人生100年時代における生涯学習のモデルを示す通信教育課程 教員座談会 人生100年時代における生涯学習のモデルを示す通信教育課程 教員座談会

写真左から

工藤・小野・定行・浅見・浅野

様々な目的と背景を持った人が集い、互いに刺激し合う

―どのような方が、どのような目的で入学されていますか?

浅野:学科それぞれで異なりますが、食物学科では、教員免許の取得を目指す方がいらっしゃいます。しかも、既に他教科の教員の方で、家庭科の教員免許を取得したいという方が多い傾向があります。また男性で家庭科の教員を目指す方がいらっしゃいます。理科や社会などの他教科との接点から家庭科を教えたいと考える方が増えてきたように感じます。

定行:通信教育課程では、科目等履修生については男女ともに受け入れています。そのため、男性も教員免許の取得を目的に学ぶことができます。通信教育で家庭科の教員免許を取得できる教育機関は我が国では本学のみであるため、男性の学生を受け入れることは社会的な使命でもあります。

浅見:生活芸術学科でも家庭科の教員免許の取得は可能です。私は教職の科目でもある住居学概論を担当しています。男性も数人履修していますが、同じ課題のレポートであっても男性と女性では捉え方が異なることがあって興味深いです。他にも、就いている職業やバックグラウンドによって視点や作業の進め方が異なることがユニークで、私たち教員も新たな視点に感心することがあります。

工藤:私は生活芸術学科で被服学分野を担当していますが、とある男性の英語教員が入学にあたっての志願理由として、「育メンという視点から家庭科を生徒に教えたい」。つまり、男性の視点で家庭科を顧みたいと書かれていたのが印象的でした。また、何らかの資格や学士を取得するという目的以外にも、純粋に学びたい、教養を身に付けたいという方も多くいらっしゃいます。

定行:実に人それぞれ、目指すゴールは同じでもその理由は異なり、ニーズが多様化していると感じています。家庭科が扱う内容は、生活に根差したものなので、その実すべての教科に何らかの関係があります。むしろ、すべての教員が家庭科の知識を持って教育に当たるのが理想だと思っています。

小野:児童学科では幼稚園の教員免許の取得が可能です。学科名からも明らかな通り子どもに関心を持った方が多く入学されます。現役の先生が、さらによい教育を行いたいと入学されるケースもあります。また、子育て中のお母さんたちが学びにいらっしゃることも多いようです。今後、男性からの需要も増えるかもしれません。そのほか、子育てが終わった世代の方が学ばれることもあります。ご自身の子育てが客観的視点ではどうだったのかを検証したいという目的で学びにいらっしゃるようですが、「子育てをする前に知っておけば良かった」とおっしゃることが多いですね(笑)。

定行:これから日本は超高齢社会を迎えます。定年の年齢や公的年金の受給年齢の引き上げといった議論がされている昨今、人生のさまざまなタイミングで一度立ち止まり、勉強してステップアップするという、生涯学習の重要性がますます高まっていると感じています。その中でも生活に根ざした家政学は、学びやすく、すぐに実践できるため親しみがあるのではないでしょうか。検討を始めてから入学されるまで時間を要する方が多くいらっしゃるように、人生いつからでも学びをスタートできます。

スクーリングを重視したカリキュラムで学生同士が学び合う

―通信教育課程ではどのようなスタイルで学ぶのでしょうか?

定行:通信教育課程では、テキストを読んで自分で勉強するテキスト学習がメインとなります。それぞれの科目ではリポートの提出が課せられ、全国44カ所で年に5回実施される科目修了試験に合格することで、単位が認められます。それに加えて、面接授業であるスクーリングを重視しており、卒業に必要な124単位のうち、学士入学の場合は30単位以上をスクーリングで履修するよう求めています。

小野:スクーリングの魅力は、教員と直接顔を合わせて話ができるところです。とにかく皆さんとても熱心です。また、まわりに共に学ぶ友人がいるということを実感でき、同じ場所、同じ時間を共有し、サポートし合える関係性を築くことができることも魅力のようです。

浅見:通信教育課程のスクーリングは教壇の手前から座席が埋まります。社会人になってから学ぼうという方々は学びへのモチベーションが通学生以上に高いということですね。

浅野:また、社会人として経験を積み知識を有している方が多いことから、授業に求めるレベルが高い傾向があります。私たち教員も、スクーリングは刺激を受ける場です。

工藤:浅野先生が仰った通り、現役の家庭科の先生が入学されることも多いのですが、私たちがお伝えする知識や学習手法などの実演を、すぐにご自身の家庭科の授業で活かしてくださり、その感想などを私たちにフィードバックしてくださることもあって嬉しい限りです。

小野:私の授業には保育士さんや幼稚園の先生がいらっしゃいますが、「先日学んだことを早速、園で試してみました」とすぐに実践して、よりいっそう理解を深められることも社会人の方が学ぶメリットの一つです。

浅見:卒業間際の方に、「今後どのように本学での学びを活かしていく予定ですか?」と尋ねると、「他の大学や大学院で学びます」という方もいらっしゃいます。なかには、本学通信教育課程の別の学科に改めて入学したいという方も(笑)。学びの重要性を肌で感じ、そうしたライフスタイルを崩したくないようです。それだけ、本学での学びに満足されているという証でしょうか。

浅野:食物学科のスクーリング科目は、実験・実習が多いです。実際に行うことにより、テキストで学修した理論をより深く理解することができます。

縦横それぞれにつながる学生ネットワークを活用

―様々な世代やバックグラウンドが異なる方々が共に学ぶメリットは?

定行:20代から50代の方を中心に、様々な年代、キャリアを持った方が共に学んでいるのが通信教育課程の特徴です。そして年代が上がるほど皆さん勉強熱心です。若い方にとってはそうした学びの意欲に燃えた人生の先輩たちを目の当たりにするだけでも刺激になるのではないでしょうか。

小野:まさに人生経験を共有されているという印象を受けます。課題に取り組む際、人生経験が役立つ場合もあります。年齢が異なる仲間から刺激を受ける若い学生がいらっしゃる一方、年齢の高い学生の中には、若い仲間の思考が新たな発見につながるようなこともあるようです。

浅見:そうですね。住居の分野でも、生活体験の長い年代の学生がグループワークの中でリードしてくださることが多いのですが、若い学生から、「そういう視点や考え方もあるんだ」という声が聞こえてくることがあります。長く生活していると、思考の視野が狭くなってしまうこともありますが、新たな考えや視点に触れることで、「社会には様々な視点が必要」であることに気付くことができます。

工藤:被服学分野の授業では、実験や実習が多いのですが、世代や立場を超えて交流するため、それぞれの個性が出て興味深いですね。お仕事が家庭科の先生であればその経験を活かしたアプローチを披露されることがあります。一方、若い方が率先してスマホで調べて授業をリードするといった場面もあって、通信教育ならではの学習環境ではないでしょうか。

浅見:スクーリング以外でも、本学通信教育課程の学生が「学習友の会」を組織し、自主的に活動しています。彼女たちが講演会などを主催してくださる際には、私たち教員も講師として参加します。その後、参加者全員が集まって勉強会などをしています。まさに、本学創立者・成瀬仁蔵の「大学拡張(ユニバーシティ・エクステンション)」の理念を引き継いでいると感じる出来事ですね。

浅野:特に、同窓生といいましょうか、同じ時期に共に学んだ学生同士は卒業後も交流を続けています。「もみの木会」という卒業生の団体組織があります。

誰もが多様な生涯教育の在り方を示すロールモデル

―これから通信教育課程で学ぶことを検討する方々へメッセージをお願いします。

浅野:食物学科では、通信教育で唯一、「家庭」の教員免許の取得が可能ですが、「フードスペシャリスト養成機関」としても協会から認定されています。学生の皆さんの、一生懸命勉強した結果として形になるものが欲しいという要望にも応えられるもので、4年間の学びのモチベーションにもつながるのではないでしょうか。

小野:まずは児童学科において2018年度よりスタートする「芸術・子ども支援プログラム」にご期待ください。アートとか、芸術と聞くと、自分とは無関係なものだと思いがちですが、そのアート表現の楽しさが、癒しや心の成長につながり、子どもだけではなく大人にもよい効果があるものなので、是非学びに来ていただきたいと思います。

工藤:ご自身の一生を考えたとき、自分はこのままでいいのだろうかと振り返る一瞬があるのではないでしょうか。何か目標に向かって学ぶことも大切ですが、被服分野では科学的、文化的それぞれの視点から学べるため、例えばファッション、クリーニングなど、日常生活においても多方面から興味関心を深めることができます。学び続けて、ご自身の人生の輝きを、さらに増して欲しいと思っています。

浅見:住居は建てるだけではなくて、その後住まう人の生き方に応じて管理していくという視点がとても大切です。私の担当科目「住居マネジメント」では、学生の皆さんに、「自分の生き方をマネジメントするのは、他の誰でもなく自分自身である」と伝えています。つまり、生涯学び続けて、それを毎日の仕事や生活に活かしていくのも自分次第なのです。

定行:本学通信教育課程には1988年に入学された後、30年学び、この春(2018年3月)、卒業を迎えた83歳の方がいらっしゃいます。まさに人生100年時代なのだと実感します。通信教育課程では、途中で休学しながらゆっくりと学ぶ方、明確な目的に向かって集中的に学ぶ方、そして必ずしも卒業することが目的ではなく、自らのニーズに必要な単位を納める方など、一人ひとりが本当に多様な生涯教育の在り方を提示してくれます。そして、私たちも一人ひとりの多様な学びのニーズに応えることができるようにチャレンジを続けていきます。

(2018年1月、目白キャンパスに集う)
※集合写真は、成瀬記念館分館(旧成瀬仁蔵住宅)前にて撮影

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