【JWU GO】卒業生トークイベント~「なんとなく留学したい私」が味の素株式会社で新規事業に携わるまで~

2023.11.15

2023年9月21日(木)、「JWU GO」の取り組みの1つとして、本学の家政学部食物学科卒業生である千野彩佳(ちのあやか)さんにご講演いただきました。千野さんは大学4年次に「トビタテ!留学JAPAN」に応募し採用され、イタリアの食科学大学に留学。帰国後は本学大学院に進学したのち、2023年4月より味の素株式会社に就職して新規事業に携わっておられます。この講演は卒業生の経験談を聞いて、留学や就職を考える際の参考にすることを目的に国際交流課とキャリア支援課が共同で企画したもので、オンラインと対面のハイブリットで開催しました。今回は千野さんの講演内容をご紹介します。

JWU GOとは
本学の国際的な取り組みを包括し、グローバルな学びの機会をより増やすために発足したプロジェクト。 『GO』には、自らの意思で前に進む、グローバル視点で目標を持つといった意味があり、「国際社会に目を向けて広い視野で目標を設定し、自らの意思で行動できる人材を育てる」という本学の意志が込められています。

自分を徹底的に見つめ直して
留学の目的を考え、もがいた日々

留学に行きたいと思う人はとても多いですが、留学の目的が明確な人は少ないのではないでしょうか。私も最初から明確だったわけではありません。私が日本女子大学の食物学科食物学専攻に入学したときは「なんとなく留学したい」と思いつつも、行動に移せませんでした。そのまま大学3年生になって就職活動が始まり「本当にこのまま就職していいのかな」と悩み、友人に相談したことを覚えています。
当時悩んだ私は自分の「過去・現在・留学・未来」を紙に書き出して、考えを整理しました。とても時間がかかる作業でしたが、今振り返ると私の留学とキャリアにおいて、重要な時間だったと思っています。過去として書き出したのは、高校生のときカンボジアでの国際協力ツアーに参加して、留学や国際協力に興味を持ったこと。現在は「食べることが好き」という思いで入学した食物学専攻で、栄養や官能評価(美味しさを数値で評価すること)など食の科学的側面を中心に学んでいること。そして未来については「食を通じて、一人ひとりが自分や相手をもっと大切にできる社会にしたい」と未来の自分の姿を想像しました。その未来を思い描くことで、私は食を科学的側面だけでなく、文化的側面から学ぶために留学したいのだと留学の目的を明確にできました。

写真左から 講演する千野さん/留学の目的やキャリアについて参加した学生と意見を交わす
写真左から 講演する千野さん/留学の目的やキャリアについて参加した学生と意見を交わす

留学する前から多くの壁があったように思います。まず留学しようと決意した大学3年生の私は、就職活動と並行して「トビタテ!留学JAPAN日本代表プログラム」に応募しました。「トビタテ!留学JAPAN」とは、文部科学省が2013年10月より開始した留学促進キャンペーンで、日本代表プログラムは選考型の官民協働海外留学支援制度です。選考に落ちたら就職しようと思っていたので、必死に応募書類を作成し、その結果、採用していただけました。
その後、留学先の大学での受け入れもスムーズにはいきませんでした。私が留学を希望したのはスローフード発祥の地であるイタリアのUniversity of Gastronomic Sciences (食科学大学)のmaster of gastronomy、World food cultures and mobility専攻です。スローフードとは地域の伝統的な食文化を重視する運動のことであり、私の留学の目的である「食の文化的側面を学ぶ」ことに適していました。ですがWorld cultures and mobility専攻からは、学部生を受け入れていないとの回答。私は聴講生として受け入れてもらえるよう大学と直接交渉し、何とか留学できることになりました。これは前例のない大変な交渉でした。この交渉においても、研究室の教授、国際交流課のスタッフの方、食科学大学の日本人の卒業生、友人、本当にありとあらゆる方にご相談し、お世話になりました。
晴れて留学してからは食の文化的側面を学ぶために、さまざまな挑戦をしました。授業ではイタリアの食文化等を学びつつ、ボランティアとしてスローフード協会でフードロス削減の活動をしました。またイタリアに日本食を発信するプロジェクトも企画して、ちらし寿司や茶碗蒸し、お好み焼きなどを作って食べるイベントを開催しました。
このように留学で食文化を多角的に学んだことで、帰国後は食文化と官能評価を掛け合わせた研究がしたいという思いが生まれ、日本女子大学の家政学研究科食物・栄養学専攻に進学しました。研究テーマは「日本人とイタリア人の甘みの認識の違い」です。留学したイタリアの食科学大学の教授にも協力していただき、研究に挑戦しました。

学生時代の行動力を見込まれて、新卒1年目から
味の素株式会社で新規事業「LaboMe®」に携わることに

前例のないことに挑戦した経験は、社会に出てからとても役に立っていると感じています。私は就職活動のときに「多くの人に、食の本来の価値を実感し、食をきっかけに人生を豊かにしてほしい」と考えて、2023年4月に味の素株式会社へ入社しました。味の素株式会社には、社員なら誰でも新規事業を立ち上げることができる社内起業家育成プログラムがあります。私は新卒1年目ですが、このプログラムで生まれた新規事業「LaboMe®」に携わっています。
「LaboMe®」とは女性のためのWell-Being事業であり、セルフケアのためのサブスクリプションサービスです。毎月のテーマに沿ってセルフケアプロダクトが届き、イベントやコミュニティに参加することもできます。私はこのプロジェクトに携わりながらも、自分で企画したプロジェクトも社内起業家プログラムに先日応募しました。前例がないことであっても自分の思いを形にできる機会があることに、とてもわくわくしながら働いています。
就職した今から学生時代を振り返ると、留学前に目的意識を明確にして本当に良かったと思っています。目的を明確にしたことで、就職した現在まで繋がる行動の指針ができ、目的達成に向けて多角的に考えられるようになり、そして何より仲間が増えたと感じています。留学中も英語で留学の目的を話せるように練習していたので、自身のことを理解してもらいやすく自然と仲間が作れました。
留学は自分の興味関心をとことん深掘りできる、とても貴重な機会です。もちろん全ての人にとって、留学にいくことだけが正解ではないと思います。しかし私の話を聞いて、留学に行きたい、留学にいくことが今後の自分が描く未来に近づけると感じた皆さんは、ぜひ自分が何のために留学したいのか、その熱意を明確にして実りある留学にしていただければと思います。
最後に、留学や現在のお仕事など自分のやりたいことの追求は、本当にたくさんの方のご協力なしには実現できませんでした。特に国際交流課の皆さん、研究室の教授や皆さんのご理解・ご協力があったからこそ、恵まれた環境の中で、信念を持って頑張ることができました。今後は、自分自身の信念を引き続き大事にすると同時に、同じように信念を持つ方の力になれれば幸いです。本当にありがとうございました。

講演会終了後も学生からの質問が続き、時間を延長して回答
講演会終了後も学生からの質問が続き、時間を延長して回答

今回、千野さんに講演いただいたトークイベントでは、会場・オンラインそれぞれの参加者でグループワークも実施しました。「留学してみたい」という共通した思いを持つ参加者が多かったため、各々の留学への思いに共感したり拍手しあったりする様子が印象的でした。今回のトークイベントは参加者にとって、留学とキャリアを考える指針となったとともに、思いを同じくする仲間と出会って留学への思いを新たにした場でもあったのではないでようか。
トークイベントは下記から動画でご覧いただけます。留学を考えている方だけでなく、キャリアを悩んでいる方も多くのヒントを得られる内容です。あわせてご覧ください。