研究Visionについて

研究Visionについて

研究Visionを公表しました

2021.02.12 【お知らせ】

本学は、日本の女子高等教育のさきがけとして、1901(明治34)年に創立された日本で最初の総合的な女子高等教育機関です。
 
 創立者成瀬仁蔵は、「広く知識を授け、深く専門の学芸を教授研究し、その応用能力の展開をはかるとともに、人格の完成につとめること」を女子大学の設立の目的に定めています。このことは現代においても、生命と他者性の尊重という普遍的価値に基づき、地域社会や国際社会において、リーダーシップや独創性を発揮できる女性を育成するという本学の教育研究の理念に継承されています。
 
 本学は、4つの科学系統(人間生活科学系・人文科学系・社会科学系・自然科学系)を持つ総合大学として研究活動を展開しています。科学研究費補助金(科研費)の採択件数では、文部科学省が公表している「令和2年度科学研究費助成事業の配分について」において、私立の女子大学のうち研究機関別の採択件数で2位、女性比率は上位30機関中6位(61.9%)にランクインするなど、女性研究者を中心に高い成果を上げています。
 
 一方、近年のIoT(モノのインターネット)やAI(人口知能)、データサイエンスに見られる情報通信技術(ICT)の急速な発達に伴って、科学技術の成果があらゆる場面に活用されることになり、大学の研究活動にも大きな影響を及ぼしています。また、世界的にも急速な広がりを見せているオープンサイエンスや産業界におけるオープンイノベーションなど、従来の産学における連携の枠組みも大きく変化しています。現在は、このような状況の変化も踏まえて、より一層、日本女子大学の総合力を発揮した研究改革を実践することが必要となっています。
 
 本学は、今年、創立120周年を迎えます。Vision120に掲げる教育改革の実現はもとより、女子高等教育機関として、研究者の育成とともに地域社会や産業界の課題解決に寄与する研究を積極的に推進し、優れた研究成果を社会に還元することに努めなければなりません。また、研究を研究者個人の学術的な側面だけに留まらせず、大学の組織的な取り組みへと接続させ、大学の目指す将来展望に向けて、研究の独自色や魅力を発信していくことが求められています。
 
 将来ビジョンに向けて研究改革を実現するために、以下のとおり、重点項目を取りまとめました。これらの重点項目は、Vision120の次のVisionに向けた要諦になるものであり、本学の研究をより高い次元で実現することを念頭に置いたものです。4つの科学系統を持つ総合大学としての利点を活かし、日本で最初の総合的な女子高等教育機関として、大きく飛躍することを目指します。
 
 
 
2021年 2月
学長 篠原 聡子

重点項目

1.文理融合の研究の推進により新たな研究分野を創成し、学術資源の発信と研究拠点としての機能強化を図る。

・人間生活・人文・社会・自然科学系の4つの科学系統を持つ女子総合大学としての利点を活かし、研究分野を越えて研究成果を共有し、従来の枠を越えた横断的な研究分野を創成する。
・本学が蓄積している膨大な学術資源を学内外に発信し、オープンサイエンスの基盤として広く活用を促進することにより、研究拠点としての機能強化を図る。

(具体的施策)
・全学の連携を促進し、文理融合の研究を推進する。
・日本女子大学総合研究所の機能を活用し、学際的共同研究・調査を推進する。

2.女子高等教育機関として、地域社会と連携して、社会の課題解決に向けた研究を推進し、研究成果を社会に還元する。

・女子高等教育機関として、研究上の新領域を多岐にわたり切り拓いてきた本学の歴史と伝統を受け継ぎ、地域社会と連携して、社会の改善に資する課題解決型の研究を推進し、研究成果を社会に還元する。

(具体的施策)
・文京区、豊島区、川崎市を中心とした地域社会(自治体・他の研究教育機関を含む)との連携を強化し、地域の様々な問題に、研究・教育・共同プロジェクト等を通じて参画し、地域に貢献する。

3.次世代を担う女性研究者の支援、並びに若手研究者の育成を推進する。

・博士人材の活躍の場として、産業界等への多様なキャリアパスの実現を目指し、博士課程への進学者の増加を図る。また、博士号取得を目指す社会人を積極的に受け入れ、博士課程における研究の充実を図る。
・学術の多様性を基盤として、女性研究者並びに若手研究者の自由な発想で生み出される研究を支援する。

(具体的施策)
・博士人材を対象に長期インターンシップなどを通して、民間企業・研究機関等へのキャリアパスの実現を目指す。
・社会人のための大学院コース(博士課程後期の「早期修了プログラム」)を設置するなど、博士号取得を目指す社会人のために学び直しの機会を提供する。
・女性研究者並びに若手研究者をプロジェクトリーダーとする共同研究を創出する。(研究助成・奨励金制度の創設)
・女性研究者の出産・育児と研究活動の両立支援を推進するため、研究支援員制度の活用を図る。

4.研究のさらなる国際化とプレゼンスの向上を目指し、国内外の大学・研究機関と高度な研究連携を推進するとともに研究者の相互交流を促進する。

・研究の質及び量ともに向上を目指し、国際的に通用する質の高い研究を展開する。
・従来の産学における連携の枠組みを越えて、国内外の有力な大学・研究機関と高度な研究連携を推進する。
・学術研究の活性化を図るため、研究者の相互交流を促進する。

(具体的施策)
・国際会議等を積極的に誘致し、本学及び研究者の国際的な評価の向上を図るとともに、研究連携を推進し、国際共同研究等の共同プロジェクトの実施を目指す。
・国内外の大学と共同ワークショップを開催し、人的ネットワークの形成を推進する。

5.研究環境の充実及び研究支援体制の整備を図る。

・研修・サバティカル制度の充実を図る。
・研究力強化のため、教員の研究時間の確保を図る。
・研究の成果を知的財産として有効に活用するため、知的財産の管理体制を整備する。

(具体的施策)
・教員の委員会等に関わる業務の見直しなどにより、研究時間の確保を図る。
・研究者の研究プロジェクトに専念できる時間を確保するため、バイアウト制度等の導入を推進する。
・大学の研究成果である知的財産を創出・活用するため、知的財産・産学官連携コーディネーター、URA(研究マネジメント人材:リサーチ・アドミニストレーター)など外部の人材と連携し、知的財産の管理体制を構築する。