2人で掴んだ建築の国際コンペティション選出

2023.07.25

【受賞インタビュー】青灣山城VILLA國際競圖 選出、家政学研究科住居学専攻2年 黄木彩可さん、徐冰巧さん

(写真左から)黄木彩可さんと徐冰巧さん

家政学研究科住居学専攻2年の黄木彩可(おうきあやか)さんと徐冰巧(ジョヒョウコウ)さんは、台湾で開催された建築の国際コンペ「青灣山城VILLA國際競圖」に共同制作作品を出展し、17組(プロフェッショナルの部10組、学生団体の部7組)の受賞作品に見事選出されました。
今回の受賞についてお二人にお話を伺いました。

お互いを尊重し合い、コンペ課題に向き合う

— コンペへの参加のきっかけを教えてください。

徐さん:住居学専攻にはいろいろなコンペの情報が来るのですが、台湾での国際コンペはテーマにも関心があったので、ぜひ参加したいと思いました。黄木さんが台湾の研究をし卒論にまとめていたことは知っていたので、「一緒にやろう」と声をかけました。

黄木さん:徐さんには以前から台湾について研究していると話していたので、誘ってくれて嬉しかったです。

— お二人で取り組むうえでの役割分担はあったのですか?

黄木さん:私は中国語ができないので、徐さんが言語の面でリーダーシップを取ってくれました。募集要項を読み込む際も、翻訳ソフトを使うと細かなニュアンスは分かりづらく、助けてもらいました。学部生のときに卒業制作ではなく卒業論文を選択したので、設計を行う際のソフトの使い方ひとつとっても徐さんから学ぶことが多かったです。

徐さん:コンセプト作りも模型を作る際も、2人で協力して進めました。黄木さんと話し合いながら作業を進める時間がすごく楽しかったです。黄木さんは優しいし、助けてもらいました。

— 今回の作品について教えてください。

黄木さん:今回の作品は「視窗(The view)」という名前です。台湾の澎湖諸島に建てる環境に配慮したヴィラの設計が課題で、私たちは「つながり」「進化」「自給自足」の3つのコンセプトを持つワンフロアの建物を設計しました。

徐さん:「つながり」は、取り壊された昔の建築の材料を使い、新たな建築を建てる可能性を探求している点を表しています。また、建物の未来像として、子どもとお年寄りが一緒に生活する可能性があることも設計時に考慮しました。
建物の正面にある門の先には海を臨むことができ、「『海や地球』と『私たち』」や「『台湾』と『世界』」の繋がりを想起させるようにしました。

黄木さん:「進化」と「自給自足」については、このヴィラの居住者によって “住みこなし”が行われていく過程で、まわりの自然の成長(進化)が体感できるように設計している点を表しています。
人間は年齢とともにどんどん変化していきますが、建物も持続可能性という観点で、より長く在るためには、同じままで在るのではなく、人間と同様に少しずつ変わりながら在るべきだと考えました。近年問題になっている地球温暖化による海面上昇を考慮し、海面が上昇した際にデッキで海と繋がれるよう設計するなど、自然との共生もテーマにしています。海水を引いて、食物を育てたり、太陽光パネルを設置したり、自然環境の変化に建物が適応していくイメージを形にしました。
屋根の上に太陽光パネル設置し、植物が育てることができる
デッキへと続く通路には「門」を設置し、コンセプトである「つながり」を想起させた

自分たちの置かれた状況のなかでベストを尽くした

 — 今回、海外のコンペに参加してみて、海外ならではの難しさはありましたか?

徐さん:文化や言語が違うというのは、やはり難しい点ですね。

黄木さん:徐さんが主導してくれましたが、コンペ案を提出するときに、要項の解釈は本当に合っているのかと不安になりました。模型の提出も、ちょうどホリデーシーズンだったので、国際郵便での遅延が発生しないかヒヤヒヤしました。

徐さん:新型コロナウイルスの影響もありますが、普段の勉強も忙しかったため、ヴィラの建設予定地である澎湖諸島を見に行けなかったのも、設計案を考えるうえでは難しい点でした。

黄木さん:現地を視察することはできませんでしたが、可能な限りの情報を手に入れ、咀嚼して設計ができたので、ベストは尽くせたかなと思っています。

— 受賞の発表を聞いたときはどうでしたか?

黄木さん:喜び半分、戸惑い半分という感じでした。

徐さん:私もびっくりしました。でも、学校で学んだことが社会という実践の場で認められた気がして、嬉しかったです。

黄木さん:日本と台湾の違いを受け止めながら取り組めたかなと思います。それは徐さんのおかげもあり、「こういうところは違う」けど「こういうところは日本と一緒だね」といったコミュニケーションの積み重ねが設計に反映できたと感じています。

徐さん:他の受賞作は素晴らしい作品が多く、まだまだ不足している視点があることにも気づかされ、とても勉強になりました。

— 徐さんは学部生までは中国で学んでいたそうですが、中国と日本の建築の違いについて感じるところはありますか?

徐さん:日本の建築は、建築家の隈研吾先生が提唱する「負ける建築」に代表するような「自然との融和」を考える建築が多いように感じます。一方で中国では、「勝ち」が重要なポイントで、自然との関係性が少し違います。私は日本の建築が大好きなので、日本女子大学への留学を決めました。余談ですが、大学院入試の口述試験の際、専攻の先生方がとても親切にしてくれ、安心したのを今でも覚えています。

— 最後にお二人の現在のご研究と将来の夢についても教えてください。

黄木さん:学部生では台湾に関して研究していたのですが、今は研究エリアを広げて東アジアの「家族制度と住宅の関係」について研究をしています。将来は現在の研究を生かして、文化と空間の関係性について考えながら住宅の提案などをしていけたら良いなと思っています。

徐さん:私は日本の歴史的構造物や、浅草や京都の町屋などの伝統的な街並みの保存と再生について研究しています。卒業後は建築設計系の会社で働き、大好きな日本の建築に関わっていきたいです。
お互いの印象を「穏やか」と話すお二人。住居学専攻の雰囲気も穏やかで伸び伸びしていると話す