第五回(2009年)受賞者・受賞団体
松村 由利子 氏
(日本文藝家協会員、現代歌人協会員)
芝原 妙子 氏
(同志社大学大学院アメリカ研究科後期課程)
松村 由利子 氏
(日本文藝家協会員、現代歌人協会員)
研究テーマ
:母性保護論争についての新たな視点と究明
本年度の「平塚らいてう賞」の顕彰部門は松村由利子氏の『与謝野晶子』(中公叢書 2009年2月刊)を主とする業績に対して贈呈することとなった。
近代日本の歴史研究のなかで、とかく軽んじられている女性史なのであるが、与謝野晶子は数少ない必ずとりあげられる人物の一人である。晶子の残した仕事は和歌・詩・小説・歌論・評論(社会批評を含む)・随筆・童話・童謡など多岐にわたる分野に膨大なものがあり、さらに与謝野源氏といわれる源氏物語の現代語訳など古典の紹介も有名である。したがって、与謝野晶子に関する研究も著作の基礎資料の再検討から夫鉄幹の関わりなどを含めて、様々な角度から進められてきているが、未だ課題は多いといえるであろう。
松村氏はこれまでの歌人そして平塚らいてうとの母性保護論争に注目があつまってきた晶子研究に対して、一分野にとらわれず晶子の全体をみようとした。科学への関心、十三人の子を産み育てたその思い、そしてその間にあふれ出た童話や童謡の創作、聖書への関心など、新しい晶子像をつけ加えた。男子優先の近代日本社会の中で、とらわれない女性自身の肯定や自立の活動を晶子の生き方によりそって明らかにしようとした。それは松村氏の記者生活や歌人としての活動を背景に、現代に訴えるものを、晶子に見出したからである。
芝原 妙子 氏
(同志社大学大学院アメリカ研究科後期課程)
研究テーマ
: トランスナショナル・フェミニズムの観点から考察する戦間期の日米女性の社会活動:平和運動と女性の権利獲得運動
本研究は、二つの世界大戦に挟まれたいわゆる「戦間期」の権利獲得運動を「国境内(ナショナル)」のフェミニズムと「トランスナショナル・フェミニズム」に分けて考えれば、女性参政権獲得運動は前者、女性の平和運動は後者に属すという視点に立って考察を進めている。具体的には、婦人国際平和連盟の成り立ちの歴史を詳細に追求し、欧米人の日本人への働きかけによって、どのように日本の女性たちが触発され、「日本独自の平和運動」を創り出していったかを跡づけようとするものである。この時代は日本における女性の高等教育が発達した明治―大正期にあたり、資料も多く、また欧米でも20世紀末から今世紀初めにかけ、再びこの時期の女性平和運動に対する関心の高まりを示す著作が増えている。それらは現代の世界情勢を反映していると思ってよかろう。そうだとすれば、本研究に期待されるものもいっそうふくらむと言える。
第五回会選考委員
蟻川 芳子 〔日本女子大学学長〕
中嶌 邦 〔平塚らいてうの記録映画を上映する会会長〕
出淵 敬子 〔WILPF(婦人国際平和自由連盟)日本支部会長〕
羽田 澄子 〔映画監督〕
過去の受賞者・受賞団体(2005〜2008)