管理栄養士専攻4年生による病院実習

2023.12.15

臨地実習Ⅱ・Ⅲ(臨床栄養学の領域)報告会

食物学科管理栄養士専攻4年生による「臨地実習Ⅱ・Ⅲ」の報告会

2023年10月21日(土)に、食物学科管理栄養士専攻4年生が「臨地実習Ⅱ・Ⅲ」の報告会を行いました。「臨地実習Ⅱ・Ⅲ」とは大学3年次から4年次にかけて、2週間、指定病院にて栄養管理や栄養指導などを学ぶ実習です。これらは管理栄養士になるために必要な「臨地実習Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・Ⅳ」という一連の実習科目に含まれ、本実習の前に社員食堂などの事業所等の実習(臨地実習Ⅰ)があり、この後に保健所等の実習(臨地実習Ⅳ)が続きます。
今回の4年生による実習報告会は、3年生が対面形式で、実習病院の先生方がオンライン形式で参加しました。実習報告の中から、公益財団法人がん研究会有明病院で実習した、熊本万穂(くまもとまほ)さんの報告をご紹介します。

【実習報告】
がんの専門病院における2週間の実習

私は大学3年次の2月27日(月)から3月10日(金)までの2週間、公益財団法人がん研究会有明病院(以下、がん研有明病院)で臨地実習Ⅱ・Ⅲに臨みました。がん研有明病院は「がん克服をもって人類の福祉に貢献する」ことを基本理念に掲げた、がん専門の病院です。給食による入院患者の体力・免疫力増強を重視しており、入院・外来ともに栄養指導にも力を入れています。
私は実習期間中、午前中は厨房業務として、給食の配膳時に確認できるよう名前や献立などが書かれた「食札」という用紙の準備や盛り付けなどを行い、午後は栄養指導や回診を見学しました。実習を通して感じたことは「がん」と一括りに言っても、診療科ごとに病態・症状・治療法・治療による食事摂取への影響が全く異なるということでした。がん研有明病院の栄養管理部のスタッフは、積極的な回診や栄養指導によって患者さんの症状を把握し、その症状の変化に合わせて栄養管理をされていました。そういった細やかな取り組みが、病態の改善や入院患者のQOL向上につながることを学びました。

写真左から 発表を聞いてメモを取る3年生/質問をする4年生
写真左から 発表を聞いてメモを取る3年生/質問をする4年生

実習を終えて振り返ると、がん研有明病院での実習は私の進路において大きな転換点となったと感じています。実習中にがん患者さんへの栄養管理・指導を見学する中で、管理栄養士の仕事の素晴らしさを改めて実感すると同時に、がんを予防する方法はないものかと考えざるを得ませんでした。がんには未だに確立した治療法がありません。私は今回の実習の経験と管理栄養士専攻での学びを生かして、病気の発症予防や改善について食の観点から探究し、食と健康の関係を深く研究したいと考えました。そのため私は卒業後に、大学院へ進学して研究することを決意しました。将来的には管理栄養士としてのキャリアを視野に入れながら、研究を進めたいと考えています。

【コメント掲載】ご指導いただいた
がん研有明病院 斎野容子先生より

今回の熊本さんの実習を受け入れてくださった、がん研有明病院の栄養管理部副部長 斎野容子(さいのようこ)先生よりコメントをいただきました。斎野先生は本学卒業生であり、毎年実習生をご指導いただいています。

管理栄養士を目指す学生にとって、臨地実習は実際に病院で働いている姿を見ることができる重要な機会です。日本女子大学の学生は実習中に学びたいことが明確で質問も多く、積極的に実習に取り組まれています。
かつて、管理栄養士は「給食を提供する職種」というイメージが強かったと思います。しかし実際は、点滴や栄養チューブを通して栄養をとる患者さんの栄養管理も数多く担当しています。栄養管理は治療を行うための土台として重要であり、管理栄養士は医師や看護師などと協力しながら、患者さんの治療に関わることができる素敵な職種だと思います。患者さんにとって、栄養のことをなんでも相談できる身近な存在でありたいと常に思いながら働いています。
管理栄養士が活躍できる職場は病院だけでなく、行政や企業など多岐にわたります。働く場所によって求められるスキルは異なりますが、栄養のスペシャリストとして人々の生活の一部を支えられるような管理栄養士を目指してほしいと思います。

日本女子大学における
病院実習(臨地実習Ⅱ・Ⅲ)とは

今年度の臨地実習Ⅱ・Ⅲは、16施設の病院に実習を受け入れていただきました。その中には一般病院だけでなく、公的病院や大学病院などが含まれており、また厚生労働大臣に承認を受けた「特定機能病院」や、都道府県知事に承認を受けた「地域医療支援病院」もあります。病院ごとに病床数などの違いは大きく、入院患者さんへの給食も「直営」と「委託」の2種類の経営形態があります。
本学の学生はさまざまな条件の病院にて、臨地実習Ⅱ・Ⅲに臨むことができており、今回の報告会で、全く異なる形態の病院における管理栄養士業務を知り、4年生はそれぞれの病院における学びを共有することで、視野を広げました。また報告会を聞いた3年生は、半年後に控えている自らの臨地実習Ⅱ・Ⅲに向けて何を準備すべきか、将来はどのような管理栄養士になりたいのか、長期的な展望を得られたのではないでしょうか。
本学の管理栄養士専攻では、将来、管理栄養士として活躍できる場を、在学中から幅広く知ることができます。本実習の経験を生かして、栄養面の問題を抱える人たちのヘルスケアや、傷病者の栄養管理、健常者の疾病予防に取り組む卒業生も多く、パフォーマンス向上を目指すアスリートを支える卒業生もいます。「栄養学」を通じて、すべての人のWell-beingを支えることのできるプロフェッショナルを目指せる専攻です。

※家政学部食物学科管理栄養士専攻は、2025年4月より食科学部栄養学科(仮称)を設置構想中です。