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授賞対象



岩村 暢子 氏
(元アサツー ディ・ケイ 200Xファミリーデザイン室長)



授賞理由



若年層の食調査を通して食育活動の契機を作られたことへの功績に対して



 岩村暢子氏は、1960年以降に生まれた親たちが形成する日本の新しい家族の実態について食事調査を通して明らかにされ、多くのメディアに発表されてきた。その調査は、若年層の食の乱れや変容の実態が取り沙汰されていながらも、詳細な調査は行われてなかった1990年代にいち早く若者の食に焦点をあてた「食DRIVE」である。1998年から2002年にわたる6回の調査では、111人の計2331食卓に対し、次に示す3つのステップで行われた。第1ステップでは、食生活・食意識などの意識調査、第2ステップは1週間の3食の食卓の食材や入手経路にいたる写真付きの実態調査、第3ステップは、第1ステップと第2ステップの矛盾点などを面接により、詳細に食生活の内容およびそれに至った生活の背景にまで考察を深め総合的な検討をしていくという、実に綿密な方法で行われた。(「食DRIVE」は現在も、第18回調査を継続中である)



 この調査結果により通常見過ごされがちな「意識と実態のずれ」が明らかになり、それまでの意識調査だけでは出てこなかった当時の30代の親をもつ若い家族の食卓の実際が浮き彫りになったといえよう。その結果は2003年、勁草書房から出版された「変わる家族 変わる食卓」に著されている。この本の出版は、日本の食生活調査に少なからず影響を与え、2005年の食育基本法制定前に多くの一般の生活者、とくに小さな子供をかかえる30代の主婦に警鐘を鳴らした功績は大きいと考える。 さらには、省庁や内閣府、食育関連企業などにも影響を与えた。



 その後も引き続き、1960年以降生まれの親世代までさかのぼる調査・研究実績もあり、現代に生きる生活者としての日本人の実態を引き続き記録として残し続けている。食生活調査から始まり、現代家族像まで切り込み、現代に生きる各年代層の生活の背景を明らかにしたことは、現在の、また今後の日本人の生活の質を合理的でより豊かなものにするうえで、非常に重要な問題点を浮き彫りにしたと考えられる。岩村氏の代表的な著作を以下に示す。



  • 「家族の勝手でしょ!」(新潮社、2010)
  • 「普通の家族がいちばん怖い 徹底調査!破滅する日本の食卓」(新潮文庫、2010)
  • 「変わる家族 変わる食卓 真実に破壊されるマーケティング常識」(中公文庫、2009)
  • 「〈現代家族〉の誕生 幻想系家族論の死」(勁草書房、2005)


岩村氏は、若者の食から家族のあり方を問い直すことにより、生活の質向上に貢献した食育先駆者といえよう。



 以上の理由により家政学部賞を授与する。