で社会学者ブルデューの大著『ディスタンクシオン』の話をしました。人は生まれ育った環境や受けてきた教育で、趣味や嗜好といった個人的な領域までも決定づけられるとするこの本。だとしたら、生徒一人一人がこれからの日々、自分の趣味や生き方を多種多様に選び自分を形作っていく時の、頼もしい土台になる本校での学び・本校での生活でありたいのだと伝えました。
 11月は、寒くなる日々の中で自分の心と向き合って、ゆっくり秋の夜長を味わう季節。学校生活を送りながら何に影響を受け何を選び取っていく私でありたいのか、揺れる心を大切にしながら生徒一人一人がじっくりと考える秋にしてほしいと願います。学ぶ環境・考える環境を存分に与えられていることを理解して、それでこそ得られる自由を、もっと広い世界の為に活用し「わたしがわたしであること」を存分に味わってほしいと願います。