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2020/08/13

  • 教員リレーエッセイ

【8月】令和のアンネたちへ

授業で読む文庫本たち 並べてみると厚さは一目瞭然!
授業で読む文庫本たち 並べてみると厚さは一目瞭然!

例年、夏休みには戦争関連のニュースが多く出るので、国語の授業ではそれらを使って意見文を書き、平和について考えます。その他に、1,2学期の授業で1年生は向田邦子「字のない葉書」、2年生では「アンネの日記」、3年生では「黒い雨」を読んでいきます。「黒い雨」は400頁、「アンネの日記」も600頁にも及ぶ長編!一人で読み通すにはなかなか大変な作品なのですが、授業を通して様々な視点で考えて友達と意見を交わすからこそ、多くのことを学べるのです。
2年生は夏休みに「アンネの日記」を読むはずでしたが、今年はコロナの関係で学校が休校になった時期に、時間をかけて「アンネの日記」を読んでもらいました。4月の終わりに、他の課題プリントと共にこの本を箱詰めしているとき「彼女達も今、アンネと同じような"閉じ込められる苦しさ"を感じているのだろうなあ」と思っていました。
閉鎖的な空間で、長い間顔を突き合わせていると、今まで他のことで紛れていたはずの、いろいろなことが見えてくるものです。家族のことも、自分自身のことも。アンネは隠れ家生活を過ごすうちに、大好きだった父親に対して新たな気持ちを見出します。愛され、優しく甘やかされていることを感じつつも「孤独で、見捨てられたような、無視されたような、誤解されたような気分」(文春文庫 深町眞理子訳)を味わうのです。反抗期の娘に対して「お前の年頃にはありがちなことだ。自然に解消する」という父に、アンネは「私にとっては、自分の背負わされた困難に打ち勝とうとして闘うことこそ、他の何よりも大事だということをわかっていない」と嘆くのです。
「私は自分の目で自分の行いの間違ったところを見てとり、それを自分自身に突きつけることで自ら矯正してきた」と語るアンネの強さはなかなか持つのが難しいものですが、この本を学ぶ中で「自分を見つめる」とはどういうことか、考えることができたら良いと思います。2年生の皆さん、2学期に一緒にこの本を読んでいくのを楽しみにしています。

国語科 野中